政治

ミランダ・フリッカー著,飯塚理恵訳『認識的不正義 -権力は知ることの倫理にどのようにかかわるのか』(2007=2023)

認識的不正義 作者:ミランダ・フリッカー,佐藤邦政,飯塚理恵 勁草書房 Amazon 黒人であることで警官から疑われる場合のように、聞き手の偏見のせいで話し手が過度に低い信用性しか受け取れない「証言的不正義」。セクハラの概念が存在しない時代にそれに苦し…

福永文夫著『大平正芳 -「戦後保守」とは何か』(2008)

大平正芳 「戦後保守」とは何か (中公新書) 作者:福永文夫 中央公論新社 Amazon 戦後、「保守本流」の道を歩み、外相・蔵相などを歴任、1978年に首相の座に就いた大平正芳。その風貌から「おとうちゃん」「鈍牛」と綽名された大平は、政界屈指の知性派であり…

宇野重規著『日本の保守とリベラル -思考の座標軸を立て直す』(2023)

日本の保守とリベラル 思考の座標軸を立て直す (中公選書) 作者:宇野重規 中央公論新社 Amazon 近年、日本政治においても、「右」と「左」ではなく、「保守」と「リベラル」という対立図式が語られることが多くなった。しかし、混乱した言論状況のなか、保守…

小泉悠著『ウクライナ戦争』(2022)

ウクライナ戦争 (ちくま新書) 作者:小泉悠 筑摩書房 Amazon 2022年2月24日、ロシアがウクライナに侵攻し、第二次世界大戦以降最大規模の戦争が始まった。国際世論の非難を浴びながらも、かたくなに「特別軍事作戦」を続けるプーチン、国内にとどまり…

吉田徹著『アフター・リベラル-怒りと憎悪の政治』(2020)

アフター・リベラル 怒りと憎悪の政治 (講談社現代新書) 作者:吉田徹 講談社 Amazon 不安な暗い時代を生き抜くための新しい見取図! オルタナ右翼、権威主義の台頭、ヘイトクライム、歴史認識問題、テロリズム……人びとが合理的になり、民族やナショナリズム…

青木理著『暗黒のスキャンダル国家』(2019)

暗黒のスキャンダル国家 作者:青木理 河出書房新社 Amazon 自身の「噂の真相」での匿名ライター時代の経験をふまえて、社会と報道の問題を問い、いまこそ戦うジャーナリズムとは何かをさぐる。最も注目されるジャーナリストによる渾身の力編。 第1章 ゲリラ…

空井護著『デモクラシーの整理法』(2020)

デモクラシーの整理法 (岩波新書 新赤版 1859) 作者:空井 護 岩波書店 Amazon 政治の主役である私たちは、デモクラシーについて十分に納得できているか。政治とは何かから始め、デモクラシーとはいかなる政治の仕組みか、「古典風」と「現代風」という二つの…

鵜飼健史著『政治責任-民主主義とのつき合い方』(2022)

政治責任 民主主義とのつき合い方 (岩波新書 新赤版 1913) 作者:鵜飼 健史 岩波書店 Amazon 政治責任を問うことも、それを看過することも日常になってしまったいま、私たちは「政治に無責任はつきものなのだ」という諦念を追認するしかないのか。自己責任論…

堀内都喜子著『フィンランド人はなぜ午後4時に仕事が終わるのか』(2020)

フィンランド人はなぜ午後4時に仕事が終わるのか (ポプラ新書) 作者:堀内都喜子 ポプラ社 Amazon ワークライフバランス世界1位!フィンランド流ゆとりのある生き方。フィンランド人は、仕事も、家庭も、趣味も、勉強も、なんにでも貪欲。でも、睡眠時間は平…

綿野恵太著『みんな政治でバカになる』(2021)

みんな政治でバカになる 作者:綿野恵太 晶文社 Amazon トランプ当選をいまだに信じるひとに、Qアノン信者。世界を操るのはディープステートで、コロナワクチンにはマイクロチップが……。なぜかくもフェイクニュースや陰謀論が後を絶たないのか? それは私たち…

マーク・リラ著,夏目大訳『リベラル再生宣言』(2017=2018)

リベラル再生宣言 (早川書房)作者:マーク リラ早川書房Amazon

山本圭著『現代民主主義ー指導者論から熟議、ポピュリズムまで』(2021)

