小泉義之著『ドゥルーズの哲学ー生命・自然・未来のために』(2000→2015)

現代思想は「私」の同一性に固執してきた。それから、私という存在を保証してくれる外部としての「他者」論に到達した。でも、それはしょせん「私」に定位した思想だ。「私」は思考を停止させるのではないか。ドゥルーズは同一性の哲学を捨て差異の哲学に向かう。現代思想を、真に更新しえた稀有な哲学者に徹底してよりそい、鮮烈に読み解いた快著。

第1部 差異と反復
 第一章 変異の進化
 第二章 普遍数学
 第三章 自然の哲学
 第四章 ツリーとリゾーム
 第五章 生命の哲学
第2部 未来の哲学
 第六章 批判と臨床――スピノザ
 第七章 生存の肯定――ニーチェ
 第八章 人間の終焉――フーコー
 第九章 未来の素描――フランシス・ベイコン
 第十章 出来事の運命――シネマ

68「(ポアンカレは)微分方程式が表現するベクトル場において特異点を求め、その特異点の近傍における軌道曲線の局在的振る舞いを定性的に分析した上で、局在的な振る舞いを繋ぎあわせて、大域的な軌道曲線の振る舞いを描き出したのである。ところが、ポアンカレ以降、軌道曲線の数値計算だけが、数理科学に残された唯一のしごとであると見做されることにもなった。自然は複雑だから、単純化したモデルでシミュレーションして計算する。そして観測値と比較してモデルの有効性を評価する。こんな作業の繰り返しになった」
69「ドゥルーズは…ニュートンラプラスポアンカレの系譜に対して、ライプニッツ、ベルヌーイ、アーベル、リーマンの系譜を復権させる」
79「レヴィ・ストロースの構造は、モデルにすらなってはいないのだ」!
分類という思想 (新潮選書)

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ニーチェと哲学 (河出文庫)

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西洋哲学史の再構築に向けて

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234「潜在的なもの/現実的なもの」の関係は「後者は前者の表象ではない」とする。これは「微分方程式/自然」の関係に等しい。
243 アルベール・ロトマン【リンク
244 「解けない問題」=微分方程式を「強度的なシステム」=自然において説くというパラドキシカルな方法
数学的経験の哲学 エピステモロジーの冒険

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エピステモロジー

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微分方程式入門 (基礎数学)

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