山岸真編『90年代SF傑作選 下』(2002)

山岸真編『90年代SF傑作選 下』(2002)

 

ネビュラ賞ローカス賞を受賞したビッスンの諷刺SF、カナダを代表する作家ソウヤーによる、シャーロック・ホームズパスティーシュSF、論理のアクロバットを駆使したオーストラリアの作家イーガンのハードSF、ナノテクとバレエをテーマに描くクレスの感動作…成熟を迎えた90年代SFを代表する作家の傑作中短篇のほか、各篇の解説や英語圏SFの受賞作リストなどの資料も充実させた、ファン必携のアンソロジー

マックたち テリー・ビッスン 著 7-24

ホームズ、最後の事件ふたたび ロバート・J・ソウヤー 著 25-56

理解 テッド・チャン 著 57-128

誕生日 エスター・M・フリーズナー 著 129-162

フローティング・ドッグズ イアン・マクドナルド 著 163-210

標準ローソク ジャック・マクデヴィット 著 211-244

人間の血液に蠢く蛇 ジェイムズ・アラン・ガードナー 著 245-286

ルミナス グレッグ・イーガン 著 287-350

棺 ロバート・リード 著 351-374

ダンシング・オン・エア ナンシー・クレス 著 375-484

九〇年代SFの概況 山岸真 著 485-507

 

佐々木敦著『それを小説と呼ぶ』(2020)

 

 「批評」の終幕、そして「小説」の到来。小説という問題、その思考の足跡をすべて刻む。『新しい小説のために』、『これは小説ではない』に続く、文芸批評家としての最後の主著。 

第一章 方法序説
第二章 世界を数える
第三章 神を超えるもの
第四章 全体論と有限
第五章 小説の準備

 

青山拓央著『時間と自由意志-自由は存在するか』(2016)

 

これまで自由意志/決定論の対立として論じられてきた難問を、自由とは何かという議論からいったん離れ、「分岐問題」の枠組みのもとで考察しなおす。従来の哲学が依拠してきた対立図式を根底から揺さぶり、自由をめぐる議論に新たな境地をひらく圧倒的論考。

第一章 分岐問題
1 導入
2 問題の構造
3 準備的応答
4 作用と決定
5 多世界説
6 単線的決定論
7 現実主義と可能主義
8 解決
第二章 自由意志
1 概観
2 意志と主体
3 何かからの自由
4 分岐図の外へ
5 両立的自由
6 両立的責任
7 偶然の自由
8 それぞれの値段
第三章 実現可能性
1 時間と様相
スコトゥスアリストテレス
3 論理的可能性
4 タイプからトークンへ
5 現実と可能性の紐帯
6 言語的弁別
7 過去可能性
8 補遺
第四章 無自由世界
他我問題の反転
2 ストローソンとデネット
3 二人称の自由
4 なぜ道徳的であるべきか
5 擬人化される脳
6 フランクファート・ケース再考
7 自由とは何だったか
8 悟りと欺き
補論
1 時制的変化は定義可能か
2 無知の発見
3 叱責における様相と時間
4 指示の因果説と起源の本質説

 

吉川浩満著『理不尽な進化 増補新版-遺伝子と運のあいだ』(2014→2021)

 

生物種の99.9パーセントが絶滅する。生物の歴史はずいぶんと「理不尽」な遍歴をたどってきた。本書は、絶滅という観点から生物の歴史を眺め、俗説が人びとを魅了する構造を理解することで、進化論の本当のおもしろさを読者に差し出す。アートとサイエンスを全方位的に見渡し、かつ両者をあざやかにむすぶ、現代の名著がついに文庫化。

序章 進化論の時代

 進化論的世界像―進化論という万能酸
 みんな何処へ行った?―種は冷たい土の中に
 絶滅の相の下に―敗者の生命史
 用語について―若干の注意点
第1章 絶滅のシナリオ

 絶滅率九九・九パーセント
 遺伝子か運か
 絶滅の類型学
 理不尽な絶滅の重要性
第2章 適者生存とはなにか

 誤解を理解する
 模範解答と哲学的困惑
 お守りとしての進化論
 ダーウィン革命とはなんだったか)
第3章 ダーウィニズムはなぜそう呼ばれるか

 素人の誤解から専門家の紛糾へ
 グールドの適応主義批判―なぜなぜ物語はいらない
 ドーキンスの反論―なぜなぜ物語こそ必要だ
 デネットの追い討ち―むしろそれ以外になにが?
 論争の判定
終章 理不尽にたいする態度

 グールドの地獄めぐり
 歴史の独立宣言
 説明と理解
 理不尽にたいする態度
 私たちの「人間」をどうするか
文庫版付録 パンとゲシュタポ

 

小坂井敏晶著『増補 責任という虚構』(2008→2020)

 

人間は自由意志を持った主体的存在であり、自己の行為に責任を負う。これが近代を支える人間像だ。しかし、社会心理学脳科学はこの見方に真っ向から疑問を投げかける。ホロコースト・死刑・冤罪の分析から浮き上がる責任の構造とは何か。本書は、自由意志概念のイデオロギー性を暴き、あらゆる手段で近代が秘匿してきた秩序維持装置の仕組みを炙り出す。社会に虚構が生まれると同時に、その虚構性が必ず隠蔽されるのはなぜか。人間の根源的姿に迫った著者代表作。文庫版には自由・平等・普遍の正体、そして規範論の罠を明らかにした補考「近代の原罪」を付す。

