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本稿は, アレグザンダーの「市民圏」論の検討によって, 公共圏論の理論的な刷新を図ることを目的とする.
公共圏論に大きな影響を及ぼすハーバーマスは, 公共圏を公論形成の領域と規定する点ではマクロ的な観点を保持する. だが, 直接的な対話による了解を志向する討議を公共圏におけるコミュニケーションのモデルとすることから, 民主的社会における市民の意思形成とマクロレベルでの政治プロセスの接続という点で理論的困難を抱えている.
これに対してアレグザンダーは「市民圏」概念を提唱する. 彼は, 市民圏におけるコミュニケーションを, 討議から, 感情的な共感に訴えることでオーディエンスからの承認を求めるパフォーマンスに代替することを主張する. 彼に従えば, 基本的なコミュニケーションをパフォーマンスとして捉えることこそが, 民主的社会における公共圏のより適切な理論化につながる.
理論的課題は多く, 公共圏におけるコミュニケーションがスペクタクルとして上演されることを肯定するだけという評価もあるかもしれない. だが, アレグザンダーの市民圏論が, 現代の民主的社会と公共圏の関係に対する新たな洞察を可能にすると, 筆者は主張したい.
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「だが,多くの一般市民が関係する集合的な意思決定はシンボリックな情動性を前提とせざるをえないことを主張しつつ,デュルケムやパーソンズ,そしてゴッフマンといった社会学の基軸に立ち返ることで現代の公共圏の動態性に関する分析モデルを提供しようとする点に,またそれをもとに,パフォーマンスとその受容に具現化される闘争がもつ性格を析出し,政治権力や経済的貨幣の獲得や配分に関わる領域に並ぶ社会領域として公共圏を位置づけるという点に,アレグザンダー市民圏論の貢献を筆者は認めたい」