小林恭二著『ゼウスガーデン衰亡史』(1987)

 

ゼウスガーデン衰亡史

ゼウスガーデン衰亡史

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うらぶれた場末の遊園地、「下高井戸オリンピック遊戯場」は双子の天才、藤島宙一・宙二兄弟の卓越した経営手腕により急成長を遂げ、「ゼウスガーデン」と名を変えて、ありとあらゆる欲望を吸収した巨大な快楽の王国となってゆく。果てなき人間の欲望と快楽の狂走を20世紀末から21世紀までの百年という壮大なスケールで描く快作長篇。

 

【書評】田辺秋守「築地正明著『わたしたちがこの世界を信じる理由 『シネマ』からのドゥルーズ入門』」『映像学』2021年, 105巻, p.112-116

 

 

千葉雅也,山内朋樹,読書猿,瀬下翔太著『ライティングの哲学-書けない悩みのための執筆論』(2021)

 

書くのが苦しい4人と一緒に「書けない」悩みを哲学しよう!

「書き出しが決まらない」「キーボードに向き合う気力さえ湧いてこない」「何を書いてもダメな文章な気がする」……何かを書きたいと思いつめるがゆえの深刻な悩みが、あなたにもあるのではないでしょうか? 本書は「書く」ことを一生の仕事としながらも、しかしあなたと同じく「書けない」悩みを抱えた4人が、新たな執筆術を模索する軌跡を記録しています。どうすれば楽に書けるか、どうしたら最後まで書き終えられるか、具体的な執筆方法から書くことの本質までを縦横無尽に探求し、時に励まし合い、4人は「書けない病」を克服する手がかりを見つけ出します。さあ、あなたも書けない苦しみを4人と哲学し、分かち合い、新たなライティングの地平へと一緒に駆け出していきましょう!

はじめに 山内朋樹

座談会その1
挫折と苦しみの執筆論
Section.1 「書くこと」はなぜ難しいのか?
Section.2 制約と諦めのススメ
Section.3 「考えること」と「書くこと」

執筆実践
依頼:「座談会を経てからの書き方の変化」を8000文字前後で執筆してください。

断念の文章術 読書猿
散文を書く 千葉雅也
書くことはその中間にある 山内朋樹
できない執筆、まとめる原稿ーー汚いメモに囲まれて 瀬下翔太

座談会その2
快方と解放への執筆論
Section.1 どこまで「断念」できたか?
Section.2 「執筆」の我執から逃れ自由に「書く」

あとがき 千葉雅也

 

アンドレス・バルバ著,宇野和美訳『きらめく共和国』(2017→2020)

 

1994年、緑のジャングルと茶色い川をかかえる亜熱帯の町サンクリストバルに、理解不能な言葉を話す子どもたちがどこからともなく現れた。彼らは物乞いをしたり盗みを働いたりして大人たちを不安に陥れ、さらにスーパーを襲撃した。そして数ヶ月後、不可解な状況で32人の子どもたちが一斉に命を落とした。子どもたちはどこから来たのか。どうして死ぬことになったのか。社会福祉課の課長として衝撃的な出来事に関わった語り手が、22年後のいま、謎をひもといていく──。
現代スペインを代表する作家が奇妙な事件を通して描く、かわいらしさと表裏一体の子どもの暴力性、そして野生と文明、保護と支配の対比。純粋で残酷な子どもたちの物語。訳者あとがき=宇野和美

 

カルロ・ギンズブルグ著,杉山光信訳『チーズとうじ虫-16世紀の一粉挽屋の世界像』(1976=1984→2012)

 

1583年9月、イタリア東北部、当時はヴェネツィア共和国本土属領のフリウリ地方において、ひとりの粉挽屋が教皇庁により告訴された。名をドメニコ・スカンデッラといい、人びとからはメノッキオと呼ばれていた。職業柄、白のチョッキ、白のマント、白麻の帽子をいつも身に着け、そして裁判の席にあらわれるのもこの白ずくめの服装だった。
「各人はその職業に従って働く。あるものは身体を動かし骨折って働き、あるものは馬鍬で耕す、そして私はといえば神を冒瀆するのが仕事だ」
「私が考え信じるところでは、すべてはカオスである、すなわち土、空気、水、火のすべてが渾然一体となったものである。この全体は次第に塊になっていった。ちょうど牛乳からチーズができるように。そしてチーズの塊からうじ虫が湧き出るように天使たちが出現したのだ」
かく語り、二度にわたる裁判を経て焚刑に処せられたメノッキオとは何者か。異端審問記録ほか埋もれた史料を駆使しつつ地方農民のミクロコスモスを復元、民衆文化の深層にスリリングに迫ったギンズブルグ史学の初期傑作。
解説「ずれを読み解く——ギンズブルグの方法について」(上村忠男)を付す。

