池本淳一「武術学校のエスノグラフィー再生産戦略とアイデンティティ構築の視点から」『社会学評論』2013年, 64巻, 2号, p.169-186

本文

武術学校とはスポーツ化した「競技武術」の専門課程をもつ中国における私立の体育系学校であり, 1980年代までの間に大学やナショナルチームを中心に発展してきた. 本稿は武術学校における再生産戦略とアイデンティティ構築に着目し, 競技武術の民間普及をもたらした社会的背景と, 実践者にとっての競技武術の意味を明らかにする. 具体的には以下の点を明らかにした.
第1に, 武術学校への転入学は農村の教育問題や都市の住居問題を解決するために, 農民や農民工の親によって決定された再生産戦略の一部であったこと. 第2に, 武術を学歴取得や就職のための技能として受入れ, 親の用意した再生産戦略を自分自身の戦略として受け継いだ生徒のみが, 中学部以上に進学していくこと.
第3に, 卒業生の多くは武術教師や警備員として都市で就職していくこと. 他方で豊富な身体資本を蓄積した生徒はステート・アマに, 豊富な文化資本を蓄積した生徒は体育大学・教育大学の武術科の大学生となること.
第4に, 卒業後, 武術は本人の出世と親子での都市移住を達成させるための経済資本となること. くわえて武術に打ち込むことで, 武術がナショナルかつ私的なアイデンティティを生み出す「身体化された文化資本」となること.
最後に競技武術の民間化をもたらした社会的背景, 武術文化が生み出す公的で私的な文化的アイデンティティ形成の可能性と危険性, 武術のローカリゼーションに関する諸問題を指摘した.

 

マーティン・ガードナー著, 高山宏訳『詳注アリス 完全決定版』(2015=2019)

 

詳注アリス 完全決定版
 

キャロルの手紙や日記、歴史資料や学問的解釈etc…を駆使して付けられた、300以上の注釈を収録。これまで世界中の画家が描いてきた100枚以上の「アリス」挿絵を精選収録。公刊された「アリス」からは削除された幻の「かつらをかぶった雀蜂」挿話を復元収録。テニエルの貴重な鉛筆ラフスケッチも収録。

『詳注アリス』序文
『新注アリス』序文
『詳注アリス 決定版』序文 
『ナイト・レター』誌詳注への序文
『詳注アリス 完全決定版』への序文
不思議の国のアリス:詳注付き全文
鏡の国のアリス :詳注付き全文
かつらをかぶった雀蜂:『鏡の国のアリス』の「割愛」されたエピソード
ルイス・キャロル関連協会現況
謝辞
訳者あとがき
主要参考文献
スクリーンの上の「アリス」
本書に収録されたイラストレーターたち

 

新庄耕著『ニューカルマ』(2016)

 

ニューカルマ (集英社文庫)

ニューカルマ (集英社文庫)

 

大手総合電機メーカーの関連会社に勤務するユウキ。かねてから噂されていたリストラが実施され、将来に不安を募らせる中、救いを求めた先はネットワークビジネスの世界だった。成功と転落、失ってしまった仕事と友人…。あげく、ユウキが選び取った道とは―。

 

吉見俊哉著『アフター・カルチュラル・スタディーズ』(2019)

 

アフター・カルチュラル・スタディーズ

アフター・カルチュラル・スタディーズ

 

〈文化〉と〈政治〉をめぐる問いを深化させてきたカルチュラル・スタディーズの大いなる蓄積の後に、どのような批判的な知を構築し直せるのか? そして、新自由主義により社会が分断され、現実の基盤が崩壊するなかで、どのような知を追い求めればいいのか? 〈連帯〉へと向かう、挑戦の書。

序 章 トランプ時代のカルチュラル・スタディーズ――再定義の試み

第Ⅰ部 越境する文化
Ⅰ-1 岐路に立つカルチュラル・スタディーズ
Ⅰ-2 サブカルチャーと差異の政治
Ⅰ-3 ポストモダニティとほつれゆく文化
Ⅰ-4 問いとしての政治的身体
Ⅰ-5 カルチュラル・スタディーズの旅は続く――追悼・スチュアート・ホール
Ⅰ-6 東アジアのCultural Studiesとは何か
Ⅰ-7 カルチュラル・スタディーズグラムシの対話をめぐって

