ジョン・G.A. ポーコック著『マキァヴェリアン・モーメント―フィレンツェの政治思想と大西洋圏の共和主義の伝統』(1975=2008)

マキァヴェリアン・モーメント―フィレンツェの政治思想と大西洋圏の共和主義の伝統

マキァヴェリアン・モーメント―フィレンツェの政治思想と大西洋圏の共和主義の伝統

マキァヴェッリにる古典的共和主義思想の復興に注目することで、「共和国の不安定性」を焦点とする思想史上の一大事件を捉え、イタリアから英米へと及び思想世界の風景を一変させた巨大な波動を、広大な射程と圧倒的な迫力をもって描き出した名著。

第Ⅰ部 個別性と時間―概念的背景
 第1章 問題とその様式
     (A) 経験、慣用、慎慮
 第2章 問題とその様式
     (B) 摂理、運命、徳
 第3章 問題とその様式
     (C) 〈活動的生活〉 と 〈市民的生活〉
第Ⅱ部 共和国とその運命―1494年から1530年までのフィレンツェの政治思想
 第4章 ブルーニからサヴォナローラまで
     運命、ヴェネツィア、黙示録
 第5章 メディチ家の復辟
     (A) グイッチャルディーニと下級の 〈都市貴族層〉、1512-1516年
 第6章 メディチ家の復辟
     (B) マキァヴェッリの 『君主論
 第7章 ローマとヴェネツィア
     (A) マキァヴェッリの 『ディスコルシ』 と 『戦争の技術』
 第8章 ローマとヴェネツィア
     (B) グイッチャルディーニの 『対話』 と貴族的慎慮の問題
 第9章 ジャンノッティとコンタリーニ
     概念としてのヴェネツィアと神話としてのヴェネツィア
第Ⅲ部 革命以前の大西洋圏における価値と歴史
 第10章 イングランド・マキァヴェリズムの問題
      内乱以前の市民的意識の様式
 第11章 共和国のイングランド
      (A) 混合政体、聖徒、市民
 第12章 共和国のイングランド
      (B) コート、カントリ、常備軍
 第13章 新マキァヴェッリ的政治経済学
      土地、商業、信用をめぐるオーガスタン時代の論争
 第14章 18世紀の論争
      徳、情念、商業
 第15章 徳のアメリカ化
      腐敗、国制、辺境
第Ⅳ部 『マキァヴェリアン・モーメント』 をめぐる論争を回顧して
 第16章 『マキァヴェリアン・モーメント』 再訪
      歴史とイデオロギーの研究
 第17章 『マキァヴェリアン・モーメント』 をめぐる三十年間の論争
2003年版 (新版) への後書き

増補版 政治における合理主義

増補版 政治における合理主義

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アリストテレス全集 3  自然学

アリストテレス全集 3  自然学

17 フォーテスキュー(15世紀イングランドの法律家)による慣習法・制定法。理性と経験の二分法、経験の量化可能性の原理。
34 ボエティウス, 480-524, アリストテレスの論理学をラテン語に翻訳し、これが中世のアリストテレス研究の端緒となった。
34「徳 virtue と運命 fortune は、対立概念として常に対にされた」
81 レオナルド・ブルーニ
85 ジョヴァンニ カヴァルカンティ, 1381-1451, フィレンツェ教皇党指導者
87「わたしたちは〈理性〉ち〈ヴィルトゥ[徳]〉がほとんど交換可能な用語となる点に近づいている。徳が運命の挑戦に応えるのは、適切なキリスト教的対応としてではなく、適切なローマ的政治的応答としてである。すなわち人間がそれによって出来事と運命を支配するとができる技量と勇気というマキァヴェッリ的な意味を〈徳〉が帯び始めたのであwる。もちろんこの発展の線に沿って、〈徳〉がキリスト教的意味を、さらにその倫理的な意味さえも完全に失うことがありえた」
113 フランチェスコ・グイッチャルディーニ, 1483-1527
113 マキァヴェッリ, 1469-1527
142「マキァヴェッリの「新しい君主」の扱い方―革新者としての支配者―は、市民として活動し続けたいという〈都市貴族層〉などの願望から君主を引き離し、君主と彼の支配する人びとをもっぱら〈運命〉との関係において行為するものとして考察している」
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ディスコルシ ローマ史論 (ちくま学芸文庫)

ディスコルシ ローマ史論 (ちくま学芸文庫)

中世における個人と社会 (1970年)

中世における個人と社会 (1970年)

236「フィレンツェの政治について書くときには、わたしたちがやがて見るように、ジャンノッティは〈民衆的な生活[民主政]〉を擁護したのであった」
255「ジャンノッティの制度では〈運命〉はほとんど役割を演じないし、この語は滅多に用いられない。その代わりに彼は、アリストテレス的な因果性の理論と社会的諸力の理論に依拠しているのである」
261「マキァヴェッリにとって民主政国家であったローマは、ジャンノッティにとっては、グイッチャルディーニと同様、むしろ不安定な貴族制なのである」
270 「時間と運命に対するルネサンスの脅迫観念」なぜポーコックは、時間の概念を重視するか。時間が運命と分かちがたく張り付いていたからだ。運命は無論、神に紐付けられている。そして、時間にときに対立し、また止揚するためにアリストテレスは参照される。
346「いずれにせよ、わたしたちは、徳、〈ウィルトゥス〉virtus、そして〈ヴィルトゥ〉 virtuという用語がそのローマ的およびルネサンス的意味において非常に重要になる、しかしそれらの反対命題がもはや〈運命〉fortunaではなく、むしろ歴史的な腐敗である時代に、今や入ろうとしているのである」「マキァヴェッリ的およびハリントン的共和主義の定式が王政復古時代のイングランドの議会君主制において、どのようにして適切と思われたのか」