はじめに/はじめに 注

1 メノッキオ/2 村/3 最初の審問/4 「悪魔に憑かれている」?/5 コンコルディアからポルトグルアロへ/6 「高い地位にある方々に対して存分に語る」/7 古いものを残した社会/8 「かれらは貧しい人びとからむさぼりとる」/9 「ルター派」と再洗礼派/10 粉挽屋、絵師、道化/11 「これらの見解を、私は自分の脳味噌から引き出したのです」/12 書物/13 村の読者たち/14 印刷されたページと「空想的な見解」/15 行き止まり?/16 処女たちの神殿/17 聖母の葬儀/18 キリストの父/19 最後の審判の日/20 マンデヴィルの旅行記/21 ピグミーと人食い人種/22 「自然の神」/23 三つの指輪/24 書字の文化と口頭伝承の文化/25 カオス/26 対話/27 神話的なチーズ、現実のチーズ/28 知の独占/29 『聖書の略述記』/30 比喩の機能/31 「主人」「貨幣」「労働者」/32 ひとつの仮説/33 農民の宗教/34 魂/35 「わかりません」/36 ふたつの精神、七つの魂、四つの元素/37 ある観念の軌跡/38 矛盾/39 天国/40 ある新しい「生き方」/41 「司祭を殺すこと」/42 「新世界」/43 審問の終了/44 裁判官への手紙/45 修辞の綾/46 最初の判決/47 牢獄/48 故郷への帰還/49 告発/50 ユダヤ人との夜の対話/51 二度目の裁判/52 「空想」/53 「虚栄と夢想」/54 「偉大なる神よ、全能の崇高なる神よ」/55 「もし十五年前に死んでいたなら」/56 二度目の判決/57 拷問/58 スコリオ/59 ペレグリノ・バロニ/60 ふたりの粉挽屋/61 支配者の文化と従属階級の文化/62 ローマからの書簡/注

訳者あとがき
解説 上村忠男

 

スタニスワフ・レム著,沼野充義,工藤幸雄,長谷見一雄訳『完全な真空』(1971=1989)

 

誇大妄想的宇宙論からヌーヴォーロマンのパロディ評まで、16冊の架空の書物を論じたペダンティックな仕掛けに満ちた書評集。「ポスト・ボルヘス的書物」とカート・ヴォネガットの絶讃を浴びた異色の作品集。

 

馬場伸彦,池田太臣編著『「女子」の時代!』(2012)

 

女子力、女子会、大人女子、腐女子歴女、森ガール……。「女子」はなぜ一気に広まり定着したのか。ファッション誌、写真、マンガ、音楽などのバラエティ豊かな素材から、従来の規範から軽やかに抜け出した「女子」のありようを活写する新たな女子文化論。

はじめに――いまなぜ女子の時代なのか? 馬場伸彦

第1章 「女子」の意味作用 河原和枝
 1 三十代「女子」の登場
 2 「女子力」の普及
 3 「女子」の意味変容――女子・婦人・女性
 4 「女子」の絆

第2章 卒業のない女子校――ファッション誌における「女子」 米澤 泉
 1 不惑を迎えたファッション誌
 2 「大人カワイイ」ファッションの台頭
 3 増殖する「大人女子」
 4 ファッション誌の政権交代
 5 私に萌える女たち
 6 卒業のない女子校

第3章 「かわいい」と女子写真――感覚による世界の新しい捉え方 馬場伸彦
 1 「かわいい」とは何か
 2 「かわいい」に向けられた眼差し
 3 蜷川実花の色彩と装飾性
 4 コミュニケーションを求める写真行為
 5 「かわいい」はおしゃべりと共感の共同体
 6 悪趣味とキッチュの誘惑

第4章 「少女マンガ」と「女子マンガ」――女性向けマンガに描かれる「働く女性」のイメージ 増田のぞみ
 1 「オトナ女子」のためのマンガ
 2 「女子マンガ」とは何を指すか
 3 「少女マンガ」の曖昧さ
 4 「少女マンガ」というジャンル
 5 「女子マンガ」の特徴
 6 女性向けマンガにおける「仕事」
 7 「働く女性」ヒロインの分析
 8 「戦場」で闘うヒロインと「働くこと」への教訓
 9 「働き続ける」という選択
 10 四十代・五十代の先輩女性との対比
 11 「女子マンガ」は「四十代女子」「五十代女子」をどう描くか?

第5章 オタクならざる「オタク女子」の登場――オタクイメージの変遷 池田太
 1 オタクならざる「オタク女子」の登場
 2 オタクという言葉の普及
 3 オタクとは誰か?
 4 オタク文化の価値の上昇
 5 オタク像の修正
 6 「オタク女子」の登場
 7 なぜ「オタク女子」は現れたのか?――「オタク女子」研究の必要性

第6章 女子と鉄道趣味 信時哲郎
 1 鉄道ファンのジェンダー偏差
 2 男の子が「鉄」になるとき
 3 突然の鉄道ブーム
 4 鉄道ブームがなぜ起きたか
 5 「鉄子」の性格
 6 鉄道をコンテンツとする女性たち
 7 「早・高・外・新・形・都」から「遅・安・内・古・心・舎」へ
 8 あなどれない女子の力①――新しい女性たち
 9 あなどれない女子の力②――オタク女子

第7章 K‐POPにはまる「女子」たち――ファン集団から見えるアジア 吉光正絵
 1 女性ファッション雑誌が特集するK‐POPボーイズ
 2 K‐POPとJ‐POPと韓流の関係
 3 女子が愛好するK‐POPボーイズグループの特徴
 4 K‐POPファンの集団性
 5 アジア諸国間のファン連携
 6 体験型ファンタジー空間としてのソウル
 7 K‐POPにはまる「女子」たちに見るアジア

おわりに 池田太