リチャード・ローティ著, 室井尚他訳『プラグマティズムの帰結』(1982=1985→2014)

 

プラグマティズムの帰結 (ちくま学芸文庫)

プラグマティズムの帰結 (ちくま学芸文庫)

 

知識の確実な基盤を設立すべく、実在と認識との対応(=真理)を飽くことなく求めたデカルト、カント。近代西洋哲学の底に流れるそうした認識論的欲求を脱構築し、新たな知の形を模索したハイデガーウィトゲンシュタイン、そしてデューイ。これら二つの勢力の相克こそが「哲学」であると考えるローティは、後者になお残存する「認識論的」衝動からも解放される「ポスト“哲学”」時代を予告した。それでは哲学にはいま何ができるのか?「真理」とは何でありうるのか?本書では主著『哲学と自然の鏡』刊行後に巻き起こった激論に応答しつつ、さらなる問いへと挑む。

プラグマティズムと哲学
たとえ世界を失っても
哲学を純粋に保つこと―ウィトゲンシュタイン試論
伝統を超えること―ハイデガーとデューイ
職業化した哲学と超越論主義文化
デューイの形而上学
エクリチュールとしての哲学―デリダ試論
虚構的言説の問題なんてあるのだろうか?
一九世紀の観念論と二〇世紀のテクスト主義
プラグマティズム相対主義・非合理主義
カヴェルと懐疑論
方法・社会科学・社会的希望
今日のアメリカ哲学

 

千葉雅也著『思弁的実在論と現代について』(2018)

 

思弁的実在論と現代について: 千葉雅也対談集

思弁的実在論と現代について: 千葉雅也対談集

 

いま最も注目される気鋭の哲学者、待望の初対談集。第一線で活躍する論客たちと、哲学、文学、社会、精神医学、サブカルチャーなどを横断し、現代の問題を縦横無尽に語りつくす。思考の前衛がここにある

第1部 思弁的実在論

 思弁的転回とポスト思考の哲学×小泉義之
 ポスト・ポスト構造主義エステティクス×清水高志
 思弁的実在論と新しい唯物論×岡嶋隆佑
 権威(オーソリティ)の問題―思弁的実在論から出発して×アレクサンダー・ギャロウェイ
第2部 現代について

 装置としての人文書―文学と哲学の生成変化論×いとうせいこう
 中途半端に猛り狂う狂気について×阿部和重
 「後ろ暗さ」のエコノミー―超管理社会とマゾヒズムをめぐって×墨谷渉×羽田圭介
 イケメノロジーのハードコア×柴田英里×星野太
 ポスト精神分析的人間へ―メンタルヘルス時代の“生活”×松本卓也
 絶滅と共に哲学は可能か×大澤真幸×吉川浩満

佐藤岳詩著『メタ倫理学入門-道徳のそもそもを考える』(2017)

 

メタ倫理学入門: 道徳のそもそもを考える

メタ倫理学入門: 道徳のそもそもを考える

 

 「私たちは何をすべきか」を考える規範倫理学に対して、一歩後ろから「そもそも、なすべき正しいこととは何なのか」を考えるメタ倫理学。暗黙の前提をひっくり返し、議論の土台を新しく整備して、先入観や思い込みに気づかせてくれるのがメタ倫理学の役割だ。初学者向けに丁寧に論点を整理し、読者が自分の倫理を考える旅へといざなう。

はじめに

Ⅰ 道徳のそもそもをめぐって

第一章 メタ倫理学とは何か
 1 倫理学とは何か
 2 倫理学の分類
 3 メタ倫理学は何の役に立つのか
 4 メタ倫理学では何が問われるのか
 5 本書の構成

第二章 メタ倫理学にはどんな立場があるか
 1 客観主義と主観主義
 2 道徳的相対主義
 3 客観主義と主観主義のまとめ

Ⅱ 道徳の存在をめぐって

第三章 「正しいこと」なんて存在しない――道徳の非実在
 1 道徳の存在論
 2 錯誤理論――道徳の言説はすべて誤り
 3 道徳の存在しない世界で
 4 道徳非実在論のまとめ

第四章 「正しいこと」は自然に客観的に存在する―― 道徳実在論自然主義
 1 実在論の考え方と二つの方向性
 2 素朴な自然主義(意味論的自然主義)――もっともシンプルな自然主義
 3 還元主義的自然主義――道徳を他の自然的なものに置き換える
 4 非還元主義的自然主義――道徳は他と置き換えられない自然的なもの
 5 自然主義全般の問題点
 6 自然主義実在論のまとめ

