石田英敬著『大人のためのメディア論講義』(2016)

 

二四時間モバイル機器を手放せず、情報産業に囲い込まれた現代人の生活。人間が二足歩行へと進化した文字を持ちはじめた時から宿命づけられたこの現象は、二〇世紀に、二つのメディア革命を経て加速する。写真・電話・映画などの技術が人間の意識できない瞬間を記録し、広告・マーケティング技術が我々自身より先に消費・欲望を生み出し、デジタル機器が人間の生活全体を統治していく。人間は自分自身の意識をもう一度わが手に取り返すことはできるのか。そのために何ができるのか。

第1章 メディアと“心の装置”
第2章 “テクノロジーの文字”と“技術的無意識”
第3章 現代資本主義と文化産業
第4章 メディアの“デジタル転回”
第5章 「注意力の経済」と「精神のエコロジー
第6章 メディア再帰社会のために

批評プラットフォーム〈クリティカル・プラトー

55 エーコ『完全言語の探求』

62「20世紀になって、写真、映画、レコード、ラジオの普及のように、これらのアナログ・メディア技術が産業的にも使われるようになって、実際に人間の文明を大幅に書き換えていく「アナログ・メディア革命」が起こっていくわけです。

 写真以後のこれらメディアの特徴は、機械が書く文字であることにあるます。書物の時代までは、人間が文字を読み書きすることによって、文明の生活が成り立っていた。しかし、アナログ・メディアの時代になると、機械が文字を書くようになる」

65「アナログ革命以後のメディアは、機械によって人間の知覚=意識や表象の活動を書き取り送受信する技術で、私自身は、それを「テクノロジーの文字(technological grammatization)」による技術と名づけています」

100 エドワード・バーネイズ

120 シャノン『通信の数学的理論』既読

217「メディアがデジタル化すると、メディアは再帰化する」

219「ところが、デジタル革命は、メディアを0と1の数字列からメッセージをそのつど生成するマトリクス(数の行列)へと進化させました。アナログ・メディアにおいては、メディアとメッセージのタイプとが固定化した関係にあった。しかし、コンピュータでは、音声も映像も文字もすべては0と1からなる数列に書き換えられてあらためてそのつど生成されている」「ですから、デジタル・メディアとは、そのつど関係性が自律的に生成する場であり、しかsも、無限の記憶の貯蔵庫であり、それゆえにむしろ、ユーザーの行動を予め決定してしまうプログラムであり、いつでもどこからでもヒトとモノを現前へと呼び出すことができる「プラットフォーム」となったのです」