リチャード・ローティ著, 室井尚他訳『プラグマティズムの帰結』(1982=1985→2014)

 

プラグマティズムの帰結 (ちくま学芸文庫)

プラグマティズムの帰結 (ちくま学芸文庫)

 

知識の確実な基盤を設立すべく、実在と認識との対応(=真理)を飽くことなく求めたデカルト、カント。近代西洋哲学の底に流れるそうした認識論的欲求を脱構築し、新たな知の形を模索したハイデガーウィトゲンシュタイン、そしてデューイ。これら二つの勢力の相克こそが「哲学」であると考えるローティは、後者になお残存する「認識論的」衝動からも解放される「ポスト“哲学”」時代を予告した。それでは哲学にはいま何ができるのか?「真理」とは何でありうるのか?本書では主著『哲学と自然の鏡』刊行後に巻き起こった激論に応答しつつ、さらなる問いへと挑む。

プラグマティズムと哲学
たとえ世界を失っても
哲学を純粋に保つこと―ウィトゲンシュタイン試論
伝統を超えること―ハイデガーとデューイ
職業化した哲学と超越論主義文化
デューイの形而上学
エクリチュールとしての哲学―デリダ試論
虚構的言説の問題なんてあるのだろうか?
一九世紀の観念論と二〇世紀のテクスト主義
プラグマティズム相対主義・非合理主義
カヴェルと懐疑論
方法・社会科学・社会的希望
今日のアメリカ哲学

 

津久井五月著『コルヌトピア』(2017)

 

コルヌトピア

コルヌトピア

 

 2084年、人類が、植物の生理機能を演算に応用する技術〈フロラ〉を生み出した未来。東京は、23区全体を取り囲む環状緑地帯(グリーンベルト)によって世界でも群を抜く計算資源都市となっていた。フロラ開発設計企業に勤める青年・砂山淵彦は、多摩川中流で発生したグリーンベルトの事故調査のなかで、天才植物学者・折口鶲(おりくち・ひたき)と出逢う。首筋につける〈角〉――ウムヴェルトと呼ばれる装置を介してフロラの情報処理を脳に描出(レンダリング)する淵彦は、鶲との仕事の最中に突如意識を失ってしまう。混濁する意識の中で思い出される、藤袴嗣実(ふじばかま・つぐみ)という少年と過ごした優しき日々。未来都市に生きる三人の若者たちを通して描かれる、植物と人類の新たなる共生のヴィジョンとは? 25歳の現役東大院生による、第5回ハヤカワSFコンテスト受賞作。

 

池内紀著『闘う文豪とナチス・ドイツ-トーマス・マンの亡命日記』(2017)

 

大作『ブッデンブローク家の人々』で若くして名声を獲得し、五十四歳でノーベル文学賞を受賞したドイツ人作家トーマス・マン。だが、ファシズム台頭で運命は暗転する。体制に批判的なマンをナチスは国外追放に。以降、アメリカをおもな拠点に、講演やラジオ放送を通じてヒトラー打倒を訴え続け、その亡命生活は二十年近くに及んだ。激動の時代を、マンはどう見つめ、記録したか。遺された浩瀚な日記から浮かび上がる闘いの軌跡。

I クヌート・ハムスンの場合 / レマルクのこと / リトマス試験紙 / プリングスハイム家 / 二・二六事件 / 二つの喜劇
II 大戦勃発の前後 / ドイツ軍、パリ入城 / 転換の年 / 奇妙な状況 / ホモ・ポリティクス / ツヴァイクの場合 / 立ち襟と革ジャン
III 封印の仕方 /「白バラ」をめぐって / ゲッベルスの演説 /『ファウストゥス博士』の誕生 / 終わりの始まり / 噂の真相 / 終わりと始まり /
IV ニュルンベルク裁判 / 父と子 / 再度の亡命 /「正装」の人 / 魔術師のたそがれ / 最後の肖像