第五章 「正しいこと」は不自然であろうと存在する――道徳実在論②非自然主義実在論
 1 神命説
 2 強固な実在論
 3 理由の実在論
 4 非自然主義実在論のまとめ

第六章 そもそも白黒つけようとしすぎじゃないのか――第三の立場と静寂主義
 1 準実在論――道徳は実在しないが、実在とみなして構わない
 2 感受性理論――道徳の実在は私たちの感受性を必要とする
 3 手続き的実在論――道徳は適切な手続きを通して実在する
 4 静寂主義――そもそも実在は問題じゃない
 5 第三の立場および第Ⅱ部のまとめ

Ⅲ 道徳の力をめぐって

第七章 道徳判断を下すとは自分の態度を表すことである――表出主義
 1 道徳的な問いに答えること
 2 表出主義
 3 表現型情緒主義――道徳判断とは私たちの情緒の表現である
 4 説得型情緒主義――道徳判断とは説得の道具である
 5 指令主義――道徳判断とは勧めであり指令である
 6 規範表出主義――道徳判断とは私たちが受け入れている規範の表出である
 7 表出主義のまとめ

第八章 道徳判断を下すとは事実を認知することである――認知主義
 1 認知主義
 2 内在主義と外在主義
 3 ヒューム主義――信念と欲求は分離されねばならないか
 4 認知は動機づけを与えうるか
 5 道徳判断の説明のまとめ

第九章 そもそも私たちは道徳的に善く振る舞わねばならないのか
 1 Why be Moral問題
 2 道徳的に善く振る舞うべき理由などない
 3 道徳的に善く振る舞うべき理由はある――プリチャードのジレンマ
 4 道具的価値に基づく理由
 5 最終的価値に基づく理由――理性主義
 6 そもそも理由なんていらなかった?――直観主義、再び
 7 Why be Moral問題および第Ⅲ部のまとめ

おわりに

 15 ヌスバウム『経済成長がすべてか?』

 35 ハーツ『あなたはなぜ「嫌悪感」をいだくのか』

あなたはなぜ「嫌悪感」をいだくのか

あなたはなぜ「嫌悪感」をいだくのか

 

71 戸田山『恐怖の哲学』

恐怖の哲学 ホラーで人間を読む (NHK出版新書)

恐怖の哲学 ホラーで人間を読む (NHK出版新書)

 

 185 テイラー『自我の源泉』

自我の源泉 ?近代的アイデンティティの形成?

自我の源泉 ?近代的アイデンティティの形成?

 

191 ローティ『プラグマティズムの帰結』 

プラグマティズムの帰結 (ちくま学芸文庫)

プラグマティズムの帰結 (ちくま学芸文庫)

 

 

河本英夫, 稲垣諭編著『現象学のパースペクティヴ』(2017)

 

現象学のパースペクティヴ

現象学のパースペクティヴ

 

 経験をまるごと変貌させるほどの知は存在するのか?
それが現象学の挑戦であり、賭けである。

はじめに
I 現象学的方法
現象学の深化
1 記述と論証――ブレンターノとフッサールの場合 (植村玄輝)
2 本質直観と時間意識 (武藤伸司)
現象学の外から、外へ
3 デカルトを読むフッサール――コギト、場所、時間 (坂本邦暢)
4 学際的哲学としての神経現象学の方法論 (山口一郎)

II 現象学のメタモルフォーゼ
●触覚・身体
5 触覚性転換――現象学的探求の拡張 (河本英夫)
6 「肉の告白」としての哲学――メルロ=ポンティ最晩年の思想の彼方に (廣瀬浩司)
●臨床・主体
7 臨床と影――操作と変容する主体の現象学 (稲垣 諭)
8 解体される死――本来性の可能性をめぐって (岩崎 大)
●他者・言語
9 ウィトゲンシュタインにおける構造論的言語理解――フロイトラカンを対照として (加藤 敏)
10 現象学から他者論へ――他者論の宗教化とその回避の可能性 (吉永和加)
●魔術・芸術
11 魔術的仮想世界の現象学――イメージ・夢・幻覚 (武内 大)
12 現象学の文学化の試み――詩歌の現象学に向けて (中山純一)
おわりに