第Ⅱ部 抗争する文化
Ⅱ-1 「アメリカの世紀」の終わり
Ⅱ-2 「アメリカ」を欲望/忘却する戦後――「基地」と「消費」の屈折をめぐって
Ⅱ-3 東アジアにおける「アメリカ」という日常意識
Ⅱ-4 誰が「沖縄」を消費するのか
Ⅱ-5 アメリカニズムとは何か――古矢旬『アメリカニズム』を読む
Ⅱ-6 アメリカの終わりと日本の末路――二一世紀はどんな時代か

第Ⅲ部 共振する文化
Ⅲ-1 皇居前から国会前へ――戦後日本と〈街頭の政治〉の転回
Ⅲ-2 「セゾン文化」とは何だったのか
Ⅲ-3 まなざしの檻 見ることの権利――見田社会学と可視性の政治
Ⅲ-4 鶴見良行アメリカ――もうひとつのカルチュラル・スタディーズ
Ⅲ-5 カルチュラル・タイフーンの翼に乗って

エピローグ 劇つくりの越境者――追悼・如月小春

参考文献
あとがき
人名・団体名索引

 

山下泰平著『「舞姫」の主人公をバンカラとアフリカ人がボコボコにする最高の小説の世界が明治に存在したので20万字くらいかけて紹介する本』(2019)

 

漱石・鴎外を人気で圧倒しながら今では知名度ゼロの“明治娯楽物語”。その規格外の世界をよみがえらせる。朝日新聞&ジブリも注目する異才が描く、ネオ文学案内。

序 章 小説未満の世界 明治の弥次喜多は宇宙を旅する
第1章 超高速!明治時代 五倍のスピードで万事が動く
第2章 庶民が愛した〈明治娯楽物語〉 日清・日露戦争で暴れまわる馬丁たち
第3章 〈講談速記本〉の帰還 無責任体制が生んだ娯楽(エンタメ)の王様
第4章 地獄に落ちそうな勇士ども 長広舌の真田幸村二世&神より強い猪突猛進男
第5章 豆腐豪傑は二度死ぬ ミスター講談速記本・桂市兵衛
第6章 〈最初期娯楽小説〉の野望 「舞姫」の主人公をバンカラとアフリカ人がボコボコにする
第7章 「科学」が生んだ近代キャラ 嫌われ作家の奇妙な冒険
第8章 〈犯罪実録〉という仇花 強くない、謝らない、いいことしない犯罪者たち
第9章 忍者がやりたい放題するまで 忍者復活の影にアメリカの怪力女あり
第10章 恐るべき子供豪傑たち 大人をボコボコにする少年少女
終 章 不死の聖

 

江永泉, 木澤佐登志, ひでシス, 役所暁著『闇の自己啓発』(2021)

 

闇の自己啓発

闇の自己啓発

 

現代思想やインターネットカルチャーの最深部を駆けめぐり、未知なる事物と出会うとき、私たちの世界観・人生観は一変する!話題騒然のnote連載読書会「闇の自己啓発会」、ついに書籍化。

第1部 闇の社会(ダークウェブ―課題図書 木澤佐登志『ダークウェブ・アンダーグラウンド―社会秩序を逸脱するネット暗部の住人たち』;中国―課題図書 梶谷懐/高口康太『幸福な監視国家・中国』;雑談1 『天気の子』と神新世)
第2部 闇の科学(AI・VR―課題図書 海猫沢めろん『明日、機械がヒトになる―ルポ最新科学』;宇宙開発―課題図書 稲葉振一郎銀河帝国は必要か?―ロボットと人類の未来』;雑談2 『ジョーカー』のダンス)
第3部 闇の思想(反出生主義―課題図書 『現代思想』2019月11月号 特集「反出生主義を考える」;アンチソーシャル―課題図書 レオ・ベルサーニ/アダム・フィリップス『親密性』;雑談3 ゼロ年代から加速して―加速主義、百合、シンギュラリティ)
補論 闇の自己啓発のために

21 井口『少年殺人者考』

少年殺人者考

少年殺人者考

 

 21 ボンド『ラカンの殺人現場案内』 

ラカンの殺人現場案内

ラカンの殺人現場案内

 

 22 バトラー『戦争の枠組み―生はいつ嘆きうるものであるのか』

 68 グレン・ヤフェット『マトリックス完全分析』

マトリックス完全分析

マトリックス完全分析

 

 69 ボストロム『スーパーインテリジェンス 超絶AIと人類の命運』

73 梶谷懐『幸福な監視国家・中国』

 76 ジェイミー・バートレット『ラディカルズ 世界を塗り替える<過激な人たち>』

ラディカルズ 世界を塗り替える<過激な人たち>

ラディカルズ 世界を塗り替える<過激な人たち>

 

