小坂井敏晶著『増補 責任という虚構』(2008→2020)

 

人間は自由意志を持った主体的存在であり、自己の行為に責任を負う。これが近代を支える人間像だ。しかし、社会心理学脳科学はこの見方に真っ向から疑問を投げかける。ホロコースト・死刑・冤罪の分析から浮き上がる責任の構造とは何か。本書は、自由意志概念のイデオロギー性を暴き、あらゆる手段で近代が秘匿してきた秩序維持装置の仕組みを炙り出す。社会に虚構が生まれると同時に、その虚構性が必ず隠蔽されるのはなぜか。人間の根源的姿に迫った著者代表作。文庫版には自由・平等・普遍の正体、そして規範論の罠を明らかにした補考「近代の原罪」を付す。

序章 主体という物語
第1章 ホロコースト再考
第2章 死刑と責任転嫁
第3章 冤罪の必然性
第4章 責任という虚構
第5章 責任の正体
第6章 社会秩序と“外部”
結論に代えて
補考 近代の原罪―主体と普遍