須永史生著『ハゲを生きる-外見と男らしさの社会学』(1999)

 

「ハゲると女性にもてない」「ハゲがダメなんじゃない、堂々としてないからダメなんだ」……ハゲについて当たり前のように繰り返される発言。はたしてそれらは本当なのか。著者の取材によれば、ハゲたことによって実際の不利益を被ることは、実はあまりない。だが「ハゲた」という事実によって本人の社会的立場は明らかに変わる。どうなるのか? そしてハゲという外見は男と女の関係,男同士の関係にどう作用しているのか。「ハゲる」ことを男は何故恐れるのか,そのメカニズムを暴く。カツラもポジティブ・ハゲも乗り越えて、ハゲ経験を巡る初の本格的男性性研究。

まえがき

第1章 なぜハゲ現象を扱うのか

 1 男性にとってハゲるということ
 2 「気にしなければよい」のか
 3 ハゲという外見のままならなさ
 4 ハゲ研究の社会学的意義

第2章 ハゲ経験のリアリティ――インタビュー調査から

 1 調査概要
 2 「私が行かなければ“化け物屋敷から猫はずれた”とこういう風になってしまうんだ」(園田さん・当時六三歳・農業)
 3 「とにかく貰うもの貰っちゃえばこっちのものだから」(秩父さん・当時七二歳・元公務員)
 4 「やっぱり人間というものは複雑だと思うんですよ」(千野さん・当時六五歳・そろばん塾経営)
 5 「(外見とは)違うことに価値をおくというような場……に自分の置き場を変えていけば……」(村田さん・当時二九歳・学生)
 6 「何でかねえ、やっぱり多少なりとも言われるだろうなあ」(木下さん・当時四五歳・公務員)

第3章 ハゲはつくられる――抜け毛が「ハゲ」とラベリングされるまで

 1 ハゲを客観的に定義づけることの難しさ
 2 脱毛状態がハゲになるまで
 3 ハゲ成立の独自性がもたらす影響

第4章 ハゲ経験を読み解く――ジェンダー論的アプローチ

 1 ハゲ経験へのジェンダー論的接近
 2 老化と若ハゲ
 3 <フィクションとしての女性の目>
 4 ハゲの<マイノリティ>化

第5章 “男らしさ”はテストされ、そして維持される

 1 からかいの社会的分析
 2 <堂々とする>価値観
 3 <人格のテスト>
 4 存在証明としての<人格のテスト>

終章 まとめにかえて

あとがき
主要参考文献