ノエル・キャロル著,高田敦史訳『ホラーの哲学ーフィクションと感情をめぐるパラドックス』(1990=2022)

 

なぜ、「怖い」のに「見たい」のか?
なぜ、存在しないものを怖がるのか?

ここから、ホラーの哲学は始まった。
ホラーの哲学を初めて理論化した革新的著作が、待望の邦訳!


分析美学の第一人者であり、映画・大衆芸術(マス・アート)研究の分野でも活躍するノエル・キャロルによる、ホラーの哲学の初めての体系的著作。

フランケンシュタイン』『ジキル博士とハイド氏』『ドラキュラ』『エクソシスト』『オーメン』『エイリアン』、さらにはH・P・ラヴクラフトスティーヴン・キング、クライヴ・バーカー、シャーリイ・ジャクスンなど…… 
本書では、古典的名作から現代のヒット作品、さらには無名のB級作品まで、膨大な作品群を縦横無尽に取り上げながら、ホラーとは何か、その本質や定義、物語構造とプロット分析、ホラーの魅力、さらにはホラーモンスターの作り方についてなどを論じる。
そして、哲学的な観点から、存在しないとわかっているものをなぜ怖がってしまうのか(フィクションのパラドックス)、また、恐怖を与えるホラー作品をなぜわざわざ求めるのか(ホラーのパラドックス)について考察する。

吸血鬼、ゾンビ、人狼、悪魔憑きの子ども、人造人間、スペースモンスター、幽霊、その他の名もなき怪物たちが、なぜわたしたちの心を摑んで離さないのか。 フィクションの哲学、感情の哲学、ポピュラーカルチャー批評を駆使して、その不思議と魅力の解明に挑む!


本書が置かれた文脈/ホラージャンル摘要/ホラーの哲学とは?

第1章 ホラーの本質

ホラーの定義
 まえおき
 感情の構造について
 アートホラーを定義する
 アートホラーの定義に対するさらなる反論と反例
幻想の生物学とホラーイメージの構造
要約と結論

第2章 形而上学とホラー、あるいはフィクションとの関わり

フィクションを怖がる──そのパラドックスとその解決
 フィクション錯覚説
 フィクション反応のフリ説
 フィクションへの感情反応の思考説
 要約
キャラクター同一化は必要か

第3章 ホラーのプロット

ホラープロットのいくつかの特徴
 複合的発見型プロット
 バリエーション
 越境者型プロットおよびその他の組み合わせ
 典型的ホラー物語が与えるもの
ホラーとサスペンス
 疑問による物語法/サスペンスの構造
幻想

第4章 なぜホラーを求めるのか?

ホラーのパラドックス
 宇宙的畏怖、宗教的経験、ホラー
 ホラーの精神分析
 ホラーの魅力の一般理論と普遍理論
ホラーとイデオロギー
ホラーの現在

訳者解説