西井開著『「非モテ」からはじめる男性学』(2021)

 

恋人がいない、女性から好意を向けられない等の苦悩は、「非モテ」という言葉によって九〇年代後半からネットを賑わせてきた。現在も「非モテ」問題は多くの男性の心を捉えて離さない。しかし、本当に「非モテ」男性はモテないから苦しいのだろうか?男性性が内包する問題について研究し、当事者の語り合いグループを立ち上げた著者が、男性が「非モテ」という苦悩を抱くまでの過程や内実を掘り下げ、問題の背景や構造を解き明かす。そして「非モテ」の苦惱から抜け出すための実践まで、男性学の視点から提示していく。

第1章 「非モテ」とは何か
第2章 「ぼくらの非モテ研究会」
第3章 追い詰められる非モテ・自分を追い詰める非モテ
第4章 女神への執着と非モテ
第5章 非モテから離れる実践
第6章 非モテの苦悩の正体を考える
第7章 つながり出した非モテ
終章 隣り合って「男」を探求するということ

 

奥村隆著『反コミュニケーション』(2013)

 

 私はコミュニケーションが嫌いだ。できれば人と会いたくない。ひとりでいたい。電話もメールもしたくない。たとえば電子メールというものがあって、これを仕事上使わなくてはいけない。苦痛だ。いきなり誰かからメールが来て、それに返事をしなければならない。返事をしないこともあるが、返事をしないとなぜか気持ちが重くなってしまう。いやだいやだと思いながら、返事をする。いや、必要に迫られて、自分のほうからいきなりメールを送るときも多い。相手は私と同じようにメールを送られて苦痛だと思っているのだろうな、と思いながら。

序章 イントロダクション
 1.はじめに
 2.「よいコミュニケーション」とはなにか
 3.不気味な他者とともに

第1章 浸透としてのコミュニケーション――ルソー
 1.ふたつの経験
 2.浸透としてのコミュニケーション
 3.媒介者の空間

第2章 遊戯としてのコミュニケーション――ジンメル
 1.「結ぶ」と「分ける」
 2.距離とコミュニケーション
 3.社交、貨幣、自由

第3章 対話とディスコミュニケーション――ハーバーマス鶴見俊輔
 1.カフェにて
 2.対話としてのコミュニケーション
 3.ディスコミュニケーション

第4章 他者、承認、まなざし――レインとサルトル
 1.3つのユートピアニズム
 2.アイデンティティと承認
 3.まなざし、葛藤、誘惑

第5章 葛藤、身体、ダブル・バインド――レインとベイトソン
 1.家族のディスコミュニケーション
 2.遊びとダブル・バインド
 3.アイデンティティ vs. コミュニケーション

第6章インターミッション――ジラール
 1.B&Bにて
 2.模倣と自尊心
 3.ふたつの「死」

第7章 演技としてのコミュニケーション――ゴフマン(1)
 1.ダブル・ライフ
 2.表舞台/舞台裏
 3.思いやりとかげぐち

第8章 儀礼としてのコミュニケーション――ゴフマン(2)
 1.人格を礼拝する儀式
 2.透明のディストピア
 3.ルソー vs. ゴフマン

第9章 接続としてのコミュニケーション――ルーマン
 1.ダブル、ダブル、ダブル……
 2.接続としてのコミュニケーション
 3.ふたつの質問

第10章 パラドックスとしてのコミュニケーション――ベイトソンと吉田文五郎
 1.教育というコミュニケーション
 2.学習というコミュニケーション
 3.吉田文五郎のコミュニケーション

第11章 純粋なコミュニケーション――ギデンズ
 1.Aさんのレポート
 2.純粋なコミュニケーション
 3.レポートへのコメント

終章 反コミュニケーション
 1.研究室にて
 2.反コミュニケーション
 3.おわりに

あとがき

 

行方昭夫著『英語のセンスを磨くー実践英語への誘い』(2003)

 

英語は上級者なのに,一つ壁があって先に進めないと悩んでいませんか? 英文を正しく読むにはコンテクストの理解が必須です.難解で知られるヘンリー・ジェイムズの短篇を丸ごと解説し,細部まで読みこなしていくのを助けます.この短篇を徹底的に学べば,今後どのような英文に出会っても自信を持って臨めるはず.現代文庫オリジナル版.