 

森本あんり著『異端の時代-正統のかたちを求めて』(2018)

 

異端の時代――正統のかたちを求めて (岩波新書)

異端の時代――正統のかたちを求めて (岩波新書)

 

なぜトランプは世界を席巻し続けるのか.蔓延するポピュリズムは民主主義の異端か,それとも正統と化したのか――.キリスト教史の展開,丸山眞男らの議論を精緻に辿り,「正統と異端」の力学から現代人のかくれた宗教性と,その陥穽を示す.神学者が十年来抱えたテーマがついに結実,混迷する世界を読み解く鍵がここにある.

序 章 正統の腐蝕――現代世界に共通の問いかけ
 1 変質する政党政治
 2 反知性主義の行方

第一章 「異端好み」の日本人――丸山眞男を読む
 1 「L正統」と「O正統」
 2 異なる価値秩序の併存
 3 日本的な「片隅異端」
 4 未完に終わった正統論

第二章 正典が正統を作るのか
 1 宗教学の諸前提
 2 書物になる前の聖書
 3 正典化の基準
 4 異端が正典を作る
 5 歴史の審判

第三章 教義が正統を定めるのか
 1 ハルナックの困惑
 2 正典から教義へ
 3 「どこでも,いつでも,誰にでも」
 4 根本教義なら正統を定義できるか
 5 始源も本質を定義しない
 6 「祈りの法」と「信仰の法」

第四章 聖職者たちが正統を担うのか
 1 「地の黙した人々」に聞く
 2 厳格な性倫理という誤解
 3 オリゲネスの後悔
 4 高貴なる異端
 5 凡俗なる正統

第五章 異端の分類学――発生のメカニズムを追う
 1 正統の存在論
 2 現代民主主義の酩酊
 3 異端発生のメカニズム
 4 分派・異端・異教

第六章 異端の熱力学――中世神学を手がかりに
 1 社会主義体制との比較
 2 ドナティストの潔癖
 3 秘跡論から見る正統
 4 丸山の誤解
 5 改革の熱情

第七章 形なきものに形を与える――正統の輪郭
 1 絵の本質は額縁にあり
 2 異端排斥文の定式
 3 制約による自由
 4 「複数可算名詞」としての自由
 5 正統の受肉

第八章 退屈な組織と煌めく個人――精神史の伏流
 1 個人の経験が判断の基準に
 2 自己表現の至高性
 3 普遍化する異端
 4 個人主義的宗教の煌めき
 5 反骨性のアイコン
 6 今日もっともありふれた宗教形態
 7 個人主義的宗教の特徴

終 章 今日の正統と異端のかたち
 1 民主主義とポピュリズム
 2 正統性を堪能する人びと
 3 信憑性構造としての正統
 4 真正の異端を求めて

引用文献/参考文献

 10 ナイム『権力の終焉』

権力の終焉

権力の終焉

 

 57「正典はしばしば、正統派が異端を排除するために作った道具立てであるかのように見なされる。だが、事実は逆で、まず異端(マルキオン)が正典を作り、それにあわてた正統が自分たちでも正典(ムラトリ断片)を作って対抗したのである。つまり、異端は正典を根拠として排除されたのではない。正典が異端を排除したのではなく、むしろ異端が存在したおかげで正典が成立したのである」

218 先崎『違和感の正体』

違和感の正体 (新潮新書)

違和感の正体 (新潮新書)

 

 

中沢明子著『埼玉化する日本』(2014)

 

埼玉化する日本 (イースト新書)

埼玉化する日本 (イースト新書)

 

埼玉には「何もない」。たいした観光地もなく、のっぺらぼうな郊外と、ありがちな風景が広がるファスト風土…。しかし、埼玉には三大ショッピングモールがある。また、ショッピングモールにはないような東京の高感度ショップにも、簡単にアクセスできる位置にある。つまり、マス消費も高感度消費も手に入れられる理想の地方であり、普通の人が心地良く無理なく暮らせる装置と環境が揃っているのだ。ちょっといい、ちょうどいい、それが埼玉。埼玉から見える日本の消費の行方を、埼玉在住の著者が愛と毒舌たっぷりに考察した一冊。

