パトリック・オニール著, 遠藤健一訳『言説のフィクション−ポスト・モダンのナラトロジー』(1994=2001)

言説のフィクション―ポスト・モダンのナラトロジー (松柏社叢書―言語科学の冒険)

言説のフィクション―ポスト・モダンのナラトロジー (松柏社叢書―言語科学の冒険)

構造主義のナラトロジー脱構築の果てに見えてくる新たな物語理論の肥沃な領野。ポスト構造主義のナラトロジーの全貌を伝える。

第1章 理論というゲーム―物語とナラトロジー
第2章 物語の事実とフィクション―物語内容と物語言説
第3章 言説の言説化―腹話術的効果
第4章 複数の原点―焦点化ファクター
第5章 テクストとテクスト性―形成するものと形成されるもの
第6章 テクストが遊ぶゲーム―物語と物語の間を読む

249「シーモア・チャトマン、ドリット・コーンを北米を代表する第一世代の物語理論家とすれば、オニールはジェラルド・プリンスとともに第二世代の代表的な物語理論家と言えるだろう」「新旧のナラトロジーを分かつのは、例えば、「物語内容」と「物語言説」の二項対立モデルという物語現象の記述モデルの取り扱い方に端的に現れている」
250「旧ナラトロジーは、その分析対象を物語内容に限定しようと(例えば、ブレモンやグレマス)、物語言説に限定しようと(例えば、ジュネット)、両者の関係を扱おうとも(例えば、チャトマン)、この二項の審級関係に疑念を差し挟む余地はなかったのである。しかし、オニールは、この二項に潜む脱構築的契機(彼の言うゼノンの原理)を暴露するとともに、それを武器に旧ナラトロジー全体のいわば理論的な臨界状況を描き出しているのである」
254 ジュネットの焦点化理論
(1)語り手>登場人物:語り手はどの登場人物が知っていることよりも多くのことを物語る=ゼロ焦点化
(2)語り手=登場人物:登場人物が知っていることしか物語らない=内的焦点化
(3)語り手<登場人物:登場人物が知っていることよりも少なくしか物語らない:外的焦点化