池内紀著『闘う文豪とナチス・ドイツ-トーマス・マンの亡命日記』(2017)

 

大作『ブッデンブローク家の人々』で若くして名声を獲得し、五十四歳でノーベル文学賞を受賞したドイツ人作家トーマス・マン。だが、ファシズム台頭で運命は暗転する。体制に批判的なマンをナチスは国外追放に。以降、アメリカをおもな拠点に、講演やラジオ放送を通じてヒトラー打倒を訴え続け、その亡命生活は二十年近くに及んだ。激動の時代を、マンはどう見つめ、記録したか。遺された浩瀚な日記から浮かび上がる闘いの軌跡。

I クヌート・ハムスンの場合 / レマルクのこと / リトマス試験紙 / プリングスハイム家 / 二・二六事件 / 二つの喜劇
II 大戦勃発の前後 / ドイツ軍、パリ入城 / 転換の年 / 奇妙な状況 / ホモ・ポリティクス / ツヴァイクの場合 / 立ち襟と革ジャン
III 封印の仕方 /「白バラ」をめぐって / ゲッベルスの演説 /『ファウストゥス博士』の誕生 / 終わりの始まり / 噂の真相 / 終わりと始まり /
IV ニュルンベルク裁判 / 父と子 / 再度の亡命 /「正装」の人 / 魔術師のたそがれ / 最後の肖像