第1章 マイルドヤンキー論に疑問符
第2章 モール万能論が見落としているもの
第3章 モールの優等生、埼玉のモール御三家
第4章 エキナカの進化は大宮から始まった
第5章 埼玉発、懐にやさしい三大企業
第6章 埼玉の飛び地、池袋の躍進
第7章 小江戸、川越は成功したモール
第8章 高感度ショップを47都道府県に
第9章 埼玉化する日本

稲葉振一郎著『社会学入門-〈多元化する時代〉をどう捉えるか』(2009)

 

社会学入門 〈多元化する時代〉をどう捉えるか (NHKブックス)

社会学入門 〈多元化する時代〉をどう捉えるか (NHKブックス)

 

格差や家族問題から国際紛争まで何でも扱う社会学。では、その根本に流れる問題意識とはどのようなものか?「無意識」の発見に象徴される、近代の理性的人間観の崩壊を踏まえ、人々が無自覚にもつ価値観と、社会形成とを関連づけて捉える視点だ。以上の見立ての下、デュルケムやウェーバーらを考察するとともに、他の諸学問との比較を通して、社会学の輪郭を描き出す。パーソンズ以降、社会学の中心理論の不在が続く現状を捉え直し、ダイナミックに変容する現代社会を分析する上での、社会学の新たな可能性をも探る。

はじめに
Ⅰ 社会学の理論はどのようなものか
第1講 理論はなぜ必要か──共通理論なき社会学
第2講 「モデル」とは何か──合理的主体モデルの考察
第3講 方法論的全体主義というアプローチ
第4講 社会学は何を対象にするか──「形式」への着目

Ⅱ 社会学はいかに成立したのか──近代の自己意識の再検討
第5講 社会学前史(1)──近代社会科学の誕生
第6講 社会学前史(2)──進化論と比較文明史のインパク
第7講 モダニズムの精神──前衛芸術は何を変えたか
第8講 学問におけるモダニズム
第9講 デュルケムによる近代の反省──意味の喪失への眼差し
第10講 ウェーバーマルクス主義

Ⅲ 〈多元化する時代〉と社会学
第11講 危機についての学問
第12講 二〇世紀後半以降の理論社会学──パーソンズフーコー構築主義
最終講 社会学の可能性──格差・差別・ナショナリズム

付録 初学者のための読書案内
主要人物年表
あとがき

千葉雅也著『思弁的実在論と現代について』(2018)

 

思弁的実在論と現代について: 千葉雅也対談集

思弁的実在論と現代について: 千葉雅也対談集

 

いま最も注目される気鋭の哲学者、待望の初対談集。第一線で活躍する論客たちと、哲学、文学、社会、精神医学、サブカルチャーなどを横断し、現代の問題を縦横無尽に語りつくす。思考の前衛がここにある

第1部 思弁的実在論

 思弁的転回とポスト思考の哲学×小泉義之
 ポスト・ポスト構造主義エステティクス×清水高志
 思弁的実在論と新しい唯物論×岡嶋隆佑
 権威(オーソリティ)の問題―思弁的実在論から出発して×アレクサンダー・ギャロウェイ
第2部 現代について

 装置としての人文書―文学と哲学の生成変化論×いとうせいこう
 中途半端に猛り狂う狂気について×阿部和重
 「後ろ暗さ」のエコノミー―超管理社会とマゾヒズムをめぐって×墨谷渉×羽田圭介
 イケメノロジーのハードコア×柴田英里×星野太
 ポスト精神分析的人間へ―メンタルヘルス時代の“生活”×松本卓也
 絶滅と共に哲学は可能か×大澤真幸×吉川浩満