オード・ロカテッリ著, 大森晋輔訳『二十世紀の文学と音楽』(2001=2019)

 

二十世紀の文学と音楽 (文庫クセジュ)

二十世紀の文学と音楽 (文庫クセジュ)

 

いつの時代も文学と音楽は互いに影響を与え合ってきた。本書は、いずれの領域においても数々の実験的試みがなされ、創造的な可能性が飛躍的に高まった20世紀に焦点を当てる。印象主義表現主義、未来主義、ダダイスムといったさまざまな運動は、作家と作曲家の出会いの場となり、相互に影響がみられた。本書の第一部では、こうしたジャンルを越えた関係を歴史を追って検討する。第二部では、まず音楽にまつわるテクストを、つぎに100年のあいだに書かれた音楽小説をとりあげる。さらには詩と音楽、演劇とオペラといったテーマやジャンルごとに相互の関係を論じる。音楽に捧げられたテクストの数々へアプローチすることで、それぞれの領域が抱える複雑な関係を明らかにする。20世紀の音楽小説案内。

はじめに

第一部 二十世紀における文学と音楽の関係—歴史研究と比較詩学
 第一章 二十世紀初頭(一九〇〇—一九一八年)
  印象主義象徴主義
  表現主義とウィーン楽派の作曲家たち
  未来主義とキュビスム
  「音楽主義」について
  「ダダ」運動
 第二章 大戦間期
  サティ、コクトー、六人組……、そしてジャズ
  シュルレアリスム
  社会主義リアリズム、および芸術と全体主義とのかかわり
  音楽グループ「若きフランス」からシェフェールの音響実験まで
 第三章 一九四五年以後の文学と音楽
  戦後の音列技法—シェーンベルクとマン
  実存主義とジャズ、シャンソンとのかかわり
  音楽と「具体」詩
  レトリスムから音響詩へ
  ヌーヴォー・ロマンに耳を傾けて
 「ハプニング」から音楽劇へ
  ポスト・音列技法とその文学的モデル
  偶然性の音楽とウリポ
 第四章 二十世紀最後の数十年間
  ポストモダニスム
  こんにちのテクストとポピュラー音楽

第二部 二十世紀における文学と音楽の関係—ジャンル別の研究
 第一章 音楽についての著作
  理論的テクストにおけるジャンルの多様性
  「執筆する」作曲家から作家としての作曲家へ
  音楽に関する作家の発言
  往復書簡
 第二章 音響芸術の影響を受けた長編小説と中編小説
  二十世紀の音楽小説作品
  「音楽的」タイトル
  歴史小説
  「音楽的自己形成を扱う長編小説」
  「音楽的」長編小説の形式上の特色
  「声の小説」
 第三章 詩と音楽の諸関係
  音響芸術、声、歌の参照
  言語の音楽的可能性の活用
  言語の脱—意味論化とエクリチュールの音声化の試み
  詩の音楽性から音楽化された詩へ
  音楽とテクストの結合—結束と対立
  音楽と言語の類似性
 第四章 演劇とオペラの領域
  演劇における音楽的テーマ群から音楽の劇作法的な機能へ
  オペラの詩学
  二十世紀におけるオペラ演出から二十世紀のオペラまで
  文学作品の翻案
  オペラから音楽劇へ—テクストのステータスの変化

結論

訳者あとがき
参考文献
原注