白川晋太郎著『ブランダム 推論主義の哲学 ープラグマティズムの新展開』(2021)

 

カント、ヘーゲル、セラーズ、ローティ、ウィトゲンシュタインマクダウェルなどの議論を自在に取り込みながら、独自の理論体系を構築し、プラグマティズムを牽引するアメリカの哲学者ロバート・ブランダム。言語と世界はどうつながっているのか。文の「正しさ」や推論の「適切さ」はどのように決まるのか。いま熱い視線が注がれる「推論主義」の基礎から応用までを網羅する、はじめての本格的入門書。

はじめに

Ⅰ 言語と規範

第1章 言語哲学プラグマティズムの歴史
 1 意味の指示説
 2 言語論的転回
 3 意味の検証説
 4 セラーズの「所与の神話」批判
 5 ローティの反表象主義
 6 真理条件的意味論


第2章 ブランダムはなぜ「推論」に注目するのか
 1 ブランダムの公式見解
 2 合理主義
 3 言語的プラグマティズム
 4 推論主義が導かれた


Ⅱ 推論主義の基本

第3章 規範的語用論
 1 規範的地位と規範的態度
 2 言語的実践におけるコミットメントと資格のやりとり
 3 そもそも規範とはなにか
 4 主張と推論の関係
 5 推論に取り込まれる世界
 6 具体的な会話を記述する
 7 規範的語用論の「ゆるさ」

第4章 推論的意味論
 1 「指示」や「真理」というものの役割は?
 2 推論的意味論の三つのレベル
 3 文の意味
 4 単称名と述語の意味
 5 直示語の意味
 6 さいごに言葉の表象的な次元を導出

コラム 推論主義のもう一つの読み方


Ⅲ 推論主義の応用

第5章 「意味の理論」としての推論主義
 1 他人が言っていることを理解できなくなる?
 2 相互理解のためには意味内容を共有する必要はない
 3 合成性の問題
 4 推論主義でも合成性を説明できるかもしれない
 5 そもそも合成原理は必要ない

第6章 推論主義を応用してみる
 1 精神病理
 2 フィクション(虚構)
 3 社会制度


Ⅳ 失われた二つの客観性を求めて

第7章 推論主義は相対主義
 1 まずは課題を確認
 2 『明示化』における試み
 3 相互承認論へ
 4 承認欲求に訴えよう
 5 『信頼の精神A Spirit of Trust』という書物
 6 「規範に関する現象主義」と「規範的現象主義」の両立という課題
 7 「想起」とは何か
 8 想起の客観性は?
 9 なぜ想起するのか

第8章 世界に応答できるか
 1 他者の視点によって世界とつながる?
 2 「因果的制約」を考えればいいのか
 3 ブランダムの「絶対的観念論」
 4 告白と赦し―信頼で結びついた共同体
 5 認識的な客観性とは
 6 肝心の世界応答性としての客観性は?
 7 言語的観念論の「治療」
 

おわりに

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注/参考文献/索引