永田大輔「「代弁者」としてのオタク語り」『ソシオロゴス』2015年, 39号

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本稿は、オタクをめぐる言論の中でも「当事者として代弁する」という特異な話法をとる言論に着目 する。通常であれば、代弁者というのは必ずしも当事者性と関連する概念であるとはいえない。しかし、 むしろその短絡が起こることによって何が起こっているのかを本稿では明らかにする。ここでいう代弁者としての言論の定義として本稿が着目するのは、(1)誰かの代わりに何かを言うと いう形式をとり、(2)その権利を持つのは当事者に近いものという性質を持ち、(3)その際に代弁され ている集団の側こそが重要になるというものである。こうした言論の条件を充たし、かつ類似した言説であるように見える大塚英志竹熊健太郎の二人の 言論を追尾し、その異同を追う。そして両者のようなオタク語りの特異な形式がとられることで、それ ぞれ何が達成されているのかを本稿では明らかにする。

七邊信重,2005,「『純粋な関係性』と『自閉」――『同人界』におけるオタクの活動の分析から』『ソシオロゴス』(29): 232-48.