- 作者: 勝田有恒,山内進,森征一
- 出版社/メーカー: ミネルヴァ書房
- 発売日: 2004/10/01
- メディア: 単行本
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最新の研究成果をふんだんに織り込みながらも、豊富な史料・コラム・図版の収録によって初学者にも分かりやすい工夫を凝らし、ヨーロッパ法の歴史的発展過程をたんねんに叙述した、本邦初の概説書。
プロローグ ヨーロッパ法の時空
Ⅰ ヨーロッパ古代の法と社会
第1章 ローマ市民法の世界
第2章 古典期ローマ法曹と法学
第3章 古ゲルマンの法と社会
Ⅱ ヨーロッパ中世の法と社会(1)―フランク王国の時代
第4章 部族法典とユスティニアヌス法典
第5章フランク王国の法と国制
Ⅱ ヨーロッパ中世の法と社会(2)―― 封建社会
第6章 封建社会
第7章 中世法の理念と現実
第8章 ヨーロッパ法システムへの転轍
Ⅱ ヨーロッパ中世の法と社会(3)―― 近世の胎動
第9章 ボローニャ大学とローマ法のルネサンス
第10章 中世ローマ法学と条例理論
第11章 カノン法
Ⅲ ヨーロッパ近世の法と社会(1)―― ローマ法の継受
第12章 学識法曹とローマ法継受
第13章 帝室裁判所と宗派対立
第14章 糾問訴訟と魔女裁判
第15章 ローマ法の相対化
Ⅲ ヨーロッパ近世の法と社会(2)―― 近代の胎動
第16章 身分制議会と絶対主義国家
第17章 パンデクテンの現代的慣用
第18章 自然法論の展開
第19章 啓蒙主義と法典編纂
Ⅳ ヨーロッパ近・現代の法と社会
第20章 歴史法学派
第21章 パンデクテン法学と私法実証主義
第22章 近代公法学の誕生
第23章 近代法システムの完成
第24章 近代法システムの揺らぎ
エピローグ 19世紀ヨーロッパ法の継受から20世紀アメリカ法の受容へ
西洋法制史の基本文献
年 表
写真・図版出典一覧
あとがき
人名索引
事項索引
18 ホルテンシウス法以降、パトリキとプレブスの平等化がもたらされたというよりも、パトリキと有力プレブスによって新たな支配階層が形成されたとみるのが適切。平民会の民会昇格は、下級政務官(地区を単位として編成されたトリブス会が選出)に限られ、執政官・上級政務官・法務官など主要なポストは、パトリキによって構成されるケントゥリア会によって選出されていた。
22 法務官と審判人(indux)の分業体制
30「このように考えるとき、古典期ローマ法学の繁栄は、19世紀遠いつのパンデクテン法学の繁栄と類似した側面を持つことが分かる。すなわち、権威主義的で抑圧的な政治体制のもとで、国家と社会が明確に分離されるとともに、ある種の安全弁として、比較的広範な自由が私法の領域に確保されるという構造である」
31 古典期前期 サビヌス派とプロクルス派
34「(古典期後期を)代表する法学者としては、サビヌス派ではパウルス、プロクルス派ではパピニアヌス、ウルピアヌス及びモデスティヌスの名前を挙げることができる。パピニアヌスは、古典期ローマのもっとも偉大な法学者とされる」
159「ローマ法の継受とは、中世から近世にかけて生じた現象で、ローマ法の一般法化を意味する。一般法化とは、イングランドを例外として、ヨーロッパ各地の法廷であたかもヨーロッパ普通法として、ローマ法が地域固有法を補充する一般法の機能を果すようになった、ということである」
233「シュトリュクの著書が出版された17世紀末という時期を考えると、「パンデクテンの現代的慣用」は、「ローマ法の実務的継受」の最終段階の現象という側面を有したといえよう」土着法と普通法の融合
246 古代ギリシャ的な永遠不変の法規範としての自然法から、近世の世俗的自然法への転換「キリスト教であれ異教徒であれ、人間であるがゆえに普遍的な人類社会に帰属するのであり、普遍的な人類共通法(万民法)によって何人も基本的な権利を侵害されない」
245 17世紀自然法論、パンデクテンの現代的慣用と相互に影響、ハレ大学
248 グロティウス 1583-1645、ホッブズ、ザムエル・プーフェンドルフ, 自然法の神学からの解放
