マックス・ウェーバーとニクラス・ルーマン――科学技術と資本主義によって規定された産業社会の謎に挑んだふたりの社会学の巨人。難解で知られる彼らが遺した知的遺産を読み解くことで、私たちが生きる「この」「社会」とは何なのかという問いを更新する。社会学の到達点であり、その本質を濃縮した著者渾身の大作。
序 章 現代社会学の生成と展開
一 二人の学者と二つの論考
二 ウェーバー像の転換第一章 「資本主義の精神」再訪──始まりの物語から
一 ウェーバー家と産業社会
二 二つの戦略ともう一つの資本主義
三 「禁欲倫理」の謎解き
四 会社と社会第二章 社会の比較分析──因果の緯糸と経糸
一 研究の全体像を探る
二 会社制度の社会経済学第三章 組織と意味のシステム──二一世紀の社会科学へ
一 「合理的組織」の社会学
二 組織システムへの転回
三 決定の自己産出と禁欲倫理
四 ウェーバーとルーマンの交差──因果と意味終 章 百年の環
あとがき
ウェーバーの主要な著作・論文の年譜
37「当時のドイツ語圏の優秀な学者には、過労で鬱病になった人が複数いる」
潮木『ドイツ近代科学を支えた官僚』
91 自由な労働の合理的組織
126 黒田『商人たちの共和国』
147 適合的因果
160「ある程度の規模の経済社会において近代資本主義の成立/不成立の直接の原因になるのは、合理的な行政や司法の有無であり、それを社会的にささせる重要な条件として、それと同型のしくみをもつ宗教倫理などがある」
161 近代資本主義を成立させた具体的原因①プロテスタンティズムの禁欲倫理、②会社の名の下で共同責任制をとり、会社固有の財産をもつ法人会社の制度
252「【3】このような禁欲倫理と同型の「自由な労働の合理的組織」は、19世紀以降の本格的な産業化のなかで、企業だけではなく、行政や法を「人に拠らない」形で、それゆえ制度それ自体の論理にしたがって「形式合理的」に運営する制度的手段となった」
253「【4】こうした禁欲倫理は、18世紀以降のニューイングランドの社会で特定の人格に帰属しない会社組織や政治組織、すなわち「信仰者たちの教会」としれを保護する自治政府を運営していく後押しにもなった」