社会

倉本香, 森田美芽, 沼田千恵他著『装いの不自由』(2023)

装いの不自由 作者:倉本香,森田美芽,沼田千恵,上田章子,岡村優生 萌書房 Amazon たかがファッション/されどファッションの間にある性と美との強力な癒着が、特に女性にとっての枷となっていることをやさしく説いた気づきのための一冊。ジェンダー・スタディ…

春増翔太著『ルポ 歌舞伎町の路上売春 ―それでも「立ちんぼ」を続ける彼女たち』(2023)

ルポ 歌舞伎町の路上売春 ――それでも「立ちんぼ」を続ける彼女たち (ちくま新書) 作者:春増翔太 筑摩書房 Amazon 歌舞伎町で路上売春をする「普通」の若い女性が急増したのはなぜか。当事者たちのほか、彼女らを支援するNPO、ホスト、警察など多角的に取材…

ミランダ・フリッカー著,飯塚理恵訳『認識的不正義 -権力は知ることの倫理にどのようにかかわるのか』(2007=2023)

認識的不正義 作者:ミランダ・フリッカー,佐藤邦政,飯塚理恵 勁草書房 Amazon 黒人であることで警官から疑われる場合のように、聞き手の偏見のせいで話し手が過度に低い信用性しか受け取れない「証言的不正義」。セクハラの概念が存在しない時代にそれに苦し…

上岡磨奈,中村香住,香月孝史著『アイドルについて葛藤しながら考えてみた ジェンダー/パーソナリティ/〈推し〉』(2022)

アイドルについて葛藤しながら考えてみた ジェンダー/パーソナリティ/〈推し〉 青弓社 Amazon 「恋愛禁止」と異性愛規範、「卒業」制度に表れるエイジズムなど、アイドルというジャンルは演者に抑圧を強いる構造的な問題を抱え続けている。アイドルの可能…

ヘンリー・ジェンキンス著,渡部宏樹他訳『コンバージェンス・カルチャー ーファンとメディアがつくる参加型文化』(2006=2021)

コンヴァージェンス・カルチャー: ファンとメディアがつくる参加型文化 作者:ヘンリー・ジェンキンズ 晶文社 Amazon 『サバイバー』、『アメリカン・アイドル』、『マトリックス』、『スター・ウォーズ』、『ハリー・ポッター』……世界的ヒットを記録したエン…

蘆田裕史,藤嶋陽子,宮脇千絵編著『クリティカル・ワード ファッションスタディーズ ー私と社会と衣服の関係』(2022)

クリティカル・ワード ファッションスタディーズ フィルムアート社 Amazon ファッションを読み解く23のキーワードと、さらに深く知るための11の分野のブックガイド。 現代文化を考えるうえで知っておきたい基本と、多様な視点・アプローチを学ぶことができる…

鷲田清一著『人はなぜ服を着るのか』(1998=2012)

ひとはなぜ服を着るのか (ちくま文庫 わ 8-3) 作者:鷲田 清一 筑摩書房 Amazon ひとは服なしでは生きられない。流行に巻き込まれずに生きることもできない。流行(モード)という社会の時間と身体の感覚とがせめぎあうその場所で、“わたし”という存在が整形…

飯村周平著『HSPブームの功罪を問う』(2023)

HSPブームの功罪を問う (岩波ブックレット) 作者:飯村 周平 岩波書店 Amazon HSP(敏感すぎる人)という言葉は、人々の生きづらさを巧みに表したことで共感をよび、広く使われている。だが、本来は心理的特性を表す考え方が独り歩きし、医療やカウンセリング…

トニー・ベネット他著,磯直樹他訳『文化・階級・卓越化』(2009=2017)

文化・階級・卓越化 (ソシオロジー選書) 作者:トニー・ベネット,マイク・サヴィジ,エリザベス・シルヴァ,アラン・ワード,モデスト・ガヨ=カル,デイヴィッド・ライト 青弓社 Amazon 「社会学の古典」であるピエール・ブルデューの『ディスタンクシオン』の問…

佐藤卓己著『あいまいさに耐える -ネガティブリテラシーのすすめ』(2024)

あいまいさに耐える ネガティブ・リテラシーのすすめ (岩波新書) 作者:佐藤 卓己 岩波書店 Amazon SNS等に溢れるあいまい情報に飛びつかず、その不確実性に耐える力が輿論主義(デモクラシー)の土台となる。世論駆動のファスト政治、震災後のメディア流言、安…