現代民主主義-指導者論から熟議、ポピュリズムまで (中公新書 2631) 作者:山本 圭 中央公論新社 Amazon 二〇世紀以降、思想・理論ともにさらなる多様化が進む民主主義。本書は、政治学をはじめ、ウェーバー、シュミット、シュンペーター、アーレント、デリダ…

松里公孝著『ポスト社会主義の政治 ─ポーランド、リトアニア、アルメニア、ウクライナ、モルドヴァの準大統領制』(2021)

ポスト社会主義の政治 ――ポーランド、リトアニア、アルメニア、ウクライナ、モルドヴァの準大統領制 (ちくま新書) 作者:松里 公孝 筑摩書房 Amazon 約三〇年前、ソ連・東欧の社会主義政治体制は崩壊した。議会制=ソヴェト制の外観の下、一党制または事実上…

梶谷懐,高口康太著『幸福な監視国家・中国 』(2019)

幸福な監視国家・中国 (NHK出版新書) 作者:梶谷 懐,高口 康太 NHK出版 Amazon 習近平体制下で、人々が政府・大企業へと個人情報・行動記録を自ら提供するなど、AI・アルゴリズムを用いた統治が進む「幸福な監視国家」への道をひた走っているかに見える中…

ニコラス・ローズ著, 檜垣立哉監訳, 小倉拓也, 佐古仁志, 山崎吾郎訳『生そのものの政治学―二十一世紀の生物医学, 権力, 主体性』(2007=2014)

生そのものの政治学〈新装版〉:二十一世紀の生物医学、権力、主体性(叢書・ウニベルシタス) 作者:ローズ,ニコラス 発売日: 2019/11/20 メディア: 単行本 19世紀以来、国家は健康と衛生の名のもとに、人々の生死を管理する権力を手にしてきた。批判的学問や…

古賀光生「西欧の右翼ポピュリスト政党の台頭は、「文化的な反動」 によるものであるのか? ―政策の比較分析から検討する」『年報政治学』2019年, 70巻, 2号, p. 2_84-2_108

【本文】 本稿は、西欧における右翼ポピュリスト政党の 「文化的な」 争点への態度を検討する。ノリスとイングルハートによる有力な先行研究 (Pippa Norris and Inglehart 2019) は、「権威主義的なポピュリスト」 の支持拡大は、脱物質主義的な価値観の主流…

今井貴子「成熟社会への掣肘 ―イギリスのEU離脱をめぐる政治社会」『年報政治学』2019年, 70巻, 2号, p. 2_58-2_83

【本文】 欧州連合 (EU) からの離脱を決した2016年国民投票後、イギリスは妥協を排除するような 「情動的分極化」 に陥っているといわれている。それは階級的亀裂や排外主義は後景に退くとさえ論じられた 「成熟社会」 への劇的な掣肘であったといえよう。本…

山崎望「「成熟社会論」 から 「ケアの倫理とラディカルデモクラシーの節合」 へ ―「新自由主義―権威主義」 への対抗政治構想」『年報政治学』2019年, 70巻, 2号, p. 2_13-2_35

【本文】 新自由主義と権威主義的ポピュリズムに対して、現在、自由民主主義は有効性と正統性の二つの側面で、危機に直面している。第1章で自由民主主義の危機について論じる。第2章では、成熟社会論を手掛かりに、自由民主主義の有効性と正統性が危機に陥っ…

網谷龍介「20世紀ヨーロッパにおける政党デモクラシーの現実モデル ―H. ケルゼンの民主政論を手がかりに―」『年報政治学』2016年, 67巻, 2号, p.78-98

【本文】 本論文は, 議会制デモクラシーをめぐるわれわれの理解について, 歴史的な視点から再検討を行うものである。現在, 民主政の経験的研究においては, 「競争」 を鍵となるメカニズムとするのが通例である。本論文はこのような想定を相対化し, 「競争」 …

粕谷祐子「「一票の格差」をめぐる規範理論と実証分析 ―日本での議論は何が問題なのか―」『年報政治学』2015年, 66巻, 1号, p.90-117

【本文】 In Japan, malapportionment—the high level of disparity in the size of the population, and thus the weight of votes, across electoral districts—has been a national concern for several decades. Through a review of both normative the…