まえがき

 ヘンリー・ジェイムズ『ほんもの』を読破する

第1章 モナーク夫妻の画家訪問 辞書に依拠しつつもそれを超える方法
 前文を補う後文
 恨みがましいmight
 具体的に考える
 you knowは命令形
 英文解釈にも常識を!
 口にしえぬ語
 訳す順序
 比較級に注目
 風俗習慣を知る
 言い換え
 businesslike≠「ビジネスライク」

第2章 品位,人柄,物腰は完璧な紳士淑女の夫妻 論理を辿って正しい解釈に達する方法
 country-house訪問
 字面でなく具体的な内容
 Perhapsの意味
 作者の願い
 見当もつかない場合
 考え過ぎるな
 自然な日本語
 cry≠叫ぶ
 sociably

第3章 プロモデルの下町娘が画家に霊感を与える コンテクスト重視で納得のゆく解釈に至る方法
 比喩の扱い
 コンマで続く文
 「与える」のでないgive
 反語
 コンテクスト
 curtain≠カーテン
 naturallyの意味合い
 何が省略?
 結果の不定
 「上品」か「上品ぶる」か?
 意訳を使う
 熟語

第4章 敗北を認め雄々しく去る夫妻 なめらかに流れる訳文制作の方法
 不定冠詞で判断
 particularは「特別の」ではない
 抽象名詞の普通名詞化
 原文の不備を補う
 訳語は自分で工夫
 the fresh eyeはどこに?
 作者の不満?
 2つの解釈あり
 のぞき読み
 forの省略
 副詞節の係り方
 wrong thing≠「悪事」
 親愛の情のこもらぬMy dear Major!
 どっちの解釈?
 be動詞+形容詞
 コロケーション
 原文をいじる
 何のthe memoryか?

 ジェイムズと『ほんもの』について

 あとがき

 

村山達也「「好きな人の特別な存在になる」ことの特別さ——相互的な愛の価値について——」『エモーション・スタディーズ』2021 年 6 巻 Si 号 p. 22-30

リンク

Although being loved by someone we love is generally acknowledged as having special value, what that value is and from whence it derives remain unclear. As described herein, the author suggests two constituents of the special value of mutual love: the very nature of love, i.e., becoming happy by the happiness of one’s beloved; and a mutual recognition between lovers of this becoming happy by the happiness of one another.

After posing the question of the value of mutual love, the love–emotion relation is examined and defined in terms of relevant emotions. From this definition, the author examines a Union View of Love, inferring that this view clarifies neither the specificity nor origin of the value of mutual love. Finally, the author proposes the Echo View, explaining mutual love’s value by the nature of love and by lovers’ mutual recognition of their happiness, with some additional remarks about relevant issues.

 

沼野充義編著『やっぱり世界は文学でできている 対話で学ぶ〈世界文学〉連続講義2』(2013)

 

東京大学教授の沼野充義(ロシア文学)と最前線で活躍する作家・学者たちが「新しい世界文学」について熱く語り合う! 世界文学とは、もはや読むべき価値のある古典作品のリスト(カノン)ではない。日本文学と英文学、仏文学、独文学あるいはロシア文学の壁も取り払った、まったく新しい文学のありようなのだ。巻末のあとがきでは、対談後に起こった東日本大震災を踏まえ、この時代の文学を考えるうえで何が重要なのかをふたたび考察する。世界文学を通じてわれわれはどう生きるべきか、どんな時代を生きつつあるのかについて、現在到達しうる最深の知見がちりばめられた一冊。

はじめに

【翻訳家・外国文学者編】
1 あらためて考えるドストエフスキー
    亀山郁夫×沼野充義
    東日本大震災と「世界文学」

2 「美しいフランス語」の行方
     野崎歓×沼野充義
     フランス文学はどこから来て、どこへ行くのか

3 「世界文学」の始まりとしてのアメリ
     都甲幸治×沼野充義
     ポリフォニックな言語状況を生きる

【実作者編】
4 太宰とドストエフスキーに感じる同じもの
    綿矢りさ×沼野充義
    「世界文学」はここにもある

5 日本語で書く中国の心
    楊逸×沼野充義
   アジア文学の世界性

6 母語の外に出る旅
    多和田葉子×沼野充義
    移動を繰り返しながら書くということ

おわりに

67 野崎『われわれはみな外国人である』

73 沼野「仏文だったら、渡辺一夫ラブレーで、阿部良雄ボードレール」「マヤコフスキー水野忠夫バフチンは桑野隆、フレーブニコフなら亀山郁夫

78 野崎「つまり、フランス文学というのは、そういったフランス語の明晰さに抗う人や、合理主義敵かつ中央集権敵なフランス精神に反逆する人、そこから逃げ出したい人たちが作ってきた側面があると思うんです」「ただし、さらに加えて…フランス人は誰しも骨絡みの古典主義者と言いますか、ルイ王朝時代に作り上げたものが背骨まで染み込んで、それがないとしゃんと立っていられないというところがあります」「それで、たとえば19世紀までフランスでは外国文学の受容がいかに遅れていたかということが説明できる」「だからシェイクスピアの『オセロ』のハンカチをそのままは訳せなかった「ダンテの『地獄篇』ですら18世紀末までは訳せませんでした」

