若林幹夫, 立岩真也, 佐藤俊樹編著『社会が現れるとき』(2018)

 

社会が現れるとき

社会が現れるとき

 

社会がごく自然に存在してしまうことへの疑いと驚き.社会の現れはどのように経験され,思考され,人びとの行為や関係と結びついてゆくのか.そこに立ち止まることから始まる社会学的な問いは,多様な研究対象や分析方法へとひろがる.研究の最前線を示す新しい社会学論集.

はじめに――「社会が現れるとき」と「社会学(のようなもの)が現れるとき」

1章「都市」をあることにする(若林幹夫)
1 「都市」をめぐる三つの言葉
2 「都市」という概念
3 「魚」はどう存在するか(あるいは、存在しないか)
4 「都市」はどのように社会的か
5 「大都市」――大きさの社会性
6  同時代的問題としての「都市」
7 「都市」をあることにする

2章 空間の自由/空間の桎梏――都市空間への複数のリアリティ(西野淑美)
1  都市の空間と社会
2 「地域」という括りのレリヴァンス
3 「都市生活」が反転するとき
4 「地域移動」をめぐるリアリティ
5 「社会」の現れ方の非均質性

3章 近代日本における地位達成と地域の関係――戦前期生まれ著名人の中等教育歴が語るもの(中村牧子)
1  問い――「著名人」はどこで生まれたか
2  なぜ中等教育に注目するのか
3  中学校教育の地域間格差
4  エリート著名人を生み出す教育の仕組み
5  エリートの出自と活躍領域の分化
6  非エリート著名人を生み出す教育の仕組み
7  戦前期日本社会の「階層構造」のすがた

4章「商売の街」の形成と継承――(五十嵐 泰正)
1  はじめに――アメ横というアポリア
2  アメ横における「歴史の不在」
3 「アメ横商法」とエスニシティをめぐる視線の交錯
4 変わり続ける「商売の街」
5 「商売の街」を継ぐということ

5章 誰が自治体再編を決めるのか――「平成の大合併」における住民投票の再検討(砂原庸介
1  はじめに
2 「平成の大合併」における住民投票の位置づけ
3  住民投票の分析
4  おわりに

6章「素人」の笑いとはなにか――戦後日本社会とテレビが交わるところ(太田省一
1  はじめに
2  テレビ東京から見る戦後
3 「素人」という鉱脈
4 社会的存在としての「素人」
5  おわりに

7章 でも、社会学をしている――(立岩 真也)
1  それでも社会学をしていると思う1
2  そう思う2――社会の分かれ目について
3  社会的、はパスした
4  もっとよくできた話も結局パスした
5 代わりに
6  ポスト、もパスした
7 戻って、素朴唯物論は使えるかもしれない

8章 社会が溶ける?――日韓における少子高齢化の日常化とジレンマ(相馬直子)
1  少子高齢化の日常化
2  少子高齢化社会があらわれるとき――少子高齢化社会におけるケアをめぐる問い
3 日韓社会の対応
4 「よさ」のコンセンサスなきジレンマ
5  二重化される課題と新たなケアワークの発見――ダブルケアがあらわれる瞬間
6  おわりに

9章 境界としての「思想」――歴史社会学的試論(遠藤知巳)
1 「思想」――弱化と分散
2  思想研究は何をしているか
3 「社会思想」と社会学――隠れた相互依存
4 「思想」の言説史へ
5 一九世紀西欧(1)――「思想」の実体化と発展史観
6 一九世紀西欧(2)「真理」の分立と潜在的相対化
7  日本社会と「思想」

10章 想像のネットワーク――シベリア・極東ユダヤ人におけるアイデンティティアウトソーシング鶴見太郎
1  共同体のアナロジーを超えて
2  相補的ハイブリッド性
3  シベリアのシオニスト
4  ハルビンシオニズム
5  むすび

11章 映画に社会が現れるとき――「ステラ・ダラス』(一九三七)の言語ゲーム(中村 秀之)
1  映画の解釈という言語ゲーム
2  フェミニズム映画理論の「女性観客」
3  スタンリー・カヴェルの「普通の人間」
4  〈階級の顕な傷〉と映画の身体

12章 自己産出系のセマンティクス――あるいは沈黙論の新たな試み(佐藤俊樹
1  自己産出系論の公理系
2  理解社会学の二つのモデル
3  自己産出系の syntax との対応
4  制度の挙動をとらえる
5 「行為の意味を理解する」ことの定式化
6  ベイズ統計学の枠組み
7 行為の意味を推定する
8  解釈度を変数としてあつかう
9 自己産出系と解釈度
10  意味を「分布」としてあつかう
11 沈黙を測る

社会は現れる――一つの解題として(佐藤俊樹