田村哲樹「観察可能なものと観察不可能なもの ―規範・経験の区別の再検討―」『年報政治学』2015年, 66巻, 1号, p.37-60

【本文】 Scholars of politics have been familiar with normative-empirical distinction. Yet this article reconsiders this divide through exploring another classification in terms of the “observable” and the “unobservable”. According to this…

田畑真一「代表関係の複数性 ―代表論における構築主義的転回の意義―」『年報政治学』2017年, 68巻, 1号, p.181-202

【本文】 本稿の目的は, 「代表関係の複数性」 を強調する近年の代表論を 「構築主義的転回」 という観点から捉え, その理論的射程を検討することにある。まず, 従来の代表論の特徴をH・ピトキンの代表論に確認し, そこでの本人―代理人関係という構図を乗り…

善教将大, 秦正樹「なぜ「わからない」 が選択されるのか : ─サーベイ実験による情報提示がDKに与える影響の分析─」『年報政治学』2017年, 68巻, 1号, p.159-180

【本文】 本稿の目的は, 政治意識調査における 「わからない (「DK」)」 の発生メカニズムを, サーベイ実験により明らかにすることである。先行研究ではDKの規定要因として政治関心や政治知識の欠如が指摘されてきたが, 本稿は回答者に情報を与えることがか…

石川敬史「アメリカ革命期における主権の不可視性」『年報政治学』2019 年, 70巻, 1号, p.96-116

【本文】 一七七六年にイギリス領北アメリカ植民地がヨーロッパ諸国に公表した 「独立宣言」 は、イギリス本国において一六八八年の名誉革命を経て形成された議会主権が植民地にも及ぶという主張に対する異議申し立てであった。 一七八三年のパリ条約で独立…

森川友義「「進化政治学」とは何か?」『年報政治学』2008年, 59巻, 2号, p.2_217-2_236

【本文】 In recent years, so-called “Evolutionary Political Science” has drawn much attention from political scientists in the United States as well as in Europe. Little is known, however, about the overall framework of the approach, as it…

早川誠「非主権的政治体は可能か ―政治思想におけるcommunitas communitatumをめぐって」『年報政治学』2019年, 70巻, 1号, p. 1_36-1_55

【本文】 本論文の目的は、主権国家とは異なる非主権的政治体の可能性を、20世紀初頭のイギリス多元的国家論と現代イギリスの多文化主義論の比較を通じて、探ることにある。また非主権的政治体との対比によって、主権国家の一側面を明らかにすることも試みる…

ジョナサン・ハイト著, 高橋洋訳『社会はなぜ左と右にわかれるのか-対立を超えるための道徳心理学』(2012=2014)

社会はなぜ左と右にわかれるのか――対立を超えるための道徳心理学 作者:ジョナサン・ハイト 発売日: 2014/04/24 メディア: 単行本 リベラルはなぜ勝てないのか?政治は「理性」ではなく「感情」だ―気鋭の社会心理学者が、哲学、社会学、人類学、進化理論などの…

安高啓朗「ネオリベラリズムの生命力 ―世界金融危機後のアメリカにみるネオリベラリズムの行為遂行的効果」『年報政治学』2017年, 68巻, 1号, p.1_57-1_79

【本文】 世界金融危機後も依然として強い影響力を保ち続けているネオリベラリズム (新自由主義) の持続性は, 近年の研究における一つの焦点となっている。本稿は, ネオリベラリズムがどのように危機後も生き延びたか, またオルタナティヴな構想が真剣な議論…

鈴木一人「主権と資本 ―グローバル市場で国家はどこまで自律性を維持出来るのか」『年報政治学』2019年, 70巻, 1号, p.1_56-1_75

【本文】 主権国家システムと資本主義システムは近代のシステムの両輪として発達した。しかし、ニクソンショックによって変動相場制へと移行したことで自由な資本移動が可能となり、それが主権国家の自律的な経済財政政策を困難にさせるようになってきた。開…

ジョナサン・ウルフ著, 大澤津, 原田健二朗訳『「正しい政策」がないならどうすべきか-政策のための哲学』(2011=2016)

「正しい政策」がないならどうすべきか: 政策のための哲学 作者:ジョナサン ウルフ 出版社/メーカー: 勁草書房 発売日: 2016/10/28 メディア: 単行本 伝統的な哲学は、正義の理論や共通善の説明を作り上げ、それが多くの政策課題についてもつ含意を示すとい…