河本英夫, 稲垣諭編著『現象学のパースペクティヴ』(2017)

 

現象学のパースペクティヴ

現象学のパースペクティヴ

 

 経験をまるごと変貌させるほどの知は存在するのか?
それが現象学の挑戦であり、賭けである。

はじめに
I 現象学的方法
現象学の深化
1 記述と論証――ブレンターノとフッサールの場合 (植村玄輝)
2 本質直観と時間意識 (武藤伸司)
現象学の外から、外へ
3 デカルトを読むフッサール――コギト、場所、時間 (坂本邦暢)
4 学際的哲学としての神経現象学の方法論 (山口一郎)

II 現象学のメタモルフォーゼ
●触覚・身体
5 触覚性転換――現象学的探求の拡張 (河本英夫)
6 「肉の告白」としての哲学――メルロ=ポンティ最晩年の思想の彼方に (廣瀬浩司)
●臨床・主体
7 臨床と影――操作と変容する主体の現象学 (稲垣 諭)
8 解体される死――本来性の可能性をめぐって (岩崎 大)
●他者・言語
9 ウィトゲンシュタインにおける構造論的言語理解――フロイトラカンを対照として (加藤 敏)
10 現象学から他者論へ――他者論の宗教化とその回避の可能性 (吉永和加)
●魔術・芸術
11 魔術的仮想世界の現象学――イメージ・夢・幻覚 (武内 大)
12 現象学の文学化の試み――詩歌の現象学に向けて (中山純一)
おわりに

 

森川智之著『声優-声の職人』(2018)

 

声優 声の職人 (岩波新書)

声優 声の職人 (岩波新書)

 

 心惹かれたあの声もやっぱり森川智之だった。多彩な声を演じ分け唯一無二の存在感を放つ人気声優でありながら、自ら声優事務所の社長も務める稀有な存在。アニメから洋画の吹替え、ナレーション、ドラマCDまであらゆるジャンルで活躍し、「帝王」とも称されるプロフェッショナルが語る、声優という職人芸の秘密。

第1章 声優という職業
第2章 声の職人――帝王の履歴書から
第3章 裏方が表舞台に出る時代
第4章 声優の卵たちと、厳しい森川先生
第5章 帝王が目指すもの
森川智之 出演作品の一部

 

吉田民人編『社会学の理論でとく現代のしくみ』(1991)

 

社会学の理論でとく現代のしくみ

社会学の理論でとく現代のしくみ

 

現代のしくみを「謎とき」したいモティーフでつらぬかれた論集。人々が日常興味をもったり、疑問をいだいている社会現象-町内会、新興宗教、選挙、家族らしさ、などなど17の事柄を理論社会学の眼でとらえて、その根源にせまっている。

Ⅰ  わたしとあなた
第1章  登校拒否――誰が「病気」を「治す」のか; 石川 洋明
第2章  家族らしさ――なぜ家庭内離婚は「離婚」なのか; 坂本 佳鶴恵
第3章  私の構成――他者と私はどんなネットワークをつくっているか; 木村 洋二

Ⅱ  伝統と近代のはざま
第4章  結婚式――なぜ披露宴はハデハデか; 志田 基与師
第5章  町内会――なぜ全戸加入が原則なのか; 玉野 和志

Ⅲ  彼岸をみつめる
第6章  新新宗教――なぜ若者は宗教へ走るのか; 芳賀 学
第7章  死の位相――信仰は医療に優越するか; 市野川 容孝

Ⅳ  組織のなかのわれわれ
第8章  組織アイデンティティ――帰属意識はどう変わってきているか; 山田 真茂留
第9章  組織の世界――公式組織とは何か; 奥山 敏雄

Ⅴ  新しさという環境
第10章 都市文化――なぜ都市はつねに「新しい」のか; 松本 康
第11章 自己表現――近代的表現様式はいかに変貌したか; 桜井 洋
第12章 情報化――情報革命は何を生むか; 川崎 賢一

