【本文】
本稿の目的は, 政治意識調査における 「わからない (「DK」)」 の発生メカニズムを, サーベイ実験により明らかにすることである。先行研究ではDKの規定要因として政治関心や政治知識の欠如が指摘されてきたが, 本稿は回答者に情報を与えることがかえってDK率の増加に繋がる場合もあるという仮説を提示し, この仮説の妥当性を実験的手法により検証する。全国の有権者を対象とするサーベイ実験の結果は次の3点にまとめられる。第1に政策のメリットやデメリットの情報の提示はDK率を有意に低下させる。第2に, しかし政党の政策位置に関する情報の提示はDK率の低下にほとんど寄与しない。第3に政党を拒否する層に対しては, 政党情報の提示は逆にDK率を有意に高める場合がある。これらの知見は, 日本では政党が意見表明の際の手がかりとしてはほとんど機能していないという, 有権者の中での 「政党の機能不全」 を示唆するものである。