市田良彦著『ルイ・アルチュセール-行方不明者の哲学』(2018)

 

 現代思想を代表するマルクス主義理論家か,妻を殺めた狂気の人か.光と闇の落差がもたらす眩暈のなかに哲学者は姿をくらます.彼にとっては,「行方不明になる」ことが「政治」であった――知られざるアルチュセール(1918―90)の哲学が,「スピノザを読むアルチュセールを読む」というかつてない試みを通して浮かび上がる.

第一章 行方不明者の生涯
 一 理論と経験
 二 落差と眩暈――青年期
 三 二股をかける哲学者――壮年期
 四 危機の炸裂――一九七棚年代以降

第二章 偶然性唯物論スピノザ――問題の「凝固」
 一 偶然性唯物論――晩年の思想?
 二 構造とはなにか
 三 「錯乱」と「狂気」
 四 経験主義

第三章 『資本論を読む』またはスピノザを読む
 一 アルチュセールスピノザ
 二 徴候的読解とはなにか
 三 神の背中――哲学と宗教
 四 「われわれ」は「狂って」いる

第四章 構造から〈私〉と国家へ
 一 「錯乱」するアルチュセール
 二 原因の劇場
 三 「イデオロギーと国家のイデオロギー装置」再考
 四 〈私〉と国家

第五章 スピノザから遠く離れて
 一 『神学政治論』でも『政治論』でもなく
 二 哲学,政治,歴史
 三 起源,深淵,個人/狂人――フーコーと共闘する
 四 国家の政治――フーコーと対立する
 五 自伝という「政治」――「佐川くん」にならずピエール・リヴィエールになるために

本書において使用した文献
謝 辞

 

倉田剛著『現代存在論講義Ⅰーファンダメンタルズ』(2017)

 

現代存在論講義I?ファンダメンタルズ

現代存在論講義I?ファンダメンタルズ

 

 論理学を武器としてきわめて明晰な議論へと新生した存在論―その最先端まで学生と教員の対話を織り交ぜた解説で導く本格入門書。存在論の方法、カテゴリーの体系、性質について初歩から詳論する。

序 文
  本書の成立とスタイル
  本書の主題
  本書を世に問う理由─なぜ『現代存在論講義』なのか
  著者の立場─暗黙の前提

第一講義 イントロダクション─存在論とは何か
1 何が存在するのか
  1.1 「何が存在するのか」から「どのような種類のものが存在するのか」へ
  1.2 性質と関係
  1.3 物とプロセス
  1.4 部分と集まり
  1.5 種という普遍者
  1.6 可能的対象および虚構的対象

2 存在論の諸区分
  2.1 領域的存在論と形式的存在論
  2.2 応用存在論と哲学的存在論
  Box 1 表象的人工物としての存在論存在論の可能な定義
  2.3 形式的存在論と形式化された存在論
  2.4 存在論の道具としての論理学
  Box 2 同値、分析あるいは存在論的説明について
  2.5 存在論とメタ存在論

まとめ

第二講義 方法論あるいはメタ存在論について
1 存在論的コミットメントとその周辺
  1.1 世界についての語りと思考
  1.2 存在論的コミットメントの基準
  Box 3 すべてのものが存在する?!─存在の一義性について
  1.3 パラフレーズ
  Box 4 “No entity without identity”─クワイン的メタ存在論の否定的テーゼ

2 理論的美徳─「適切な存在論」の基準について
  2.1 単純性
  2.2 説明力
  2.3 直観および他の諸理論との整合性

3 非クワイン的なメタ存在論
  3.1 虚構主義
  3.2 マイノング主義
  3.3 新カルナップ主義
  Box 5 カルナップと存在論

まとめ

第三講義 カテゴリーの体系─形式的因子と形式的関係
1 カテゴリーと形式的因子
  1.1 カテゴリーの個別化─形式的因子
  1.2 存在論的スクエア

2 形式的関係
  2.1 4カテゴリー存在論における形式的関係
  2.2 存在論セクステットと形式的関係
  Table 1 主要な形式的関係のまとめ

まとめ

第四講義 性質に関する実在論
1 ものが性質をもつということ
  1.1 何が問われているのか
  1.2 存在論的説明あるいは分析について
  1.3 実在論による説明

