美学は18世紀半ばに作られた哲学的学問であり、「感性」「芸術」「美」という主題が収斂するところに成立した。美学の古典といえるカント『判断力批判』(1790年)を題材にし、そこでの重要なテーマをめぐって、古代ギリシアから21世紀までの美学史を概説する。美学を深く学ぶための決定版。
序文
第I章 美の無関心性
A 美しいものの分析論――質に即して
B カント『判断力批判』前史
C 実践的無関心と美的関与第II章 趣味判断の普遍妥当性
A 美しいものの分析論――量に即して
B 趣味の普遍性ならびに快の本性
C 二〇世紀の趣味論第III章 目的なき合目的性
A 美しきものの分析論――関係に即して
B 美と合目的性
C 目的なき合目的性のゆくえ第IV章 趣味判断の範例性
A 美しいものの分析――様相に即して
B 範型・実例・模範
C 範例性のゆくえ第V章 感性の制約と構想力の拡張
A 崇高なものの分析論
B 言語の崇高さから自然の崇高さへ
C 崇高論のその後第VI章 構想力と共通感官
A 美的判断の演繹論
B 共通感覚論の系譜
C 二〇世紀の共通感覚論第VII章 美しいものから道徳的なものへ
A 美しいものへの関心
B 社交人・未開人・隠遁者
C 自然の暗号文字第VIII章 「美しい技術」としての芸術
A 美術論(その一)
B 芸術の誕生
C 範例的独創性第IX章 「美的理念」と芸術ジャンル論
A 芸術論(その二)
B ライプニッツ的感性論の系譜
C カント的芸術論のゆくえ第X章 美しいものと超感性的なもの
A 美的判断力の弁証法
B 認識・感情・欲求
C 美的なものと生あとがき
用語解説
読書案内
40 実践理性批判におけるAsthetikは判断力批判といかに関わるぁ?実践において「快不快の感情」と呼ぶものは「欲求」を規定する限りのもの。判断区分では「美しいもの」ではなく「快適なもの」に相当する。
98 美の無関心性と対をなす美の能動性に関する議論。構想力をもって美的対象をそれ自体として「かかわる sich einlassen」
103「つまり、純粋趣味判断を下す人は自らの認識諸能力の自由な活動によって生じる快を感じているのであり、この意味において純粋趣味判断は能動的にして自律的である」