辻村深月著『かがみの弧城』(2017)

 

学校での居場所をなくし、閉じこもっていたこころの目の前で、ある日突然部屋の鏡が光り始めた。輝く鏡をくぐり抜けた先にあったのは、城のような不思議な建物。そこにはちょうどこころと似た境遇の7人が集められていた―― なぜこの7人が、なぜこの場所に。すべてが明らかになるとき、驚きとともに大きな感動に包まれる。 生きづらさを感じているすべての人に贈る物語。

 

アリ・スミス著,木原善彦訳『両方になる』(2014=2018)

 

十五世紀イタリアに生きたルネサンスの画家と、母を失ったばかりの二十一世紀のイギリスの少女。二人の物語は時空を超えて響き合い、男と女、絵と下絵、事実と虚構の境界をも鮮やかに塗り替えていく。そして再読したとき、物語はまったく別の顔を見せる――。未だかつてない楽しさと驚きに満ちた長篇小説。コスタ賞受賞作。

 

境真良「ディープフェイク動画に対する民事的救済の権原について」『社会情報学』2020年, 8巻, 3号, p.147-163

本文

ディープフェイクは,動画又は写真の人の容貌データから,別の動画の特定の人の容貌をそれに似せて合成する偽作動画作成技術である。その被害を受けるのは自らの容貌で偽作動画を生成された芸能人等の著名人であるが,偽作動画の公開の民事的差止を行う際に,ディープフェイク以前の手法であれば有効であった実演家の隣接権は,容貌データ上の実演記録と偽作動画の間に表現の類似性・依拠性が認められにくいことから用いることが困難であり,アイコラ裁判等に鑑みると,肖像権又は肖像パブリシティ権に基づく請求が認められるのみである。現状のディープフェイクによる偽作動画の内容及び公開態様からみて,容貌再現の制度が高ければ差止請求の認容は可能性が高いが,財産権である肖像パブリシティ権に基づくのではなく,人格権たる狭義の肖像権に基づくことになろう。しかしながら,人格権は権利者本人が行使することが必要とされ,一般的に芸能人のビジネス支援(ビジネストラブルの解消を含む)を行う芸能プロダクションはこれを行使できない。偽作技術の発展,根拠となる権利として著作権法上の実演家隣接権が選択不可能となり肖像権(人格権)に限定されることで公開差止の法的請求を行いにくくなることは,産業実態上の不都合を生じる。これを緩和ないし解消するための新たな法解釈や立法措置が望まれる。

 

宇田朗子, 村井源「モバイルゲームにおける女性キャラクターの魅力的要素の分析」『情報知識学会誌』2021年, 31巻, 2号, p.173-180

本文

これまでキャラクターに関する研究において,外見についての研究や男性キャラクターにのみ着目した研究は行われてきたが外見以外の魅力に着目した研究や女性キャラクターにのみに着目した研究はあまり行われていない.本研究ではキャラクターの誘因魅力と継続魅力の違いに着目し,女性キャラクターの魅力についての分析を行った.キャラクターのどのような要素に魅力を感じているかアンケートを行い,回答を収集した.アンケートの結果を用いてカイ二乗検定を行い,誘因魅力と継続魅力に魅力的要素の違いに有意な差があることが明確になった.また,アンケート結果を用いて因子分析を行い,どのような要素の組み合わせに魅力を感じるかを調査した.結果として,キャラクターを印象付ける要素が誘因魅力,あとから追加できる要素が継続魅力として有力であることが分かった.

 

アブラム・デ・スワーン著,大平章訳『殺人区画-大量虐殺の精神性』(2015→2020)

 

二十世紀、非戦闘員に向けられた集団的暴力は戦争の三倍以上の人命を奪ったと言われる。ホロコーストをひとつの頂点として、ホロドモールやポル・ポト派による虐殺、ユーゴスラヴィアルワンダの虐殺にいたる無数の悲劇はいかなる人びとにより、いかにして実行されたのか。権力者の命令で、あるいは自ら進んで大量殺戮に従事した人びとの置かれた状況と、彼らを殺戮へと駆り立てる方法を社会学的に分析する。

第1章 序論
第2章 普通の加害者と近代性―状況に条件づけられた合意
第3章 同一化と非同一化の広がる輪
第4章 人間の歴史における暴力の変容
第5章 ルワンダ―自己破壊的な破滅
第6章 集団虐殺の体制と社会の区分化
第7章 大量虐殺の四つの方法―事例の歴史
第8章 集団虐殺の犯人と人格の区分化
第9章 結論

 

【書評】鈴木謙介「伊藤守編 『コミュニケーション資本主義と〈コモン〉の探求― ポスト・ヒューマン時代のメディア論』」『社会学評論』2020年, 71巻, 1号, p.173-174

本文

 

【書評】藤田結子「黄順姫著 『身体文化・メディア・象徴的権力――化粧とファッションの社会学』」『社会学評論』2020年, 71巻, 1号, p.166-167

本文

 

 谷本奈穂『美容整形と化粧の社会学