野崎『谷崎潤一郎と異国の言語』

95 ジャン・ジュネ『花のノートルダム

ドストエフスキー『悪霊』

『新訳チェーホフ短編集』

シャトーブリアン『墓の彼方からの回想』

ネルヴァル『火の娘たち』

ラブレー『ガルガンチュアとパンタグリュエル』

コンフィアン『コーヒーの水』

シモン『農耕詩』

ロンドン『野生の呼び声』

トニ・モリスン『青い眼がほしい』

クッツェー『マイケル・K』

アトウッド『侍女の物語

山本貴光著『世界が変わるプログラム入門』(2016)

 

現代人の基礎教養?!新しいプログラムを書くことは新しいコンピュータの使い方を発見すること。難解な数式不要!まずは紙と鉛筆と頭で入門しよう。

第1章 プログラムを身につけるコツを少々(人はどんな時、プログラムしたくなるか
どうすればいい? ほか)
第2章 設計しよう―プログラムをプログラムする(なにから始める?
まずはアイディアのメモから ほか)
第3章 コンピュータにできること?(コンピュータでコーヒーを淹れるには
コンピュータそのものにできること ほか)
第4章 プログラムしよう(まずは日本語でOK
ゲーム画面を用意する ほか)

 

久保田晃弘,畠中実著『メディアアート原論』(2019)

 

メディアアート原論

メディアアート原論

  • フィルムアート社
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メディア・アートは、なぜそう呼ばれているのか?
ポストインターネット状況を経た、21世紀の芸術精神を探る!

次世代クリエーターのために、インテリジェントでコアな情報をコンパクトに提供する「Next Creator Book」がデザインを一新してリブート!

現在、メディア・アートという名称は、単にメディア・テクノロジーを使用した美術作品の総称というだけにとどまらず、技術を応用したデモンストレーションなども含めて幅広く使用されています。
そしてメディア・アートは、「ポスト・インターネット・アート」やデジタル・ファブリケーション、デザイン、現代美術などさまざまな領域と接続しており、多くの人の関心を集めています。また、ライゾマティクスをはじめとしたテクノロジー×エンターテイメントの活動にも注目が集まっています。

しかし、メディア・アートを明確に定義することは難しく、メディア・アートをめぐる言説に関しても複数が錯綜している状態です。
本書は、最先端の工学に明るく、創作者としても活躍中の久保田晃弘さんと日本のメディア・アートのメッカ、NTTインターコミュニケーション・センター[ICC]で20年間メディア・アートの現場に携わってきた畠中実さんという第一人者の二人が、メディア・アートに関する論点をわかりやすく整理・解説した入門書です。
メディア・アートの歴史や重要なキーワードを学ぶにはうってつけの一冊となっています。
芸術表現の可能性を切り開く、メディア・アートの世界へようこそ。

Introduction メディア・アートとはどのような芸術か ―アート、テクノロジー、サイエンスの諸相 畠中実

Discussion 1 「ニューメディア」アートの時代(2008年まで) 久保田晃弘+畠中実

メディア・アートという言葉
はじめにデータありき
メディア・アートの時代精神
メディア論の役割

作品の優劣を超えて
なぜ「原論」なのか
ネット・アートの重要性
最先端という保守
もうヒーローは要らない

Discussion 2 ポスト「インターネット」アートへ(2008-2018年) 久保田晃弘+畠中実

ポストインターネット状況
2007年に何が起こったのか
メディア論のアップデート
メディアのテトラッド
知能というメディア

メディアとオブジェクト
展開された場における支持体
鑑賞者中心主義
ポストインターネットと教育

Discussion 3 ニュー「メディア・アート」(2018年から) 久保田晃弘+畠中実

リセットされたメディア・アート
歴史のなかのメディア・アート
アートの再定義
社会の受け止め方

支持体としての芸術
芸術観のアップデート
ソフトウェアと人間
コードのための芸術
類推の芸術

バイオアート 増田展大
メディアの拡張と自然観の変容

短いコードを擁護する In Defence of the Short Code 久保田晃

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ハイブリッド・アート 畠中実
インタラクティヴ・アート 畠中実
ヴァーチュアル・リアリティ 畠中実
インディペンデント・メディアとしてのメディア・アート 畠中実
ハッキング 久保田晃
エンターテインメントとゲーム・アート 久保田晃弘+畠中実
インターフェイス 水野勝仁
イメージ・オブジェクト 水野勝仁
ライブ・コーディング 久保田晃

History メディア・アート年表

あとがき