西欧に追いつき,追い越す――.明治以降の近代化と敗戦を経て,1980年代に「追いつき型近代」を達成した日本は,どのような自己像をもち,社会の変化に対応しようとしてきたのか.本書では教育政策を過去と未来をつなぐ結節点ととらえ,政策文書や知識人・研究者の言説を繙き,現在につづく問題群の原点を抉り出す.著者渡欧以降10年来の力を注いだ意欲作.
プロローグ 消えた近代
第一章 「近代化論」―― その受容と変容
はじめに
一 近代化論の骨格
二 箱根会議に見る視点の対立軸
三 自然成長的近代化と目的意識的・選択的近代化 ―― キャッチアップ型近代化への道
四 もう一つの目的意識的・選択的近代化の受容
第二章 「追いつき型近代」の認識
はじめに
一 政策言説の分析方法と補助線となる理論枠組み
二 大平政策研究会の認識
三 大平政策研究会の位置づけ
四 「それ以前」の近代(化)理解
おわりに
第三章 臨時教育審議会の近代
一 なぜ「教育」政策言説なのか
二 「近代化と教育」再考
三 臨時教育審議会の認識 ―― 「追いつき型近代化と教育」の認定
四 香山健一の近代化理解
五 香山の近代理解と臨教審
結論
第三章補論 日本型福祉社会論とキャッチアップ型近代の終焉
第四章 高等教育政策 ―― 二〇〇〇年代の迷走
一 高等教育のパラドクス
二 焦眉の急 ―― グローバル化への対応の遅れ
三 「変化への対応」という問題
四 「社会と大学の断絶・齟齬」説の原型
五 「社会の変化」の変節
六 新自由主義と小さな政府
結論
第五章 教育研究言説の「近代」
はじめに
一 「逆コース」の時間差
二 問題構築の原点 ―― 文部省『新教育指針』(一九四六‐四七)
三 「逆コース」に見る対立軸と戦後の近代(化)理解 ―― 教育基本法をめぐる攻防
四 国家と公教育 ―― 古くて新しい近代の問題
五 キャッチアップ一度目の到達点とその後
第六章 経済と教育の「近代」
はじめに
一 能力主義的教育批判に見る経済と教育の結合
二 経済審議会答申の「近代」
三 学歴社会・受験教育の「近代」 ―― 能力主義的教育の読み換え
四 後発型近代(化)の経験と後発効果の「近代」
第七章 外在する「近代」の消失と日本の迷走
一 日本人は優れているか
二 「産業化・経済に照準した近代(化)理解」の問題
三 外在する「近代」の実体化
四 欠如する「主体(性)」の変節(「その後」の問題一)
五 「エセ演繹型の政策思考」と主体(性)の空転(「その後」の問題二)
六 呼び込まれる外部の参照点
エピローグ 内部の参照点を呼び覚ます ―― 交錯する近代の視点
一 エセ演繹型から帰納的思考へ
二 生活者 ―― 「弱い個人」の主体
三 交錯する外部と内部の参照点
既出関連文献
引用文献
関連年表
事項索引・人名索引
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