 81 シンガー『功利主義とは何か』

功利主義とは何か

功利主義とは何か

 

107 瀬川, 宇佐美, 大屋『法哲学』 

法哲学

法哲学

 

 109 ウェルベック素粒子

素粒子 (ちくま文庫)

素粒子 (ちくま文庫)

 

 115 植原『自然主義入門: 知識・道徳・人間本性をめぐる現代哲学ツアー』

 129 堀江『ポップ・スピリチュアリティ: メディア化された宗教性』 

ポップ・スピリチュアリティ: メディア化された宗教性
 

143 海猫沢めろん『明日、機械がヒトになる ルポ最新科学』

 144 海猫沢めろん『左巻キ式ラストリゾート』

左巻キ式ラストリゾート (星海社文庫)

左巻キ式ラストリゾート (星海社文庫)

 

144 岡嶋二人クラインの壺

クラインの壷 (講談社文庫)

クラインの壷 (講談社文庫)

 

 153 巽孝之『盗まれた廃墟ーポール・ド・マンアメリカ』

 153 土田知則『ポール・ド・マンの戦争』

ポール・ド・マンの戦争 (フィギュール彩 101)

ポール・ド・マンの戦争 (フィギュール彩 101)

  • 作者:土田 知則
  • 発売日: 2018/05/21
  • メディア: 単行本
 

 153 ウォルター・ベンマイケルズ, 三浦玲一『シニフィアンのかたち―一九六七年から歴史の終わりまで』

 174 稲葉振一郎銀河帝国は必要か?』

銀河帝国は必要か? (ちくまプリマー新書)

銀河帝国は必要か? (ちくまプリマー新書)

 

 180 アガンベン『スタシスー政治的パラダイムとしての内戦』

180 ブデーデカンプ『モナドの窓』

モナドの窓

モナドの窓

 

180 ブデーデカンプ『芸術家ガリレオ・ガリレイ―月・太陽・手』

180 ブデーデカンプ『ダーウィンの珊瑚』 

 183 三中信宏系統樹曼荼羅ーチェイン・ツリー・ネットワーク』

系統樹曼荼羅―チェイン・ツリー・ネットワーク

系統樹曼荼羅―チェイン・ツリー・ネットワーク

  • 作者:三中 信宏
  • 発売日: 2012/11/09
  • メディア: 単行本
 

 183 三中信宏『系統体系学の世界: 生物学の哲学とたどった道のり 』 

 209 マイケル・ルイス『フラッシュ・ボーイズ 10億分の1秒の男たち』

 229 三浦雅士『身体の零度』

身体の零度 (講談社選書メチエ)

身体の零度 (講談社選書メチエ)

  • 作者:三浦 雅士
  • 発売日: 1994/11/02
  • メディア: 単行本
 

 293 ベルサーニ, フィリップス『親密性』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

牧野智和「「自己」のハイブリッドな構成について考える」『ソシオロゴス』2017年, 41号, p.36-57

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自己のあり方、その行為者性のあり方に「モノ」はいかに関係するのか。本稿ではアクターネットワーク理論(ANT)と統治性研究を手がかりにして、自己とモノ、人間と非人間の関係性を考察する視点の錬磨を試みるものである。人間と非人間の関係は科学技術社会論を中心に検討が重ねられてきたが、その一つの到達点にブルーノ・ラトゥールらが提案したANTがある。この立場は技術・社会・人間を切り分けることなく、異種混交的なネットワークとして記述・理解しようとする新しい魅力的な切り口を提示している。しかし、個別事例を越えたネットワーク化の戦略や、今日増殖しつつあるハイブリッドのデザインという事態までをANTの立場は捉えることはできない。このようなANTの限界を超えるために、ジョン・ローのミシェル・フーコーへの言及、さらに統治性研究を発展的に折衷することで、デザインされる異種混交性の考察が可能になるのではないかと考えられた。

37「倫理学者のピーター・ポー ル・フェルベークは、モノは人間の経験を「媒 介する装置」になると述べ、もしそれらがなけ れば「人間は経験を持つことすらできない」と さえ記している」

ピーター=ポールフェルベーク, Verbeek, Peter-Paul, 2011, Moralizing Technology: Understanding and Designing the Morality of Things, The University of Chicago Press.(=2015,鈴木俊洋訳『技術の道徳化——事物の道徳 性を理解し設計する』法政大学出版局.)