中室牧子, 津川友介著『「原因と結果」の経済学 ーデータから真実を見抜く思考法』(2017)

 

「メタボ健診を受けていれば健康になれる」「テレビを見せると子どもの学力が下がる」「偏差値の高い大学に行けば収入は上がる」はなぜ間違いなのか? 世界中の経済学者がこぞって用いる最新手法「因果推論」を数式なしで徹底的にわかりやすく解説。世のなかにあふれる「根拠のない通説」にだまされなくなる!

はじめに

メタボ健診を受けていれば長生きできるのか
テレビを見せると子どもの学力は下がるのか
偏差値の高い大学へ行けば収入は上がるのか
「因果推論」を理解すれば思い込みから自由になれる

第1章 根拠のない通説にだまされないために

    「因果推論」の根底にある考えかた

「因果関係」「相関関係」とは何か
因果関係を確認する3つのチェックポイント
1.「まったくの偶然」ではないか
2.「第3の変数」は存在していないか
3.「逆の因果関係」は存在していないか
因果関係を証明するのに必要な「反事実」
タイムマシンがないと反事実は作れない?
反事実を「もっともらしい値」で穴埋めする
「比較可能」なグループでないと穴埋めはできない
反事実を正しく想像できないと根拠のない通説にだまされる?

COLUMN1 チョコレートの消費量が増えるとノーベル賞受賞者が増える?

第2章 メタボ健診を受けていれば長生きできるのか

    因果推論の理想形「ランダム化比較試験」

「実験」を使えば因果関係を証明できる
なぜランダムに割り付けないとダメなのか
「メタボ健診」と「長生き」のあいだに因果関係はあるか
「統計的に有意」とは
健診を受けていても長生きにはつながらない
1200億円の税金が投じられたメタボ健診
「医療費の自己負担割合」と「健康」のあいだに因果関係はあるか
ランド医療保険実験の結果
自己負担割合を高くしても、貧困層以外の健康状態は変わらない

COLUMN2 複数の研究をまとめる「メタアナリシス」

第3章 男性医師は女性医師より優れているのか

    たまたま起きた実験のような状況を利用する「自然実験」

手元にあるデータを用いて、実験のような状況を再現する
「医師の性別」と「患者の死亡率」のあいだに因果関係はあるか
女性医師が担当すると患者の死亡率が低くなる
「出生時体重」と「健康」のあいだに因果関係はあるか
出生時体重が重い赤ちゃんは健康状態がよい

COLUMN3 受動喫煙は心臓病のリスクを高めるのか

第4章 認可保育所を増やせば母親は就業するのか

    「トレンド」を取り除く「差の差分析」

実験をまねる「擬似実験」
前後⽐較は意味がない
前後⽐較が使えない2つの理由
昨年の売上が「反事実」ならば前後⽐較は有効だが……
前後⽐較デザインを改良した「差の差分析」
差の差分析が成立するための2つの前提条件
認可保育所の数」と「母親の就業」のあいだに因果関係はあるか
認可保育所を増やしても母親の就業率は上がらない
最低賃金」と「雇用」のあいだに因果関係はあるか
最低賃⾦を上げても雇用は減らない

COLUMN4 「早く寝ないとお化けが出るよ」は正しい教育法か

第5章 テレビを見せると子どもの学力は下がるのか

    第3の変数を利用する「操作変数法」

新聞の広告料割引キャンペーンを利用する
操作変数法が成⽴するための2つの前提条件
「テレビの視聴」と「学力」のあいだに因果関係はあるか
テレビを見ると偏差値が上がる
「母親の学歴」と「子どもの健康」のあいだに因果関係はあるか
母親が大卒だと生まれてくる子どもの健康状態がよい

COLUMN5 女性管理職を増やすと企業は成長するのか

第6章 勉強ができる友人と付き合うと学力は上がるのか

    「ジャンプ」に注⽬する「回帰不連続デザイン」

「49人の店舗」と「50人の店舗」の違いを利用する
回帰不連続デザインが成⽴するための前提条件
「友人の学力」と「自分の学力」のあいだに因果関係はあるか
学力の高い友人に囲まれても自分の学力は上がらない
「高齢者の医療費の自己負担割合」と「死亡率」のあいだに因果関係はあるか
高齢者の医療費の自己負担割合が増えても死亡率は変わらない

COLUMN6 「ホルモン補充療法」の罠

第7章 偏差値の高い大学に行けば収入は上がるのか

    似た者同⼠の組み合わせを作る「マッチング法」

似かよった店舗を探しだす
複数の共変量をひとまとめにする「プロペンシティ・スコア・マッチング」
プロペンシティ・スコア・マッチングが成立するための前提条件
「大学の偏差値」と「収入」のあいだに因果関係はあるか
偏差値の高い大学に行っても収入は上がらない

COLUMN7 ビジネス版ランダム化⽐較試験「A/Bテスト」

第8章 ありもののデータを分析しやすい「回帰分析」

因果関係の評価に適さないデータしかないときは……
データを表現する「最適な線」を引く
交絡因子の影響を取り除いてくれる「重回帰分析」

COLUMN8 因果推論はどのように発展してきたか

補論① 分析の「妥当性」と「限界」を知る

補論② 因果推論の5ステップ


おわりに


索引


参考文献


因果推論をもっと知りたい人のためのブックガイド