Ⅵ  誰が社会の主人か
第13章 選挙――勝ち負けを決めるのは何か; 宮野勝
第14章 社会紛争――なぜ原子力をめぐる合意形成は困難か; 長谷川 公一

Ⅶ  世界はどこへ向かっているのか
第15章 権力――何が東欧改革を可能にしたか; 宮台 真司
第16章 近代の行方――資本主義が近代を変容させるとは; 正村 俊之
第17章 女性史と近代――フェミニズムはどうとらえてきたか; 上野 千鶴子

 

谷川健司, 王向華, 呉咏梅編著『越境するポピュラーカルチャー-リコウランからタッキーまで』(2009)

 

越境するポピュラーカルチャー―リコウランからタッキーまで (青弓社ライブラリー)

越境するポピュラーカルチャー―リコウランからタッキーまで (青弓社ライブラリー)

 

東アジアという空間的な枠組みを設定したとき、ポピュラーカルチャーはジオグラフィックなそれぞれの共同体のなかでどのように受容されて変質し、記号化され共有されているのだろうか―。音楽・マンガ・テレビドラマなどのコンテンツに象徴される文化やそれを通して共有できる価値観が国家の枠組みを通り抜けてさまざまな形で「流用」され楽しまれている各国の実態を描き出す。韓国・台湾・中国では日本のポピュラーカルチャーをどう受け止めて刷新してきたのか、を丁寧に分析した論考集。

第1章 李香蘭神話の再生産と持続性
第2章 失われた声を探って―軍事政権期における韓国の純情漫画作家たちの抵抗と権利付与
第3章 日劇のように優雅に、韓劇のように温かく―中国における日本と韓国テレビドラマの受容
第4章 滝沢秀明香港人ファンに関する人類学的研究
第5章 韓国大衆音楽に及んだ日本の影響―一九四五年以前と以後の差
第6章 台湾におけるカバー曲の変容
第7章 日本のドラマと香港の社会

 

赤川学著『社会問題の社会学』(2012)

 

社会問題の社会学 (現代社会学ライブラリー9)

社会問題の社会学 (現代社会学ライブラリー9)

 

 貧困や格差、雇用、医療・年金・介護、少子化から差別、教育、環境など、社会問題は、社会のなかでひろがりをもち、社会学全体のテーマと重なり合う。わたしたちが生きている社会についての考察を深める手がかりとなる。

第1章 社会問題をいかに研究したらよいのか
――構築主義にいたるまで
1.社会問題とは
2.マートンの社会問題論 
3.ラベリング理論
4.構築主義
5.構築主義の経験的プログラムに向けて

第2章 構築主義を再構築する
――構築の存在論と正義論をこえて
1.構築主義存在論と認識論
2.構築主義は「日常世界の外部に立つ」視点を確保するための戦略か? 
3.社会問題の構築主義における経験的研究のプログラム
4.正義論をこえて――制度のプロセス論へ

第3章 社会問題の自然史モデル
1.構築主義を実質化する方法としての自然史モデル
2.クレイム申し立て活動
3.なぜ統計はウソをつくのか
4.メディア報道
5.大衆の反応
6.政策形成
7.社会問題ワーク
8.政策の影響

第4章 社会問題のレトリック分析
1.経験的研究のカギになるレトリック分析
2.ジョエル・ベストによる「クレイムのレトリック」
(1)前提 Grounds
(2)論拠 Warrants
(3)結論 Conclusion
3.イバラとキツセによる、レトリックのイディオム論
4.中河伸俊による有害コミック問題のレトリック分析
(1)喪失のレトリック
(2)権利のレトリック
(3)危険のレトリック
(4)没理性のレトリック
(5)災厄のレトリック
5.対抗レトリック
(1)自然現象化
(2)対策にかかるコスト
(3)無能力の表明
(4)パースペクティブ
(5)戦術への批判
(6)パタン解体
(7)逸話語り
(8)非誠実の対抗レトリック
(9)ヒステリアの対抗レトリック
6.レトリック分析の発展にむけて

