D. ウェイド・ハンズ著, 高見典和, 原谷直樹, 若田部昌澄訳『ルールなき省察-経済学方法論と現代科学論』(2001=2018)

 

ルールなき省察――経済学方法論と現代科学論

ルールなき省察――経済学方法論と現代科学論

 

経済学の歴史、方法論、哲学の21世紀のスタンダード。長年論争の続いた経済学方法論の領域を、科学哲学・科学論の影響を中心に、広範にサーヴェイした世界的標準テキスト。

日本語版序文
序文

第1章 序論
 1.1 経済学方法論
 1.2 現代の科学論
 1.3 主題を変更する
 1.4 読者への案内

第2章 経済学の方法論的伝統
 2.1 経済学方法論のミル的伝統
 2.2 他の実証主義的見解

第3章 科学哲学における「定説」の崩壊
 3.1 科学哲学における「定説」
 3.2 「定説」への攻撃
 3.3 第一戦目の応答
 3.4 自然主義的転回への舞台設定

第4章 自然主義的転回
 4.1 認識論を自然化する
 4.2 心理学と,知識に対する認知的アプローチ
 4.3 ダーウィンからの励まし:進化論的認識論
 4.4 消去的唯物論心の哲学

第5章 社会学的転回
 5.1 社会と科学知識
 5.2 科学知識の社会学
 5.3 自然,社会,SSK,経済学

第6章 プラグマティズム,対話,立場
 6.1 プラグマティズム的転回
 6.2 ネオ・プラグマティズムと対話的転回
 6.3 フェミニズム認識論と経済学

第7章 経済学方法論の近年の発展
 7.1 ポパーの伝統
 7.2 ミルの伝統
 7.3 実在論のテーマ
 7.4 認知的および意味論的テーマ

第8章 経済学的転回
 8.1 現代科学論における経済学的転回
 8.2 科学の経済学
 8.3 科学知識の経済学(ESK)
 8.4 経済学的転回に関する結論

第9章 結論
 9.1 新しい経済学方法論から得られる教訓
 9.2 関連するいくつかの懸念

 

木本玲一著『グローバリゼーションと音楽文化-日本のラップ・ミュージック』(2008)

 

グローバリゼーションと音楽文化―日本のラップ・ミュージック (双書 音楽文化の現在)

グローバリゼーションと音楽文化―日本のラップ・ミュージック (双書 音楽文化の現在)

 

アフリカ系アメリカ人というエスニック・マイノリティから誕生し、そのローカル性に強く規定された「ラップ」。この外来音楽文化は、どのようにして日本に流入・定着し、独自の市場と自律的価値をもつにいたったのか。「ラップ」の生産過程に着目し、グローバル化/ローカル化の過程で外来文化が独自文化に昇華されていく過程を克明に描く。

序章 なぜラップに注目するのか
 1 文化のグローバル化/ローカル化
 2 なぜラップに注目するのか
 3 日本のラップ
 4 ラップの生産
 5 本書の構成

第1章 ローカルなラップをいかにとらえるか
 1 「ゲットー」から
 2 ラップの日本への流入
 3 ポピュラー音楽としてのラップ──文化的真正性と商業性
 4 ローカルなラップの位置

第2章 ローカル化の欲望
 1 サウンド──「日本らしい」音への志向
 2 言語──日本語で「レペゼン」する
 3 <イデオロギー>──実践の意味づけ
 4 ローカル化の欲望の意味

第3章 ラップの自明化とローカルな実践──あるラップ・グループの音楽実践を事例として
 1 一九九〇年代後期以降
 2 グループ結成
 3 音楽的志向
 4 練習、レコーディング
 5 ライブ
 6 「本場」の弱化とローカルな実践

第4章 ラップ実践と人的ネットワーク──二つのグループの実践を事例として
 1 ラップ実践と人的ネットワーク
 2 風神
 3 キカイダー
 4 人的ネットワークとクラブ
 5 ローカルなラップを媒介する人的ネットワーク

第5章 ラップとレコード産業──レコード会社におけるラップの販売戦略を事例として
 1 レコード産業と日本のラップ
 2 ラップを手がける
 3 アーティストの選別
 4 専門誌、店頭における宣伝活動
 5 ストリート・プロモーション、ストリート・マーケティング
 6 ディストリビューション
 7 ローカルなラップ市場

第6章 ローカルなラップを媒介する企業活動──ラップ・イベントにおける企業スポンサーの事例から
 1 企業スポンサーという販促活動
 2 販促活動におけるヒップホップの位置
 3 イベントの選別
 4 イベント、ブレイクビーツにおけるスポンサー業務
 5 ローカルなラップ実践を媒介する企業活動

終章 ラップの自律化・自明化、そしてその先
 1 日本のラップにおける認識論的・実体論的ローカル性
 2 自律化・自明化という傾向──ロックのローカル化過程を補助線として
 3 「日本文化」は異種混淆的なのか
 4 自律化・自明化と支配的個別性
 5 グローバルな力学、新たなローカル化の契機

 

ロバート・ノジック著, 嶋津格訳『アナーキー・国家・ユートピア-国家の正当性とその限界』(1974=1998)

