赤川学著『社会問題の社会学』(2012)

 

社会問題の社会学 (現代社会学ライブラリー9)

社会問題の社会学 (現代社会学ライブラリー9)

 

 貧困や格差、雇用、医療・年金・介護、少子化から差別、教育、環境など、社会問題は、社会のなかでひろがりをもち、社会学全体のテーマと重なり合う。わたしたちが生きている社会についての考察を深める手がかりとなる。

第1章 社会問題をいかに研究したらよいのか
――構築主義にいたるまで
1.社会問題とは
2.マートンの社会問題論 
3.ラベリング理論
4.構築主義
5.構築主義の経験的プログラムに向けて

第2章 構築主義を再構築する
――構築の存在論と正義論をこえて
1.構築主義存在論と認識論
2.構築主義は「日常世界の外部に立つ」視点を確保するための戦略か? 
3.社会問題の構築主義における経験的研究のプログラム
4.正義論をこえて――制度のプロセス論へ

第3章 社会問題の自然史モデル
1.構築主義を実質化する方法としての自然史モデル
2.クレイム申し立て活動
3.なぜ統計はウソをつくのか
4.メディア報道
5.大衆の反応
6.政策形成
7.社会問題ワーク
8.政策の影響

第4章 社会問題のレトリック分析
1.経験的研究のカギになるレトリック分析
2.ジョエル・ベストによる「クレイムのレトリック」
(1)前提 Grounds
(2)論拠 Warrants
(3)結論 Conclusion
3.イバラとキツセによる、レトリックのイディオム論
4.中河伸俊による有害コミック問題のレトリック分析
(1)喪失のレトリック
(2)権利のレトリック
(3)危険のレトリック
(4)没理性のレトリック
(5)災厄のレトリック
5.対抗レトリック
(1)自然現象化
(2)対策にかかるコスト
(3)無能力の表明
(4)パースペクティブ
(5)戦術への批判
(6)パタン解体
(7)逸話語り
(8)非誠実の対抗レトリック
(9)ヒステリアの対抗レトリック
6.レトリック分析の発展にむけて

第5章 「非実在青少年」規制問題の展開
――社会問題のサイクル
1.社会問題のサイクル
2.有害コミック問題から「非実在青少年」規制問題へ
(1)東京都の内部での政策形成
(2)大衆の反応としてのパブリックコメント
(3)関連諸団体によるクレイム申し立て
(4)答申素案から改正案に
(5)条例改正案の議会への堤出
(6)ウェブ上での大衆の反応
(7)メディア報道
(8)漫画家集団が立ち上がる
(9)議会での審議はじまる
(10)議会閉会中の動き
(11)反対運動が頂点を迎える
(12)参考人招致と総務委員会での審議
(13)利益団体からのクレイム申し立て
(14)一般の人びとからの大衆の反応
(15)条例改正案の否決
3.自然史モデルからみる問題構築のプロセス
4.自然史モデルの修正

第5章 社会問題の経路依存性
1.レトリック分析の応用
2.前提
「コップ半分の水」問題
児童ポルノ有害図書は性犯罪の原因となるか
3.論拠 Warrants
論拠の共有
論点絞込みのパラドクス
相手方クレイムの逆用
4.結論 Conclusions
5.社会問題の経路依存性

あとがき