田畑真一「代表関係の複数性 ―代表論における構築主義的転回の意義―」『年報政治学』2017年, 68巻, 1号, p.181-202

本文

 本稿の目的は, 「代表関係の複数性」 を強調する近年の代表論を 「構築主義的転回」 という観点から捉え, その理論的射程を検討することにある。まず, 従来の代表論の特徴をH・ピトキンの代表論に確認し, そこでの本人―代理人関係という構図を乗り越える一連の試みを構築主義的転回という観点から捉える。その上で, 構築主義的代表論の到達点と言えるM・サワードの 「主張としての代表論」 に依拠し, その意義を明らかにする。他方, 同時にそこで生じる代表関係の複数性とそれら複数の代表関係を貫く評価基準の不在を構築主義的代表論の課題として示し, 民主的正統性という観点からこの問題に焦点を当てる。

 本稿の結論は, あくまで構築主義に立ちつつも, 二階レベルの理論家による判断という仕方で複数の代表関係間の民主的正統性の質を評価するというものである。構築主義的代表理解は, 従来の代表論とは異なる代表生成過程を複線的に明らかにし, 代表を選挙へと一元的に還元することを許さない 「代表関係の複数性」 という新たな地平へと代表論を誘っている。