 

アナーキー・国家・ユートピア―国家の正当性とその限界

アナーキー・国家・ユートピア―国家の正当性とその限界

 

序…(i)

謝辞…(x)

第一部 自然状態の理論、または如何にして、実際に試みないで国家へと戻るか
第一章 なぜ自然状態の理論なのか…(3)
政治哲学…(4)
説明的な政治(国家)理論…(8)

第二章 自然状態(15)
数の保護協会…(18)
支配的保護協会…(23)
見えざる手説明…(27)
支配的保護協会は国家か?…(35)

第三章 道徳的制約と国家…(41)
最小国家と超最小国家…(41)
道徳的制約と道徳的目的…(43)
なぜ付随制約なのか…(47)
自由尊重主義的な制約…(52)
動物と制約…(56)
経験機械…(67)
道徳理論の非決定性…(72)
制約の基礎は何……(76)
個人主義無政府主義者アナーキスト)…(82)

第四章 禁止・賠償・リスク…(85)
独立人と支配的保護機関…(85)
禁止と賠償…(89)
なぜ禁止するのか…(91)
応報刑論と抑止刑論…(93)
交換利益の分割…(99)
恐怖と禁止…(103)
なぜ常に禁止しないのか…(111)
リスク…(114)
賠償原理…(121)
生産的取引…(131)

第五章 国家…(139)
正義の私的実行の襟止…(139)
「公正原理」…(142)
手続的権利…(151)
支配的保護機関馬いかに行動しうるか…(159)
事実上の独占…(170)
他者の保護…(174)
国家…(178)
国家についての見えざる手説明…(186)

第六章 国家擁護論の補足的検討…(189)
この過程を止めるべきか…(189)
先制攻撃…(198)
〔国家生成〕過程における行動…(205)
正当性…(210)
全員の有する処罰権…(216)
予防的規制…(223)

原註…(231)

第二部 最小国家を越えて?
第七章 配分的正義 (253)
その一…(255)
権原理論…(255)
歴史原理と結果状態原理…(260)
パタン化…(263)
いかにして自由がパタンを崩壊させるか…(271)
センの議論…(278)
再分配と所有権…(281)
ロックの獲得〔原始取得〕論…(292)
但し書き…(299)
その二…(306)
ロールズ理論…(306)
社会的協同…(307)
協同の条件と格差原理…(315)
原初状態と結果状態原理…(330)
マクロとミクロ…(340)
自然資産と恣意性…(353)
積極論…(358)
消極論…(370)
集団資産…(376)

第八章 平等、嫉妬、搾取、等…(383)
平等…(383)
機会の平等(388)
自尊心と嫉妬…(393)
有意義な労働…(405)
労働者による管理…(411)
マルクス主義的搾取…(416)
随意的交換…(429)
人間愛…(433)
自分に影響することに対する発言権…(438)
非中立的国家…(443)
再分配はいかに機能するか…(447)

第九章 大衆所有…(451)
整合性と平行事例…(452)
最小を越える国家の派生…(456)
仮説的歴史…(475)

第三部 ユートピア
第一〇章 ユートピアのための枠…(481)
モデル…(482)
我々の世界へのモデルの投影…(497)
枠…(501)
企画法と濾過法…(507)
ユートピアの共通基盤としての枠…(515)
コミュニティーと国家…(519)
変化する様々のコミュニティー…(524)
様々なコミュニティーの総体…(526)
ユートピアの手段と目的…(528)
ユートピアはいかに機能するか…(537)
ユートピア最小国家…(538)

原註…(541)

訳者あとがき…(559)

 

阿部彩著『子どもの貧困Ⅱ-解決策を考える』(2014)

 

子どもの貧困II――解決策を考える (岩波新書)

子どもの貧困II――解決策を考える (岩波新書)

 

2013年,「子どもの貧困対策法」が成立した.教育,医療,保育,生活.政策課題が多々ある中で,プライオリティは何か? 現金給付,現物給付,それぞれの利点と欠点は? 国内外の貧困研究のこれまでの知見と洞察を総動員して,政策の優先順位と子どもの貧困指標の考え方を整理する.社会政策論入門としても最適な一冊.

 はじめに

第1章 子どもの貧困の現状
 1 どれほどの子どもが貧困なのか
 2 貧困が子どもに及ぼす影響
 3 貧困の社会的コスト
 4 景気回復は貧困対策となり得るか

第2章 要因は何か
 1 連鎖の経路
 2 どの経路が重要なのか
 3 経路研究を政策につなげるために

第3章 政策を選択する
 1 政策の選択肢
 2 政策の効果を測る
 3 政策の収益性を見る
 4 日本への示唆

第4章 対象者を選定する
 1 普遍主義と選別主義
 2 的を絞る
 3 年齢を絞る
 4 タ-ゲティングの罠

第5章 現金給付を考える
 1 「現金給付 対 現物給付」論争
 2 現金給付の利点/現物給付の利点
 3 現金給付の現状
 4 現金給付の設計オプション

第6章 現物(サ-ビス)給付を考える
 1 子どもへの支援
 2 親への支援

第7章 教育と就労
 1 教育費の問題
 2 学力格差の縮小
 3 学校生活への包摂
 4 教育のセ-フティネットの強化
 5 教育から就労への移行支援
 6 子どもと接する大人たちへの教育・支援

