津久井五月著『コルヌトピア』(2017)

 

コルヌトピア

コルヌトピア

 

 2084年、人類が、植物の生理機能を演算に応用する技術〈フロラ〉を生み出した未来。東京は、23区全体を取り囲む環状緑地帯(グリーンベルト)によって世界でも群を抜く計算資源都市となっていた。フロラ開発設計企業に勤める青年・砂山淵彦は、多摩川中流で発生したグリーンベルトの事故調査のなかで、天才植物学者・折口鶲(おりくち・ひたき)と出逢う。首筋につける〈角〉――ウムヴェルトと呼ばれる装置を介してフロラの情報処理を脳に描出(レンダリング)する淵彦は、鶲との仕事の最中に突如意識を失ってしまう。混濁する意識の中で思い出される、藤袴嗣実(ふじばかま・つぐみ)という少年と過ごした優しき日々。未来都市に生きる三人の若者たちを通して描かれる、植物と人類の新たなる共生のヴィジョンとは? 25歳の現役東大院生による、第5回ハヤカワSFコンテスト受賞作。