274「自ら著名な法学者であったティボーが批判の矛先を向けたのが、普通法である。数万の項目からなる「市民法大全」も、これを当世の事情に合わせて適用する普通法学も、一般市民には遥か遠い存在であった。ティボーはこうした現状に対し、簡潔にまとめられた法典こそが、学問と実務の結びつきを回復する鍵になると考えた」
275「サヴィニーにとって法とは、言語や習俗と同様に、民族とともに生成発展するものである。法はまず習俗そして「民族の共通の確信」によって生まれ、いわば慣習法として存在するが、次第に法学によって洗練されていく。したがって、法は立法者の意思によって生じるのではない」歴史法学派→普遍的な理性の法を前提とする自然法論と衝突
276「ティボーにしてもサヴィニーにしても、多感な少年期にフランス革命を同時代体験した世代であり、法学者としてはフランス民法典の存在を無視できない世代であった。革新派ティボーと保守派サヴィニーとで導き出した結論は異なるものの、法典論争の共通の前提としては、彼ら同時代人の強烈なフランス体験があったのである」「ドイツではフランス革命とほぼ並行してカントの哲学革命が起こっている。サヴィニーの目的は、いわばカントとフランス革命に底流として流れる社会革新への動きを、立法ではなく法学によって実現することにあった」
277「さて、現実には法典編纂は実現しなかったが、これは法典論争の影響というよりは、むしろ当時の政治状況から頓挫したといったほうが正しい。ドイツ同盟の無力さもあったが、そもそも当時のドイツで統一といえば自由主義の立場であり、むしろ復古主義のメッテルニヒ体制は、法典編纂に消極的だった。法典論争の歴史的意義は、したがって現実政治への影響ではなく、歴史法学派という19世紀最大の法学派を生み出した点にある。今日の目からティボーとサヴィニー両者の論点を見ると、一方でティボーの法典論争への信望は、完全な法典が学問と実務の橋渡しをするという、啓蒙的自然法論の過信に基づいたものであり、楽観主義にすぎた点は否めない。これに対し、「法は立法者の恣意により生ずるものではない」というサヴィニーの反発は、近代国家万能主義に対する警鐘と理解することができる。他方で、サヴィニーが法の発展を法学に託すことにより、表向きは民族の法と言いながら、結局はエリート層の法独占を促進したという批判がある。ちなみに、徹底して対立したように見えるティボーとサヴィニーだが、最終的にドイツの法統一を視野に入れていた点では共通していた。この点では、むしろ各国別の法典で足れりとするゲンナーなどの主張との相違に注目する見方もある」
279 ロマニステン(サヴィニー、プフタ)とゲルマニステン(イェーリング、ヴィントシャフト)「法曹法による上からの近代化を進める官僚主義者ロマニステン」と「民衆法による下からの変革を求める自由主義者ゲルマニステン」個人単位・自由本位のローマ法が、19世紀の近代法原理と市民社会感覚に適合的であwり、自由競争を前提にした資本主義経済の発展に適していた。ゲルマニステンは体系化する法源に乏しかった。などの理由によりロマニステン優位に。
289「ところが、『ローマ法の精神』第3部(1865年)になると、イェーリングは生活が概念のためにあるのではなく、「生活のゆえに」概念があることを強調し、さらに権利を「保護された利益」と定義する。『ローマ法の精神』を未完に終えたまま、彼は法がいかなる目的のために存在するのかを詳論するために『法における目的』を著し、それが時代や状況によって変化する相対的なものであることを強調するに至る」目的法学
290「イェーリングについては、単純に自由法論者の代表であるとか、概念法学から社会法学へと思想を転換させたと断じるのでなく、パンデクテン法学と自由法論、利益法学、法社会学の橋渡し役として、独特の位置を与えるのが適当であろう」
297「公法額にとって重要なのは、成文憲法の成立により、従来は政治学の領域にあった国家額が分裂し、その一部が憲法学(国法学)として独立したことである」
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