終章 政策目標としての子どもの貧困削減
 1 子どもの貧困対策法
 2 子どもの貧困を測る
 3 優先順位
 4 さいごに
 
 あとがき
 主要引用・参考文献
 参考資料 子どもの貧困対策の推進に関する法律

 

阿部彩著『子どもの貧困-日本の不公平を考える』(2008)

 

子どもの貧困―日本の不公平を考える (岩波新書)

子どもの貧困―日本の不公平を考える (岩波新書)

 

健康、学力、そして将来…。大人になっても続く、人生のスタートラインにおける「不利」。OECD諸国の中で第二位という日本の貧困の現実を前に、子どもの貧困の定義、測定方法、そして、さまざまな「不利」と貧困の関係を、豊富なデータをもとに検証する。貧困の世代間連鎖を断つために本当に必要な「子ども対策」とは何か。

第1章 貧困世帯に育つということ
第2章 子どもの貧困を測る
第3章 だれのための政策か―政府の対策を検証する
第4章 追いつめられる母子世帯の子ども
第5章 学歴社会と子どもの貧困
第6章 子どもにとっての「必需品」を考える
第7章 「子ども対策」に向けて

 

アーサー・フェリル著, 鈴木主税, 石原正毅訳『戦争の起源-石器時代からアレクサンドロスにいたる戦争の古代史』(1985=1988→新版1999→2018)

 

戦争の起源 (ちくま学芸文庫)

戦争の起源 (ちくま学芸文庫)

 

人類誕生とともに戦争は始まった。先史時代からアレクサンドロス大王までの壮大なるその歴史をダイナミックに描く。地図・図版多数。 解説 森谷公俊

第1章 先史時代の戦争
第2章 古代近東の戦争
第3章 アッシリアとペルシア―鉄の時代
第4章 古典期ギリシアの戦争
第5章 軍事革命
第6章 アレクサンドロス大王と近代戦の起源

 

倉田剛著『現代存在論講義 Ⅱ ―物質的対象・種・虚構』(2018)

 

現代存在論講義II 物質的対象・種・虚構

現代存在論講義II 物質的対象・種・虚構

 

目前の机のような「中間サイズの物質的対象」、生物・物質・人工物の「種」、現実世界と事物のあり方が異なる「可能世界」、小説のキャラクターといった「虚構的対象」について論じる、四つの講義を所収。

序 文
I巻のおさらい
II巻の内容について

第一講義 中間サイズの物質的対象
 1 物質的構成の問題
  1.1 二つの相反する直観
  1.2 粘土の塊と像
  1.3 ニヒリズムあるいは消去主義について
  1.4 像と粘土の塊との非同一性を擁護する
  1.5 構成関係の定義

 2 通時的同一性の問題─変化と同一性
  2.1 同一性とライプニッツの法則
  2.2 四次元主義
   Box 1 四次元主義と物質的構成の問題
  2.3 三次元主義
  2.4 通時的同一性の条件あるいは存続条件について

まとめ

第二講義 種に関する実在論
 1 種に関する実在論
  1.1 種についての直観
  1.2 普遍者としての種
   Box 2 種の個体説について
  1.3 性質と種(その一)─偶然的述定と本質的述定
  1.4 性質と種(その二)─述語の共有
  1.5 性質と種(その三)─タイプ的対象としての種
   Box 3 種の例化を表現する“is”は冗長ではない

 2 種と同一性
  2.1 数え上げ可能性
  2.2 種と同一性基準

 3 種と法則的一般化
  3.1 法則的言明
  3.2 種と規範性
   Box 4 HPC説と「自然種の一般理論」

 4 付録─種的論理について

まとめ

第三講義 可能世界と虚構主義
 1 様相概念と可能世界
  1.1 様相概念─可能性と必然性
  1.2 可能世界─様相文が真であるとはいかなることか
  1.3 付録─可能世界意味論の基本的アイディア

 2 様相の形而上学
  2.1 可能世界への量化と現実主義的実在論
  2.2 ルイス型実在論

 3 虚構主義
  3.1 反実在論としての様相虚構主義
  3.2 フィクションにおける「真理」とのアナロジー
  3.3 背景とメタ理論的考察
  3.4 虚構主義への反論1
  3.5 虚構主義への反論2

まとめ

第四講義 虚構的対象
 1 基本的構図
  1.1 実在論非実在論か
  1.2 虚構と真理
  1.3 記述の理論

 2 現代の実在論的理論
  2.1 マイノング主義(その1)─〈ある〉と〈存在する〉との区分
  2.2 マイノング主義(その2)─述定の区分および不完全性
   Box 5 非コミットメント型マイノング主義
  2.3 理論的対象説
   Box 6 虚構的対象についての虚構主義
  2.4 人工物説

まとめ

結語にかえて──イージー・アプローチと実践的制約