アーサー・O・ラヴジョイ著,内藤健二訳『存在の大いなる連鎖』(1936=1975→2013)

存在の大いなる連鎖 (ちくま学芸文庫 ラ 10-1) 作者:アーサー・O. ラヴジョイ 筑摩書房 Amazon 至高の存在である神から、非存在すれすれの被造物へ。この宇宙はあらゆる階層の存在で充満した、連続する鎖の環である―。「存在の大いなる連鎖」とは、プラトン…

小埜功貴「オーディション番組に表象されるアイドルのスター性 ージャニーズ文化のメディア論的分析」『年報カルチュラル・スタディーズ』2023 年 11 巻 p. 119-140

【リンク】 本稿ではジャニー喜多川が存命であったジャニーズ事務所のオーディションを特集したテレビ番組『まいど!ジャーニィ~』を事例に、アイドルに表象されるスター性についてメディア論やアイドル文化論の観点から分析を行った。 アイドル文化論のな…

松井拓海「統治技法としての人口論―1920年代日本と失業問題」『年報社会学論集』2024 年 2024 巻 37 号 p. 187-198

【リンク】 In this paper, the discourse of the overpopulation problem in Japan in the 1920s is analyzed through texts of the population experts and the bureaucrats of the Social Affairs Department of the Ministry of the Interior, and how t…

ナシーム・ニコラス・タレブ著,千葉敏生訳『反脆弱性 -不確実な世界を生き延びる唯一の考え方』(2012=2017)

反脆弱性―不確実な世界を生き延びる唯一の考え方 上下巻セット ダイヤモンド社 Amazon 全世界騒然の大ベストセラー!『ブラック・スワン』のタレブ最高傑作!! 経済、金融から、人生、そして愛まで――。この不確実な世界で私たちがいかに生きるべきか、すべてに…

及川祥平著『心霊スポット考 -現代における怪異端の実態』(2023)

心霊スポット考――現代における怪異譚の実態 作者:及川祥平 アーツアンドクラフツ Amazon 「心霊スポット」という言葉が、雑誌・テレビのメディアに使用され始めたのは1990年代前半。その後、「神奈川ジェイソン村」「新潟ホワイトハウス」「八王子首なし地蔵…

米澤泉, 馬場伸彦著『奥行きをなくした顔の時代 ーイメージ化する身体、コスメ・自撮り・SNS』(2021)

奥行きをなくした顔の時代―イメージ化する身体、コスメ・自撮り・SNS― 作者:米澤 泉,馬場伸彦 晃洋書房 Amazon 現代社会に溢れる、人格、感情、記憶、社会的関係などが排除された顔――「奥行きをなくした顔」。テクノロジーが進化し、ヴァーチャルとリアルが…

玉川裕子著『「ピアノを弾く少女」の誕生 -ジェンダーと近代日本の音楽文化史』(2023)

「ピアノを弾く少女」の誕生: ジェンダーと近代日本の音楽文化史 作者:玉川裕子 青土社 Amazon なぜ少女たちはピアノを習うのか日本に西洋音楽がもたらされ普及していくなかで、ほかの楽器に比べて一般の家庭に積極的に受け入れられていったピアノ。その習い…

竹内洋著『革新幻想の戦後史』(2011)

革新幻想の戦後史 作者:竹内 洋 中央公論新社 Amazon 左翼的でなければ相手にしてもらえない雰囲気は、戦後、どのように形成され変質したのか。渦中を見てきた社会学者が自分史として綴る 1章 悔恨共同体と無念共同体(三島由紀夫が描いた都知事選;北一輝…

香月孝史著『「アイドル」の読み方 -混乱する「語り」を問う』(2014)

「アイドル」の読み方: 混乱する「語り」を問う (青弓社ライブラリー 81) 作者:香月 孝史 青弓社 Amazon アイドルが一過性のブームではなく文化として根づきつつあるいま、アイドルという芸能ジャンルの特性を、「SNSや現場の重視」「アイドルのパーソナリテ…

東浩紀著『訂正する力』(2023)