 

麻生博之, 城戸淳編著『哲学の問題群ーもういちど考えてみること』(2006)

哲学の問題群―もういちど考えてみること

哲学の問題群―もういちど考えてみること

生きることや幸福、心・自由、知識・真理、存在・時間、善悪、社会・歴史、愛・性、死などのテーマを読者の目線でやさしく語る。はじめての人でも自由自在に学べる初歩の“哲学”。「主な哲学者紹介」「読書案内」を併載。

はじめに――哲学的に考えるということ――
I 人間とその生
1 生きる―生きることの意味とはなにか―
なんのための生きるのか/アリストテレスの「最高善」/「活動」としての行為
/ ニーチェ永遠回帰の思想 / 宇宙論的な苦笑

2  心 ―「心」とはいったいなんだろうか―
「心とは……である」と言い当てられるか/プラトンの霊魂説/
アリストテレスの『魂について』/デカルトの転換(魂から精神へ)/
カントによるデカルト批判

3 心と身体―心身はどんな関係にあるのか―
心身問題/二元論(デカルトの相互作用説)/二元論の困難/二元論と一元論/
唯物論的な考え方(心脳同一説と機能主義)/心の主観性/関係としての心

II 私と他者
4 私―自己意識という迷宮―
私をめぐるいくつかの問い/「考えるもの」としての私/私の捉えがたさ/
「意識そのもの」としての私/「他者の他者」としての私

5 アイデンティティ―昨日の私は私なのか―
私の変化と同一性/同一性と記憶/忘却と循環/身体と他者/積み残されている問題

6 他者の心―他人の気持ちや思いがわかるとはどのようなことか―
他我問題/類推説/感情移入説/心の私秘性という問題/行動主義/直接知覚説/
「他人の」心のありようが分かるということ

III 自由と行為
7 自 由―決定論と自由は両立するのか―
全知全能の神とラプラスの魔/意志の最初の哲学者、アウグスティヌス
若きカントの自発性の概念/ホッブズの意志実現説/ライプニッツの可能世界論/
カントの第3アンチノミー/経験的観点と叡智的観点の両立

8 行 為―行為と出来事はどう違うのか―
「する」と「起きる」/プラトン原因論/意志原因説の問題点/
アンスコムの「観察にもとづかない知識」/理由と原因/行為の絵と出来事の絵の違い

9 責 任―行為の責任を問うということ―
他者の自由へ/アリストテレスの責任論/性格の形成過程/カントの「人格」の概念/
他なる人格と「理性の事実」/ストローソンの責任論/日常世界と哲学

IV 知識と言語
10 知る―なにかを知るとはどういうことだろうか―
マトリックス』仮説/いもづる式懐疑/伝統的知性観/理性と経験/観念論と実在論
方法的懐疑/パトナムによる解決策

11 真 理―なにかが真であるとはどういうことだろうか―
うそつきのパラドクス/伝統的真理概念/対応説から観念論へ/対応説から反実在論へ/
うそつきふたたび/クリプキによる解決策

12 意 味―なにかを意味するとはどういうことだろうか―
「+」記号のパラドクス/意味は心のなかに/双子地球/意味を心の外に/
懐疑的結論と懐疑的解決/孤立した個人と共同体

V 存在と世界
13 存在と無―「ある」とはどういうことか―
なぜなにかがあるのか/世界があるということ/存在論的差異存在と無

14 個と普遍―なにがあるのか―
なにがあるのか/プラトンイデアアリストテレスの実体/実在論唯名論
存在するとは変項の値になること

15 世界の実在―身のまわりの世界は本当にあるのか―
意識のベール/観念とものそのもの/存在するとは知覚されること/疑いをまぬがれる世界

16 時 間―時間はどこにあるのか―
時間はどこにあるのか/アウグスティヌスの三つの時間/フッサールの時間意識/
数えられる時間/時計の時間と絶対時間

VI 善悪と価値
17 よ い―善/悪の根拠はなにか―
道徳という現象/道徳の指令性/道徳の客観性/道徳の本質的な特徴/
道徳的判断と真偽/道徳的性質はありうるか/ヒュームの懐疑(1)/
ヒュームの懐疑(2)/問いとしての道徳

