【本文】
新自由主義と権威主義的ポピュリズムに対して、現在、自由民主主義は有効性と正統性の二つの側面で、危機に直面している。第1章で自由民主主義の危機について論じる。第2章では、成熟社会論を手掛かりに、自由民主主義の有効性と正統性が危機に陥った転回点である 「長い60年代」 の変動を論じる。第3章では、「個人の解放」 と 「直接性の噴出」 という観点からこの変動を把握する。
第4章では、この変動から発展した四つの主要な構想、すなわち①新自由主義②権威主義的ポピュリズム③ケアの倫理・共同性論④ラディカルデモクラシー論の思想的配置を論じる。それを通じて、これらの四つの構想が自由民主主義への対抗構想という点では共通性を持ち、同時に、相互に対立している点を明らかにする。
第5章では、現代日本の待機児童問題の事例に言及し、新自由主義と権威主義的ポピュリズムに対抗する、ケアの倫理・共同性論とラディカルデモクラシー論の節合を論じる。これらを通じて現代の自由民主主義に対する四つの対抗構想の源泉として 「長い60年代」 を捉え直すと同時に、そこから危機を脱する成熟社会論の刷新を模索する。