2 実在論の擁護
  2.1 分類の基礎
  2.2 日常的な言語使用
  2.3 自然法則と性質

3 ミニマルな実在論
  3.1 述語と性質
  3.2 否定的性質
  3.3 選言的性質
  3.4 連言的性質と構造的性質
  3.5 付録:高階の普遍者について
  Box 6 アームストロングへの疑問

まとめ

第五講義 唯名論への応答
1 クラス唯名論
  1.1 クラスによる説明
  1.2 例化されていない性質および共外延的性質の問題
  1.3 クラスの同一性基準と性質
  1.4 すべてのクラスは性質に対応するのか

2 類似性唯名論
  2.1 類似性の哲学
  2.2 類似性唯名論への反論

3 述語唯名論
  3.1 正統派の唯名論
  3.2 述語唯名論への反論

4 トロープ唯名論
  4.1 実在論の代替理論としてのトロープ理論
  4.2 トロープの主要な特性とそれにもとづく「構築」
  4.3 トロープ唯名論のテーゼとそれへの反論
  Box 7 トロープへのコミットメントを動機づける理由
  4.4 実在論との共存

まとめ

結語にかえて─存在の問いはトリヴァルに解決されるのか?
読書案内
あとがき

 18 溝口『オントロジー工学』

オントロジー工学 (知の科学)

オントロジー工学 (知の科学)

 

 42 クワイン的なメタ存在論

①われわれが承認する理論を公正している文を標準的な論理式に翻訳せよ。

②その翻訳から存在論的コミットメントを取り出せ。

③その存在論的コミットメントを額面通りに受け入れよ。

大屋雄裕著『自由とは何か-監視社会と「個人」の消滅』(2007)

 

自由とは何か (講談社現代新書)

自由とは何か (講談社現代新書)

 

かつてより快適な暮らしが実現した現代社会。各人の振る舞いは膨大なデータとして蓄積され、“好み”の商品情報が自動的に示される。さらにはさまざまな危険を防ぐため、あらかじめ安全に配慮した設計がなされる。こうして快適で安全な監視社会化が進む。これは私たち自身が望んだことでもある。しかし、ある枠内でしか“自由”に振る舞えず、しかも、そのように制約されていることを知らずにいて、本当に「自由」と言えるのか。「自由」という、古典的かつ重要な思想的問題に新たな視角から鋭く切り込む。

第1章 規則と自由

 「個人」の自己決定と法・政治
 自由への障害
 二つの自由―バーリンの自由論
 交錯する自由
第2章 監視と自由

 見ることの権力
 強化される監視
 ヨハネスブルク・自衛・監視
 監視と統計と先取り
 監視・配慮・権力
 「配慮」の意味
 衝突する人権?
 事前の規制・事後の規制
 規制手段とその特質
第3章 責任と自由

 刑法における責任と自由
 自己決定のメカニズム
 責任のための闘争―刑法四〇条削除問題
 主体と責任

 

児玉聡著『功利主義入門-はじめての倫理学』(2012)

 

功利主義入門―はじめての倫理学 (ちくま新書)

功利主義入門―はじめての倫理学 (ちくま新書)

 

倫理学とは「倫理について批判的に考える」学問である。すなわち、よりよく生きるために、社会の常識やルールをきちんと考えなおすための技術である。本書では、「功利主義」という理論についてよく考えることで、倫理学を学ぶことの意義と、その使い方を示す。「ルールはどこまで尊重すべきか」や「公共性と自由のあり方」という問いから「幸福とは何か」「理性と感情の関係」まで、自分で考える人の書。 

第1章 倫理と倫理学についての素朴な疑問

第2章 功利主義とは何か
第3章 功利主義者を批判する
第4章 洗練された功利主義
第5章 公共政策と功利主義的思考
第6章 幸福について
第7章 道徳心理学と功利主義

 

安藤馨, 大屋雄裕著『法哲学と法哲学の対話』(2017)

 

法哲学と法哲学の対話

法哲学と法哲学の対話

 

