私はコミュニケーションが嫌いだ。できれば人と会いたくない。ひとりでいたい。電話もメールもしたくない。たとえば電子メールというものがあって、これを仕事上使わなくてはいけない。苦痛だ。いきなり誰かからメールが来て、それに返事をしなければならない。返事をしないこともあるが、返事をしないとなぜか気持ちが重くなってしまう。いやだいやだと思いながら、返事をする。いや、必要に迫られて、自分のほうからいきなりメールを送るときも多い。相手は私と同じようにメールを送られて苦痛だと思っているのだろうな、と思いながら。
序章 イントロダクション
1.はじめに
2.「よいコミュニケーション」とはなにか
3.不気味な他者とともに第1章 浸透としてのコミュニケーション――ルソー
1.ふたつの経験
2.浸透としてのコミュニケーション
3.媒介者の空間第2章 遊戯としてのコミュニケーション――ジンメル
1.「結ぶ」と「分ける」
2.距離とコミュニケーション
3.社交、貨幣、自由第3章 対話とディスコミュニケーション――ハーバーマスと鶴見俊輔
1.カフェにて
2.対話としてのコミュニケーション
3.ディスコミュニケーション第4章 他者、承認、まなざし――レインとサルトル
1.3つのユートピアニズム
2.アイデンティティと承認
3.まなざし、葛藤、誘惑第5章 葛藤、身体、ダブル・バインド――レインとベイトソン
1.家族のディスコミュニケーション
2.遊びとダブル・バインド
3.アイデンティティ vs. コミュニケーション第6章インターミッション――ジラール
1.B&Bにて
2.模倣と自尊心
3.ふたつの「死」第7章 演技としてのコミュニケーション――ゴフマン(1)
1.ダブル・ライフ
2.表舞台/舞台裏
3.思いやりとかげぐち第8章 儀礼としてのコミュニケーション――ゴフマン(2)
1.人格を礼拝する儀式
2.透明のディストピア
3.ルソー vs. ゴフマン第9章 接続としてのコミュニケーション――ルーマン
1.ダブル、ダブル、ダブル……
2.接続としてのコミュニケーション
3.ふたつの質問第10章 パラドックスとしてのコミュニケーション――ベイトソンと吉田文五郎
1.教育というコミュニケーション
2.学習というコミュニケーション
3.吉田文五郎のコミュニケーション第11章 純粋なコミュニケーション――ギデンズ
1.Aさんのレポート
2.純粋なコミュニケーション
3.レポートへのコメント終章 反コミュニケーション
1.研究室にて
2.反コミュニケーション
3.おわりにあとがき