第5章 「非実在青少年」規制問題の展開
――社会問題のサイクル
1.社会問題のサイクル
2.有害コミック問題から「非実在青少年」規制問題へ
(1)東京都の内部での政策形成
(2)大衆の反応としてのパブリックコメント
(3)関連諸団体によるクレイム申し立て
(4)答申素案から改正案に
(5)条例改正案の議会への堤出
(6)ウェブ上での大衆の反応
(7)メディア報道
(8)漫画家集団が立ち上がる
(9)議会での審議はじまる
(10)議会閉会中の動き
(11)反対運動が頂点を迎える
(12)参考人招致と総務委員会での審議
(13)利益団体からのクレイム申し立て
(14)一般の人びとからの大衆の反応
(15)条例改正案の否決
3.自然史モデルからみる問題構築のプロセス
4.自然史モデルの修正

第5章 社会問題の経路依存性
1.レトリック分析の応用
2.前提
「コップ半分の水」問題
児童ポルノ有害図書は性犯罪の原因となるか
3.論拠 Warrants
論拠の共有
論点絞込みのパラドクス
相手方クレイムの逆用
4.結論 Conclusions
5.社会問題の経路依存性

あとがき

 

ナタリー・ゼーモン・デーヴィス著, 成瀬駒男訳『帰ってきたマルタン・ゲール―16世紀フランスのにせ亭主騒』(1983=85→93)

帰ってきたマルタン・ゲール―16世紀フランスのにせ亭主騒動 (平凡社ライブラリー)

帰ってきたマルタン・ゲール―16世紀フランスのにせ亭主騒動 (平凡社ライブラリー)

妻子を残して失踪したが、八年後、突然姿を現した。だが彼の正体は…。奇妙な事件をもとに、当時の名もなき男女の〈歴史〉を、資料から得た知識と独自な想像力、証拠と可能性を交錯させつつ鮮やかに描きだす。

日本語版へのまえがき
序文
1 アンダユからアルティガへ
2 欲求不満の農民
3 ベルトランド・ド・ロールの貞操
4 アルノ・デュ・ティルのいくつかの顔
5 手作りの結婚
6 仲たがい
7 リューでの裁判
8 トゥールーズでの裁判
9 マルタン・ゲールの帰還
10 物語作家
11 驚倒すべき物語、悲劇的な物語
12 足の不自由な人について
結び
補遺 判決文
訳者あとがき
平凡社ライブラリー版 訳者あとがき
解説 証拠と可能性 カルロ・ギンズブルグ/上村忠男訳
図版提供一覧
マルタン・ゲールに関する著述の主要書誌

20, 26 プラッター『放浪学生プラッターの手記』

放浪学生プラッターの手記―スイスのルネサンス人

放浪学生プラッターの手記―スイスのルネサンス人

22, 26 ギンズブルグ『チーズとうじ虫
チーズとうじ虫―― 16世紀の一粉挽屋の世界像 (始まりの本)

チーズとうじ虫―― 16世紀の一粉挽屋の世界像 (始まりの本)

稲葉陽二著『企業不祥事はなぜ起きるのかーソーシャル・キャピタルから読み解く組織風土』(2017)

三菱自工リコール隠し東芝の不正会計など、企業の存続をゆるがす不祥事が続発している。なぜこのような不祥事が起こるのか。東証一部上場企業を分析し「不祥事を起こしやすい会社」をモデル化した著者は、トップの暴走とそれを止められない社内風土=企業内のソーシャル・キャピタルのあり方に原因があるという。「強いリーダーシップ」や「各部門のサイロ化」が危ない等、意外な知見も。あなたの会社は大丈夫?

序章 企業風土とはなにか
第1章 経営者への規律づけのしくみ
第2章 企業不祥事とはなにか
第3章 企業不祥事が生じる背景
第4章 企業統治のどこに問題があるのか―社会関係資本から考える
第5章 ケーススタディから不祥事を考える
第6章 企業内社会関係資本と不祥事は密接にかかわっている
第7章 不祥事を未然に防ぐためには
第8章 働きやすい会社のために