「法学」において法哲学の占めるべき位置はあるか,どこに。その内部での議論は実定法学に何を伝えるのか──こうした疑問を受けとめて,気鋭の論者ふたりの対話は,やがて法学の内外へと議論を誘発していく。対話がもたらすものは幸福か。知的世界は変わるのだろうか。

第1テーマ 権利と人権のあいだ(大屋・安藤/倫理学からのコメント:江口 聡)
第2テーマ 団体が,そして団体のみが(安藤・大屋/民法学からのコメント:水津太郎)
第3テーマ 平等の平等か,不平等の平等か(大屋・安藤:政治哲学からのコメント:井上 彰)
第4テーマ 法と危険と責任と(安藤・大屋/刑法学からのコメント:佐藤拓磨)
第5テーマ 正義・同一性・差異(大屋・安藤/政治学からのコメント:田村哲樹
第6テーマ 最高ですか?(安藤・大屋/憲法学からのコメント:片桐直人)
少し離れたところからの眺め──<異世界通信>としての対話(米村幸太郎) 

 4 ドゥウォーキン『原理の問題』「個々人が平等に尊敬され配慮される権利を持つと考えるロナルド・ドゥウォーキンは、人権を「切り札」(trump)と位置付けた」

原理の問題

原理の問題

 

 5 ノージックアナーキー・国家・ユートピア

アナーキー・国家・ユートピア―国家の正当性とその限界

アナーキー・国家・ユートピア―国家の正当性とその限界

 

 6 サンスティーン『実践 行動経済学

実践 行動経済学

実践 行動経済学

 

 6 大屋『自由か、さもなくば幸福か?』

 9 瀬川, 宇佐美, 大屋『法哲学

法哲学

法哲学

 

 10 安藤『統治と功利』「古典的功利主義を統治の哲学と位置付け、現代におけるその再生を目指すものとして」

統治と功利

統治と功利

 

 14 コリアー『民主主義がアフリカ経済を殺す』

民主主義がアフリカ経済を殺す

民主主義がアフリカ経済を殺す

 

78 大屋『法哲学言語哲学クリプキから根源的規約主義へ』 

 

法解釈の言語哲学―クリプキから根元的規約主義へ

法解釈の言語哲学―クリプキから根元的規約主義へ

 

 82 日本法哲学会『功利主義ルネッサンス―統治の哲学として』

功利主義ルネッサンス―統治の哲学として (法哲学年報)

功利主義ルネッサンス―統治の哲学として (法哲学年報)

 

 111 大屋『自由とは何か―監視社会と「個人」の消滅』

 

 

戸田山和久著『恐怖の哲学―ホラーで人間を読む』(2016)

 

恐怖の哲学 ホラーで人間を読む (NHK出版新書)

恐怖の哲学 ホラーで人間を読む (NHK出版新書)

 

なぜわれわれはかくも多彩なものを恐れるのか? ときに恐怖と笑いが同居するのはなぜか? そもそもなぜわれわれは恐れるのか? 人間存在のフクザツさを読み解くのに格好の素材がホラーだ。おなじみのホラー映画を鮮やかに分析し、感情の哲学から心理学、脳科学まで多様な知を縦横無尽に駆使、キョーフの正体に迫る。めくるめく読書体験、眠れぬ夜を保証するぜ!

I 恐怖ってそもそも何なのさ?
第1章 恐怖の原型としての「アラコワイキャー体験」
第2章 アラコワイキャーのどれが重要なのか?――「部分の問題」を考える
第3章 これが恐怖のモデルだ!――身体化された評価理論
II ホラーをめぐる3つの「なぜ?」
第4章 まずは「ホラー」を定義しちゃおう
第5章 なぜわれわれはかくも多彩なものを怖がることができるのか?
第6章 なぜわれわれは存在しないとわかっているものを怖がることができるのか?
第7章 なぜわれわれはホラーを楽しめるのか?
III 恐怖の「感じ」って何だろう?――ゾンビといっしょに考える
第8章 哲学的ゾンビをいかに退治するか?
第9章 「意識のハードプロブレム」をいかに解くか?