カント、ヘーゲル、セラーズ、ローティ、ウィトゲンシュタイン、マクダウェルなどの議論を自在に取り込みながら、独自の理論体系を構築し、プラグマティズムを牽引するアメリカの哲学者ロバート・ブランダム。言語と世界はどうつながっているのか。文の「正しさ」や推論の「適切さ」はどのように決まるのか。いま熱い視線が注がれる「推論主義」の基礎から応用までを網羅する、はじめての本格的入門書。
はじめに
Ⅰ 言語と規範
第1章 言語哲学とプラグマティズムの歴史
1 意味の指示説
2 言語論的転回
3 意味の検証説
4 セラーズの「所与の神話」批判
5 ローティの反表象主義
6 真理条件的意味論
第2章 ブランダムはなぜ「推論」に注目するのか
1 ブランダムの公式見解
2 合理主義
3 言語的プラグマティズム
4 推論主義が導かれた
Ⅱ 推論主義の基本第3章 規範的語用論
1 規範的地位と規範的態度
2 言語的実践におけるコミットメントと資格のやりとり
3 そもそも規範とはなにか
4 主張と推論の関係
5 推論に取り込まれる世界
6 具体的な会話を記述する
7 規範的語用論の「ゆるさ」第4章 推論的意味論
1 「指示」や「真理」というものの役割は?
2 推論的意味論の三つのレベル
3 文の意味
4 単称名と述語の意味
5 直示語の意味
6 さいごに言葉の表象的な次元を導出コラム 推論主義のもう一つの読み方
Ⅲ 推論主義の応用第5章 「意味の理論」としての推論主義
1 他人が言っていることを理解できなくなる?
2 相互理解のためには意味内容を共有する必要はない
3 合成性の問題
4 推論主義でも合成性を説明できるかもしれない
5 そもそも合成原理は必要ない第6章 推論主義を応用してみる
1 精神病理
2 フィクション(虚構)
3 社会制度
Ⅳ 失われた二つの客観性を求めて第7章 推論主義は相対主義か
1 まずは課題を確認
2 『明示化』における試み
3 相互承認論へ
4 承認欲求に訴えよう
5 『信頼の精神A Spirit of Trust』という書物
6 「規範に関する現象主義」と「規範的現象主義」の両立という課題
7 「想起」とは何か
8 想起の客観性は?
9 なぜ想起するのか第8章 世界に応答できるか
1 他者の視点によって世界とつながる?
2 「因果的制約」を考えればいいのか
3 ブランダムの「絶対的観念論」
4 告白と赦し―信頼で結びついた共同体
5 認識的な客観性とは
6 肝心の世界応答性としての客観性は?
7 言語的観念論の「治療」
おわりに
用語集
読書案内
謝辞
注/参考文献/索引