米澤泉, 馬場伸彦著『奥行きをなくした顔の時代 ーイメージ化する身体、コスメ・自撮り・SNS』(2021)

 

現代社会に溢れる、人格、感情、記憶、社会的関係などが排除された顔――「奥行きをなくした顔」。
テクノロジーが進化し、ヴァーチャルとリアルが共存する今、
この「奥行きをなくした顔」はどのような役割を果たすのか、
「アフターコロナ」の身体について視覚文化論的に考察する。

はじめに―実在的なものと潜在的なものが共存する時代― (馬場伸彦)

第1章
脱げない顔から着替える顔へ―「私遊び」の変遷― (米澤 泉)
1 「インスタ映え」から「リモート映え」へ
2 服のように脱げない顔
3 コスメの時代―「私遊び」としての化粧―
4 インスタ美人の誕生―整形よりも、コスメよりも―
5 リモート時代の化粧―本当の顔信仰を超えて―

第2章
誰もが美人の時代―美の民主化がもたらしたもの― (米澤 泉)
1 美人は誰でもなれる―変化する美意識―
2 顔は前からが9割―変化しない美意識―
3 多様性がもたらした美の民主化
4 揺らぐ美人コンテスト
5 美人と言えない社会

第3章
肖像写真の奥行き―顔の類型学とシミュレーション― (馬場伸彦)
1 写真には「表面」しかない
2 記憶と写真の関係
3 解釈される肖像写真
4 発見された誰かの顔
5 タイポロジー澤田知子のID400
6 奥行きのない顔とは
7 アナログ写真/デジタル写真
8 反射光と透過光
9 シミュラークルとしての「現実」

第4章
自撮りと私―キャラ化したコミュニケーション― (馬場伸彦)
1 自撮りとは何か
2 自己イメージの先回り
3 インスタグラムとインスタ映え
4 模倣されるイメージ
5 存在証明としての自撮り
6 自撮りの自己言及性
7 自己の偽装と消滅
8 なりたい顔になるために
9 変身と演技的

第5章
対談:アフターコロナ時代の身体

おわりに