奥村隆著『反コミュニケーション』(2013)

 

 私はコミュニケーションが嫌いだ。できれば人と会いたくない。ひとりでいたい。電話もメールもしたくない。たとえば電子メールというものがあって、これを仕事上使わなくてはいけない。苦痛だ。いきなり誰かからメールが来て、それに返事をしなければならない。返事をしないこともあるが、返事をしないとなぜか気持ちが重くなってしまう。いやだいやだと思いながら、返事をする。いや、必要に迫られて、自分のほうからいきなりメールを送るときも多い。相手は私と同じようにメールを送られて苦痛だと思っているのだろうな、と思いながら。

序章 イントロダクション
 1.はじめに
 2.「よいコミュニケーション」とはなにか
 3.不気味な他者とともに

第1章 浸透としてのコミュニケーション――ルソー
 1.ふたつの経験
 2.浸透としてのコミュニケーション
 3.媒介者の空間

第2章 遊戯としてのコミュニケーション――ジンメル
 1.「結ぶ」と「分ける」
 2.距離とコミュニケーション
 3.社交、貨幣、自由

第3章 対話とディスコミュニケーション――ハーバーマス鶴見俊輔
 1.カフェにて
 2.対話としてのコミュニケーション
 3.ディスコミュニケーション

第4章 他者、承認、まなざし――レインとサルトル
 1.3つのユートピアニズム
 2.アイデンティティと承認
 3.まなざし、葛藤、誘惑

第5章 葛藤、身体、ダブル・バインド――レインとベイトソン
 1.家族のディスコミュニケーション
 2.遊びとダブル・バインド
 3.アイデンティティ vs. コミュニケーション

第6章インターミッション――ジラール
 1.B&Bにて
 2.模倣と自尊心
 3.ふたつの「死」

第7章 演技としてのコミュニケーション――ゴフマン(1)
 1.ダブル・ライフ
 2.表舞台/舞台裏
 3.思いやりとかげぐち

第8章 儀礼としてのコミュニケーション――ゴフマン(2)
 1.人格を礼拝する儀式
 2.透明のディストピア
 3.ルソー vs. ゴフマン

第9章 接続としてのコミュニケーション――ルーマン
 1.ダブル、ダブル、ダブル……
 2.接続としてのコミュニケーション
 3.ふたつの質問

第10章 パラドックスとしてのコミュニケーション――ベイトソンと吉田文五郎
 1.教育というコミュニケーション
 2.学習というコミュニケーション
 3.吉田文五郎のコミュニケーション

第11章 純粋なコミュニケーション――ギデンズ
 1.Aさんのレポート
 2.純粋なコミュニケーション
 3.レポートへのコメント

終章 反コミュニケーション
 1.研究室にて
 2.反コミュニケーション
 3.おわりに

あとがき