大尾侑子「「反‐教養主義」的エリートとしての好事家」『ソシオロゴス』2013年37 号

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本稿は、昭和初期の会員制特殊風俗雑誌『変態・資料』の分析を行い、①「好事家」を自称した戦前期のエリート層に「反−教養主義」的エートスが観察しうること、②そのエートスが「教養主義」の言説空間と会員雑誌という近代メディアによって担保されたことを明らかにした。彼らは教養主義的な価値体系を理解した上で、あえて「悪趣味 bad taste」なものを価値付け、知的対象に読み替えるという好事家特有の「領有 appropriation」を行った。そこで重宝した概念が〈変態〉である。この実践は、純粋文化に同化することで大衆から卓越化しようと企てた学歴エリート層に対する階級内卓越化のゲームであったと共に、「〈領有〉の共同体」としてコミュニティ意識を芽生えさせ、「会」の凝集性を強化するという帰結も招いた。

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