牧野智和「オフィスデザインにおける人間・非人間の配置 —「クリエイティブなオフィス」の組み立てとその系譜—」『ソシオロゴス』2018年, 42号

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近年注目を集める「クリエイティブなオフィス」は、知的創造性に関連する活動(アクティビティ)を誘発する多種多様な仕掛けがそこかしこに埋め込まれ、そのような環境と知的創造に向かう組織のあり方を重ね合わせようとする異種混交的なデザインの対象となっている。本論文ではいかにしてそのようなオフィスの様態が立ち現れたのか、オフィスデザインの変遷について分析を行った。1950年代から1960年代にかけてのオフィスは能率的配置のなかに人とモノをともに埋め込もうとしていたが、1980年代から1990年代にかけての「ニューオフィス」の台頭期においては知的創造性が重視されるようになり、執務室を離れた支援空間でのリフレッシュがそのポイントとされた。2000年代以降、冒頭で述べたような環境デザインが支配的なスタイルになるが、このようなオフィスにおいて知的創造性が実際に高められたかどうかという点は多くの場合ブラックボックスになっている。

 セネット, Sennett, Richard, 2008, The Craftsman, Yale University Press.(=2016,高橋勇夫訳『クラフツマン——作ることは考えることである』筑摩書房.)