「ハゲると女性にもてない」「ハゲがダメなんじゃない、堂々としてないからダメなんだ」……ハゲについて当たり前のように繰り返される発言。はたしてそれらは本当なのか。著者の取材によれば、ハゲたことによって実際の不利益を被ることは、実はあまりない。だが「ハゲた」という事実によって本人の社会的立場は明らかに変わる。どうなるのか? そしてハゲという外見は男と女の関係,男同士の関係にどう作用しているのか。「ハゲる」ことを男は何故恐れるのか,そのメカニズムを暴く。カツラもポジティブ・ハゲも乗り越えて、ハゲ経験を巡る初の本格的男性性研究。
まえがき
第1章 なぜハゲ現象を扱うのか
1 男性にとってハゲるということ
2 「気にしなければよい」のか
3 ハゲという外見のままならなさ
4 ハゲ研究の社会学的意義第2章 ハゲ経験のリアリティ――インタビュー調査から
1 調査概要
2 「私が行かなければ“化け物屋敷から猫はずれた”とこういう風になってしまうんだ」(園田さん・当時六三歳・農業)
3 「とにかく貰うもの貰っちゃえばこっちのものだから」(秩父さん・当時七二歳・元公務員)
4 「やっぱり人間というものは複雑だと思うんですよ」(千野さん・当時六五歳・そろばん塾経営)
5 「(外見とは)違うことに価値をおくというような場……に自分の置き場を変えていけば……」(村田さん・当時二九歳・学生)
6 「何でかねえ、やっぱり多少なりとも言われるだろうなあ」(木下さん・当時四五歳・公務員)第3章 ハゲはつくられる――抜け毛が「ハゲ」とラベリングされるまで
1 ハゲを客観的に定義づけることの難しさ
2 脱毛状態がハゲになるまで
3 ハゲ成立の独自性がもたらす影響第4章 ハゲ経験を読み解く――ジェンダー論的アプローチ
1 ハゲ経験へのジェンダー論的接近
2 老化と若ハゲ
3 <フィクションとしての女性の目>
4 ハゲの<マイノリティ>化第5章 “男らしさ”はテストされ、そして維持される
1 からかいの社会的分析
2 <堂々とする>価値観
3 <人格のテスト>
4 存在証明としての<人格のテスト>終章 まとめにかえて
あとがき
主要参考文献