盛山和夫「構造的エッセンスの学としての数理社会学」『理論と方法』Vol. 26 (2011) No. 2 p. 271-286

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数理社会学は,1950〜60年代において理論社会学の主流派だったパーソンズ理論や機能主義に代わって,社会学により厳密で経験的な裏付けのある理論形成の文化が必要だという考えを基盤にして始まった.そのことは,コールマンやホワイトなどの初期の仕事からうかがい知ることができる.しかし,そうした数理社会学の目標は,必ずしも達成されていない.その一つの理由は,残念ながら,経済と違って,社会学が対象とする社会的世界は意味世界であって,本来的な数理性が保証されていないからである.他方また,数理社会学者自身が数理社会学の役割を誤解してきたという面もある.少なくない数理社会学者が,数理社会学は経験的一般化やフォーマライゼーションを通じて社会学理論の構築に貢献すると考えている.また,一部の人は,数理モデルの帰結への何らかの解釈を通じて理論が導かれると思っている.これらはいずれも,数理モデルの構築が本来的に創造的な営みであって,モデル構築それ自体が新しい理論を生み出す試みだと点に気づいていない.本稿は,数理社会学の基本的課題は,現象の「構造的エッセンス」に対する数理モデルの構築を通じて,現象の新しい理解の展開に寄与することだと主張し,そのことを,いくつかの数理モデルを紹介しまた説明することで,明らかにしようとするものである.

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