序章 主体という物語
第1章 ホロコースト再考
第2章 死刑と責任転嫁
第3章 冤罪の必然性
第4章 責任という虚構
第5章 責任の正体
第6章 社会秩序と“外部”
結論に代えて
補考 近代の原罪―主体と普遍

 

 

松里公孝著『ポスト社会主義の政治 ─ポーランド、リトアニア、アルメニア、ウクライナ、モルドヴァの準大統領制』(2021)

 

約三〇年前、ソ連・東欧の社会主義政治体制は崩壊した。議会制=ソヴェト制の外観の下、一党制または事実上の単一政党制を採用していた国々は、複数政党制を前提とする新しい政治体制への転換を迫られた。以来現在まで、これらの国々では幾度となく政治体制の変更が行われ、それは時に暴力を伴う。この政治体制のダイナミックな変化を理解する鍵となるのが、ポスト社会主義圏に多く見られる「準大統領制」というシステムである。地政学的対立とポピュリズムに翻弄されたソ連崩壊後の三〇年を、大統領・議会・首相の関係から読み解く。

序章 準大統領制とは何か
第1章 共産党体制からの移行のロードマップ
第2章 ポーランド―首相大統領制の矛盾
第3章 リトアニア―首相大統領制ポピュリズム
第4章 アルメニア―一党優位制と強い議会の結合
第5章 ウクライナ―権力分散的準大統領制
第6章 モルドヴァ―議会大統領制から準大統領制への回帰
終章 地政学的対立とデモクラシー

 

梶谷懐,高口康太著『幸福な監視国家・中国 』(2019)

 

習近平体制下で、人々が政府・大企業へと個人情報・行動記録を自ら提供するなど、AI・アルゴリズムを用いた統治が進む「幸福な監視国家」への道をひた走っているかに見える中国。セサミ・クレジットから新疆ウイグル問題まで、果たしていま何が起きているのか!?気鋭の経済学者とジャーナリストが多角的に掘り下げる!

第1章 中国はユートピアか、ディストピア
    間違いだらけの報道/専門家すら理解できていない
    「分散処理」と「集中処理」/テクノロジーへの信頼と「多幸感」
    未来像と現実のギャップがもたらす「認知的不協和」
    幸福を求め、監視を受け入れる人々
    中国の「監視社会化」をどう捉えるべきか

第2章 中国IT企業はいかにデータを支配したか
    「新・四大発明」とは何か/アリババはなぜアマゾンに勝てたのか
    中国型「EC」の特徴/ライブコマース、共同購入、社区EC
    スーパーアプリの破壊力/ギグエコノミーをめぐる賛否両論
    中国のギグエコノミー/「働き方」までも支配する巨大IT企業
    プライバシーと利便性/なぜ喜んでデータを差し出すのか

第3章 中国に出現した「お行儀のいい社会」
    急進する行政の電子化/質・量ともに進化する監視カメラ
    統治テクノロジーの輝かしい成果/監視カメラと香港デモ
    「社会信用システム」とは何か/取り組みが早かった「金融」分野
    「金融」分野に関する政府の思惑/トークンエコノミーと信用スコア
    「失信被執行人リスト」に載るとどうなるか
    「ハエの数は2匹を超えてはならない」
    「厳しい処罰」ではなく「緩やかな処罰」/紙の上だけのディストピア
    道徳的信用スコアの実態/現時点ではメリットゼロ
    統治テクノロジーと監視社会をめぐる議論
    アーキテクチャによる行動の制限/「ナッジ」に導かれる市民たち
    幸福と自由のトレードオフ/中国の現状とその背景

第4章 民主化の熱はなぜ消えたのか
    中国の「検閲」とはどのようなものか/「ネット掲示板」から「微博」へ
    宜黄事件、烏坎事件から見た独裁政権の逆説
    習近平が放った「3本の矢」/検閲の存在を気づかせない「不可視化」
    摘発された側が摘発する側に/ネット世論監視システムとは

第5章 現代中国における「公」と「私」
    「監視社会化」する中国と市民社会/第三領域としての「市民社会
    現代中国の「市民社会」に関する議論/投げかけられた未解決の問題
    「アジア」社会と市民社会論/「アジア社会」特有の問題
    「公論としての法」と「ルールとしての法」/公権力と社会の関係性
    2つの「民主」概念/「生民」による生存権の要求
    「監視社会」における「公」と「私」

第6章 幸福な監視国家のゆくえ
    功利主義と監視社会/心の二重過程理論と道徳的ジレンマ
    人類の進化と倫理観/人工知能に道徳的判断ができるか
    道具的合理性とメタ合理性/アルゴリズムにもとづく「もう1つの公共性」
    「アルゴリズム的公共性」とGDPR
    人権保護の観点から検討すべき問題
    儒教的道徳と「社会信用システム」/「徳」による社会秩序の形成
    可視化される「人民の意思」/テクノロジーの進歩と近代的価値観の揺らぎ
    中国化する世界?

第7章 道具的合理性が暴走するとき
    新疆ウイグル自治区と再教育キャンプ/問題の背景
    脅かされる民族のアイデンティティ/低賃金での単純労働
    パターナリズムと監視体制/道具的合理性の暴走
    テクノロジーによる独裁は続くのか
    士大夫たちのハイパー・パノプティコン
    日本でも起きうる可能性/意味を与えるのは人間であり社会
    
    おわりに
    
    主な参考文献