訂正する力 (朝日新書) 作者:東 浩紀 朝日新聞出版 Amazon ひとは誤ったことを訂正しながら生きていく。 哲学の魅力を支える「時事」「理論」「実存」の三つの視点から、現代日本で「誤る」こと、「訂正」することの意味を問い、この国の自画像をアップデー…

岡奈津子著『〈賄賂〉のある暮らし ー市場経済化後のカザフスタン』(2019)

〈賄賂〉のある暮らし :市場経済化後のカザフスタン 作者:岡奈津子 白水社 Amazon ほんとうの豊かさとは?1989から30年、市場化が問いかけるもの ソ連崩壊後、独立して計画経済から市場経済に移行したカザフスタン。国のありかたや人びとの生活はどのよ…

西井開著『「非モテ」からはじめる男性学』(2021)

「非モテ」からはじめる男性学 (集英社新書) 作者:西井開 集英社 Amazon 恋人がいない、女性から好意を向けられない等の苦悩は、「非モテ」という言葉によって九〇年代後半からネットを賑わせてきた。現在も「非モテ」問題は多くの男性の心を捉えて離さない…

奥村隆著『反コミュニケーション』(2013)

反コミュニケーション (現代社会学ライブラリー 11) 作者:奥村 隆 弘文堂 Amazon 私はコミュニケーションが嫌いだ。できれば人と会いたくない。ひとりでいたい。電話もメールもしたくない。たとえば電子メールというものがあって、これを仕事上使わなくては…

佐藤俊樹著『社会学の新地平ーウェーバーからルーマンへ』(2023)

社会学の新地平 ウェーバーからルーマンへ (岩波新書) 作者:佐藤 俊樹 岩波書店 Amazon マックス・ウェーバーとニクラス・ルーマン――科学技術と資本主義によって規定された産業社会の謎に挑んだふたりの社会学の巨人。難解で知られる彼らが遺した知的遺産を…

須永史生著『ハゲを生きる-外見と男らしさの社会学』(1999)

ハゲを生きる―外見と男らしさの社会学 作者:須長 史生 勁草書房 Amazon 「ハゲると女性にもてない」「ハゲがダメなんじゃない、堂々としてないからダメなんだ」……ハゲについて当たり前のように繰り返される発言。はたしてそれらは本当なのか。著者の取材によ…

デヴィッド・グレーバー著,酒井隆史他訳『ブルシット・ジョブ-クソどうでもいい仕事の理論』(2018=2020)

ブルシット・ジョブ クソどうでもいい仕事の理論 作者:デヴィッド グレーバー 岩波書店 Amazon やりがいを感じないまま働く。ムダで無意味な仕事が増えていく。人の役に立つ仕事だけど給料が低い――それはすべてブルシット・ジョブ(クソどうでもいい仕事)の…

野尻亘「現代の流動化する時空間と 身体性の変容 ー欧米の人文地理学・社会学における モビリティ・アプローチの背景とその限界性ー」『桃山学院大学社会学論集』57(1)

【リンク】 The trends in the mobility approach in Anglophone human geographyand sociology are reviewed from its backgrounds and limitations.The author compares the characteristics of theories on mobility form thesociologists Urry and Shell…

北田暁大, 栗原裕一郎, 後藤和智著『現代ニッポン論壇事情 社会批評の30年史』(2017)

現代ニッポン論壇事情 社会批評の30年史 (イースト新書) 作者:北田暁大,栗原裕一郎,後藤和智 イースト・プレス Amazon この30年、日本の論壇はどのように在ったのか。たとえば、「若者論」。バッシングから擁護へと大きく舵を切った「若者論」の背景には、年…

貞包英之著『消費社会を問いなおす』(2023)

消費社会を問いなおす (ちくま新書 1706) 作者:貞包 英之 筑摩書房 Amazon 平成のデフレ不況を乗り越えてもなお、消費社会は私たちの生活全体を覆い尽くしている。消費社会がもたらしたのは「豊かさ」ばかりでなく、深刻な格差や環境問題でもあった。一…

北田暁大著『実況中継・社会学ー等価機能主義から学ぶ社会分析』(2022)

実況中継・社会学: 等価機能主義から学ぶ社会分析 (単行本) 作者:北田 暁大 有斐閣 Amazon 東京大学での講義をもとにした書き下ろし教科書。「いじめ」「愛国心」「○○化する社会」など,社会的な話題をどう考えると社会学になるのか。「等価機能主義」に軸足…