18 相対主義―価値のちがいは絶対的か―
素朴な道徳相対主義相対主義批判/文化のちがいと道徳のちがい/
洗練された道徳相対主義/暗黙の合意/すべては本当に「相対的」なのか

19 義務か快苦か―行為の動機と結果をめぐって―
義務論/カントの善い意思と義務/定言命法/義務論とわれわれの常識/
功利主義功利主義とわれわれの常識

VII 社会と人間
20 ともに生きる―社会はどのように成り立つのか―
どこに社会はあるのか/「個人が先か。社会が先か」/アリストテレスの社会観/
社会契約論/ふたたび「個人が先か。社会が先か」

21 所 有―なにが私のものなのか―
所有による世界の色分け/所有の定義/ロックの労働所有論/労働の混入は目印になりうるか/
私の身体は私の所有物か/所有と他者

22  性 ―性的差異は「自然」なものか―
男性も出産できたら/セックス/ジェンダー/セクシュアリティ本質主義
文化的差異としてのセックス/哲学の古典の沈黙

23 歴 史―歴史があるとはどういうことか
歴史のイメージ/古典的歴史哲学と歴史の物語論/想起過去説/物語文/
歴史は改訂をまぬがれない/歴史の物語論歴史修正主義

VIII 苦悩と幸福
24  死 ―死というものをどのように考えるべきだろうか―
「死」は人間の敗北か/『ガリヴァー旅行記』の思考実験/人間の条件としての「死」/
生の「事実」/事実的な生における「死」の現在/「死」の意味

25  愛 ―誰かを愛するとはどのようなことだろう―
愛することを学ぶ/一体化への渇望/一体化の挫折/欠如への欲求/愛の苦悩と情熱/
欠如の愛を超えて/現実の相手に対する悦び/ともによく生きるための愛/異質な他者への愛/
一生の課題としての愛

26 幸 福―生の充足をめぐって―
すべての人は幸福を求める/幸福の不可能性/幸福の可能性を求めて/<よく生きること>と幸福/
自己実現としての幸福/現在の活動としての幸福

ジュリアン・バッジーニ, ピーター・フォスル著, 廣瀬覚, 長滝祥司訳『哲学の道具箱』(2003=2007)

哲学の道具箱

哲学の道具箱

哲学の道具箱』は、すぐれた論証を構成するには何が大切かという問題意識から編まれた、カジュアルなスタイルの哲学用語集。誰もがなんとなく使っている「偶然と必然」、「客観的と主観的」から、専門家以外には見落とされがちな「現象を救う」や「タイプとトークン」など、ユニークで斬新な項目からなる。
古来、哲学者たちのもっとも得意とすることは、さまざまな概念を駆使して議論をすることであった。本書はそうした哲学者たちが使う代表的な道具たちについてのわかりやすい解説書である。本書の著者は、哲学教育や哲学を一般のひとたちにも親しみやすいものにすることをとても強く意識した仕事を積み重ねてきている専門家である。高校生や大学生、一般の読者の方々も、本書を手に取れば、哲学の概念やおもしろい議論のしかけに親しむことができるであろう。

第1章 論証の基本ツール
第2章 その他の論証ツール
第3章 論証評価のツール
第4章 概念的区別のツール
第5章 ラジカルな批判のためのツール
第6章 極限のツール

一ノ瀬正樹著『英米哲学入門―「である」と「べき」の交差する世界』(2018)

英米哲学入門 (ちくま新書)

英米哲学入門 (ちくま新書)

私が生まれる前にも世界は本当に存在していたのか?ものごとには原因と結果があるという確信は、実は思い込みにすぎないのではないか?この世界の当たり前のありようを疑い、立ち止まって問うてみること。それこそが哲学の入口であり核心である。ロック、バークリ、ヒューム、ラッセル、ウィトゲンシュタイン…「経験」や「言語」を足場に考え抜いた哲学者たちの議論を糸口に、素朴にして深遠な哲学の根本問題へといざなう。事実(である)と規範(べき)が織りなす世界の謎を読者とともに思考する、笑いあり涙あり(?)の入門講義。

現代哲学への視点
英語圏の哲学とヨーロッパ大陸の哲学との分裂
哲学史的研究の方法態度
言語論的転回の前提とその基本態度
言語論的転回の成果と哲学の可能性
観念論論駁
常識の擁護
パラドックスと階型理論
記述の理論
論理的原子論〔ほか〕