吉川浩満著『理不尽な進化 増補新版-遺伝子と運のあいだ』(2014→2021)

 

生物種の99.9パーセントが絶滅する。生物の歴史はずいぶんと「理不尽」な遍歴をたどってきた。本書は、絶滅という観点から生物の歴史を眺め、俗説が人びとを魅了する構造を理解することで、進化論の本当のおもしろさを読者に差し出す。アートとサイエンスを全方位的に見渡し、かつ両者をあざやかにむすぶ、現代の名著がついに文庫化。

序章 進化論の時代

 進化論的世界像―進化論という万能酸
 みんな何処へ行った?―種は冷たい土の中に
 絶滅の相の下に―敗者の生命史
 用語について―若干の注意点
第1章 絶滅のシナリオ

 絶滅率九九・九パーセント
 遺伝子か運か
 絶滅の類型学
 理不尽な絶滅の重要性
第2章 適者生存とはなにか

 誤解を理解する
 模範解答と哲学的困惑
 お守りとしての進化論
 ダーウィン革命とはなんだったか)
第3章 ダーウィニズムはなぜそう呼ばれるか

 素人の誤解から専門家の紛糾へ
 グールドの適応主義批判―なぜなぜ物語はいらない
 ドーキンスの反論―なぜなぜ物語こそ必要だ
 デネットの追い討ち―むしろそれ以外になにが?
 論争の判定
終章 理不尽にたいする態度

 グールドの地獄めぐり
 歴史の独立宣言
 説明と理解
 理不尽にたいする態度
 私たちの「人間」をどうするか
文庫版付録 パンとゲシュタポ