谷川嘉浩著『スマホ時代の哲学-失われた孤独をめぐる冒険』(2022)

 

「常時接続の世界」において、私たちはスマホから得られるわかりやすい刺激によって、自らを取り巻く不安や退屈、寂しさを埋めようとしている。

そうして情報の濁流に身を置きながら、私たちが夢中になっているのは果たして、世界か、他者か、それとも自分自身か。
そこで見えてくるのは、寂しさに振り回されて他者への関心を失い、自分の中に閉じこもる私たちの姿だ。

常時接続の世界で失われた〈孤独〉と向き合うために。
哲学という「未知の大地」をめぐる冒険を、ここから始めよう。

・現代人はインスタントで断片的な刺激に取り巻かれている
アテンションエコノミースマホが集中を奪っていく
・空いた時間をまた別のマルチタスクで埋めていないか?
・常時接続の世界における〈孤独〉と〈寂しさ〉の行方
・〈孤独〉の喪失――自分自身と過ごせない状態
スマホは感情理解を鈍らせる
・「モヤモヤ」を抱えておく能力――ネガティヴ・ケイパビリティ
自治の領域を持つ、孤独を楽しむ
・2500年分、問題解決の知見をインストールする
・「想像力を豊かにする」とは、想像力のレパートリーを増やすこと
・知り続けることの楽しさとしての哲学

はじめに
第1章 迷うためのフィールドガイド、あるいはゾンビ映画で死なない生き方
第2章 自分の頭で考えないための哲学——天才たちの問題解決を踏まえて考える力
第3章 常時接続で失われた〈孤独〉——スマホ時代の哲学
第4章 孤独と趣味のつくりかた——ネガティヴ・ケイパビリティがもたらす対話
第5章 ハイテンションと多忙で退屈を忘れようとする社会
第6章 快楽的なダルさの裂け目から見える退屈は、自分を変えるシグナル
おわりに
あとがき

119 タークル『つながっているのに孤独――人生を豊かにするはずのテクノロジーの正体』

135 タークル『一緒にいてもスマホSNSとFTF―』

138 ベイル『ソーシャルメディア・プリズム――SNSはなぜヒトを過激にするのか?』

176 横地『創造するエキスパートたち: アーティストと創作ビジョン』

186「ネガティブ・ケイパビリティは、「結論づけず、モヤモヤした状態で留めておく能力」」

190 ウィルフレッド・ビオン、精神分析学の一派である対象関係論の専門家は、ネガティブ・ケイパビリティ精神分析家に必要な能力として読み替えた。「砲撃の下で考える」世界大戦に従軍した兵士のPTSD研究。戦場では、いつどこから攻撃されるかわからない。状況の把握は不可能。兵士のように、精神分析家は、「砲撃の下」で考え続ける役割を負っている。

→帚木、小川『ケアの論理とエンパワメント』

191 帚木『ネガティブ・ケイパビリティ 答えの出ない事態に耐える力』

224 ブリンクマン『地に足をつけて生きろ! 加速文化の重圧に対抗する7つの方法』

246 フィッシャー「抑鬱的快楽 depressive hedonia)「「快楽的なダルさ」に浸り、「やわらかい昏睡状態」になることで得られる安楽によって気分が落ち込まないようにする心のあり方」

264 マラブー「隔離から隔離へールソー、ロビンソン・クルーソー、『私』」西山『いま言葉で息をするために: ウイルス時代の人文知』

282 戸田『今からはじめる哲学入門』

286「ジョン・キーツは「ロマン主義」を代表する詩人です」「そのスタンスの一つに「汲み尽くせなさ」に対する感受性があります。それは、何かを手に入れたと思っても、そこからこぼれ落ちていくものがあることを知っていることです。言い換えると、「これだ」と思って把握したものがもっと深さを持っていて、どこまでも知性を超えていくはずだという洞察です」

290 →道徳的完成主義につながる、徳倫理的なエリート主義につながる可能性