関めぐみ著『〈女子マネ〉のエスノグラフィー-大学運動部における男同士の絆と性差別』(2018)

 

女性とスポーツの新たな関係はつくりだせるのか?

〈女子マネ〉の経験をエスノグラフィーとして描くことで,
その多様性を伝え,社会的に付与されている意味づけを変える。
そして「女子マネージャー」という制度を、新たな女性活躍の場として転換させる可能性を示す。

はじめに ―〈女子マネ〉とは誰なのか

序章   エスノグラフィーで〈女子マネ〉の経験を可視化させる
1.   〈女子マネ〉活動を活躍の場として再定義する
2.   スポーツ組織におけるセクシュアル・ハラスメント問題
3.   異性愛男性優位の関係構造である「ホモソーシャリティ
4.   関係構造の変容可能性はどこにあるのか―仮説の提示
5.   本書の構成

1 章   ハラスメントのないスポーツ組織を構想する ―理論と方法
1.   〈女子マネ〉はどのように論じられてきたのか ―先行研究の検討
2.   マネージャーと選手の対等な関係性を定義する ―主体位置と権力差
3.   ホモソーシャリティ再考―ハラスメントが発生する関係構造を可視化させる
4.   大学アメリカンフットボール部におけるフィールドワーク ―調査概要

I   「外部型」から「外部境界型」ホモソーシャリティへ ―X 大学の事例より―

2 章   組織の女性比率が0 %から約30%に変遷した場合 ―現役チームと先輩チームの比較
1.   チームの概要
2.   〈楽しむ〉ことを目標に ―参与観察にみる現役チーム
3.   〈厳しい代〉最後の経験者 ―N さん(OB 選手)の語りにみる先輩チーム
4.   《女子マネキャラではない》Aさんと涙を見せる主将 ―変容要因仮説の検証

3 章   「マネージャー」としての経験
1.   《私選んでここ来とんねん》 ―A さん(元チーフマネージャー)の場合
2.   《私はなんかおかんキャラ》 ―B さん(元チーフマネージャー)の場合
3.   《女子って感じが苦手》 ―Cさん(退部者)の場合
4.   《あの時ほんとに辞めてよかったんかな……》 ―D さん(退部者)の場合
5.   X 大学における「〈女子マネ〉型主体」と「母親代理型主体」の存在
まとめ ―X大学アメフト部にみる関係構造の変容可能性と限界

II   「外部境界型」から「内部境界型」ホモソーシャリティへ ―Y 大学の事例より―

4   章 組織の女性比率が約40%に達した場合 ―現役チームと先輩チームの比較
1.   チームの背景
2.   〈マネージャーシフト制〉のはじまり ―参与観察にみる現役チーム
3.   選手の〈ありがとう問題〉 ―S さん(OG マネージャー)の語りにみる先輩チーム
4.   外部男性トレーナーL さんと「専門性の強化」 ―変容要因仮説の検証

5 章   「トレーナー」としての経験
1.   《“フクドル"って呼ばれてて》 ―E さん(元チーフトレーナー)の場合
2.   《アクティブになりたかった》 ―F さん(元チーフトレーナー)の場合
3.   Y 大学における「才色兼備型主体」の存在と分化の影響
まとめ ―Y 大学アメフト部にみる関係構造の変容可能性と限界

III   「結合型」ホモソーシャリティという新たな関係構造の発見 ―Z 大学の事例より―

6 章   組織において「専門家」として位置づけられた場合 ―日本とカナダの比較
1.   カナダのスポーツ文化とアスレチックセラピスト
2.   Z 大学における制度的保障
3.   Z 大学におけるアスレチックセラピストの持つ権利
4.   Z 大学アメフト部における参与観察

7 章   「アスレチックセラピスト」としてのの経験
1.   《メンバーが学内でハラスメントをすることはない》 ―G さん(学生セラピスト)の場合
2.   《私はただ意地悪に振る舞わないといけません》 ―H さん(スタッフセラピスト)の場合
まとめ ―Z 大学アメフト部における関係構造から可能性を探る

終章   可視化させたの経験をどう生かしていくのか
1.   「専門性の強化」および「制度的保障」の可能性と「性別二元制」の限界
2.   組織内の位置を可視化させることで生まれる個人の「気づき」
3.   スポーツ組織における対等な関係性構築に向けた権利の保障
4.   本書の意義と今後の課題
5. まとめにかえて―ハラスメントへのこれからの抵抗

おわりに―私の研究のあゆみ