- 作者: 平石貴樹
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- 発売日: 2010/11
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「近代的自我」の変遷を導きの糸として、アメリカ文学の見取り図を描き、「文学史とは何か」「小説の評価とは何か」を問うた書き下ろし1500枚。伝統の形成、アメリカン・ルネッサンスの隆盛、近代小説の展開、モダニズムの文学、戦後文学までの5部構成。
序文
第I部 伝統の形成--自我の原風景
第一章 ピューリタニズムからフランクリンへ
第二章 クーパーと「正義の暴力」の伝統
第三章 「感傷小説」と「ゴシック小説」
第四章 エマソンとキリスト教の展開第II部 アメリカン・ルネッサンスの隆盛--自我をうたう/うたがう
第五章 ポーと精神分析批評
第六章 ホーソーンと「ロマンス」というジャンル
第七章 メルヴィルと近代(文学)批判
第八章 ホイットマンとディキンソン
第九章 南北戦争、ストウとオールコット第III部 近代小説の展開--自我がためされる
第一〇章 ハウエルズ、ジュエットと近代小説の成立
第一一章 トウェインと個人主義の夢
第一二章 ジェイムズ、ウォートンと近代小説の完成
第一三章 ショパン、ドライサーと自然主義の時代第IV部 モダニズムの文学--自我がゆらぐ
第一四章 フィッツジェラルドとモダニズムの人間像
第一五章 モダニズムの詩人たち
第一六章 スタイン、ヘミングウェイと「時間」の主題
第一七章 フォークナーと自己批判のモダニズム
第一八章 大衆の時代としての一九三〇年代
第一九章 演劇が文学だったころ第V部 戦後文学--自我をつくろう
第二〇章 混乱の五〇年代と「ビート世代」
第二一章 家族小説(1)--南部小説
第二二章 家族小説(2)--人種系文学
第二三章 ポストモダニズム小説
第二四章 アメリカ小説の現在
p.41「ベストセラーのリストに、(ウォルター・)スコットと(ジェイムズ・フェニモア・)クーパーの両方が名をつらんえていることそれ自体である」「当時アメリカは、イギリスをふくむ国際社会に対して、国際著作権協定を締結していなかったから、アメリカの出版社は、たとえばスコットの小説を、スコットにもイギリスの出版社にも印税を支払わず、自由に複製ーいわゆる海賊版を刊行し、販売することができた」
p.42
- 作者: マークトウェイン,Mark Twain,土屋京子
- 出版社/メーカー: 光文社
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- 作者: D.H.ローレンス,D.H. Lawrence,大西直樹
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p.57「当時から小説ジャンルとは、主として女性の読み物だった」
p.59「女性作家たちによる感傷小説は、そのような「悪」を引きずりながら、それでもしだいに家庭生活を中心とする人びとの日常生活を描き、その中で人物たちの個性に関心をはらい、近代リアリズム小説の下地をつくっていった」初期の代表例としてスーザン・ローソン『シャーロット・テンプル』(1791)、あるいは、キャサリン・マリア・セジウィック『ニューイングランド物語』(1822)。
p.63「「ユニテリアン」は、イエス・キリストが神の子ではなく、預言者、つまりあくまでも人間だったと考える合理性と、カルヴィニズムを否定する「万人救済」思想を兼ねそなえ、知的エリート層に支持され、ハーヴァード大学神学部を席捲することによって、エマソンの出発点を画することにもなった流派である」
p.68「第一章で述べたように、社会的伝統のとぼしい移民社会においては、「セルフ・コントロール」を中心とする個人的責任以外に、個人や社会を律する原理が明確には存在しなかった」※ 〈孤独な個人〉と〈他者との共存〉こそアメリカ文学史の趨勢命題かもしれない。
p.73「アメリカ文学史において、悪とたたかうゴシック小説が頂点をきわめた作品は、おそらくストウの『アンクル・トムの小屋』である」「いっぽう、最大のゴシック小説家であるポーは、悪とたたかったわけではない」「フォークナーの『アブロサム、アブロサム!』は奴隷制の罪をかかえたまま歴史の進展から取り残された南部の孤立と罪の意識を、ゴシック的雰囲気に反映」「ピンチョンの『重力の虹』の場合には、現代の管理社会の見えないネットワークによる大衆支配が、ゴシック的恐怖の源泉に」
p.76
- 作者: マークトウェイン,Mark Twain,柴田元幸
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p.89「だが、いく人かの作家たちが懐疑や不安を表明したとしても、全体としては、ロマン主義的なハイテンションの自我は、民主主義や個人主義の理念と相互に補強しあいながら、アメリカにおいて浸透したし、浸透することにって、独特のかたちで変容していった」「すでに民主主義を成立させ、「革命後」の社会として安定を急いでいたアメリカでは、非社会的、反社会的なロマン主義は、大勢としては歓迎されず、近代的自我の「普遍性」や「共感」の可能性に思想的な重点がおかれ、げんになるアメリカの安定的な発展にこそ、大きな希望がよせられた」アメリカ型ロマン主義に忠実→ホイットマン。基本路線からはずれながら、近代的自我の内容を吟味→ポー、メルヴィル。
p.92「キリスト教を教会という場所や制度に閉じ込めることをやめ、個人の手に「霊性」を解放したために、アメリカの近代文学は、日本やイギリスのように、徹底的な世俗化をともないながら展開することはなく、「身近なもの」への注目が、そのまま「霊的なもの」への関心や思索を導くような、超越的な文学、アレゴリーや象徴主義やらを招きよせやすい、いわば「前近代の香りの高い」文学を、産み出すことになった」
p.106「「ベレニス」の、フロイト直電的な性心理学解釈を、精神分析的批評の第一段階、「アーサー・ゴードン・ピムの物語」の社会的な無意識を究明する読解を第三段階とすると、その中間の第二段階に、「テーマ批評」もしくは「現象学的批評」と呼ばれるタイプの批評が存在する」1950〜60年代に流行。「第一段階の批評ほど、性や家族をめぐる作者の個人的な体験、精神病質的な特異性に拘泥せず、また第三段階の批評のように、作者を時代や環境の「社会的無意識」の産物と見なすのでもなく、いわばその両方にぼんやりとまたがって、作者の無意識的な特徴傾向を洗い出すことを心がける(作者の無意識の「起源」をたずねるのではなく、無意識的に書かれた作品の、いわば「表面」の肌触りに議論を集中させるので、この批評スタイルは「現象学的」と呼ばれる)
p.123「ホーソーンはまた、近代的自我の自由を罪として受け止める思想が、新しい小説の可能性を切りひらくことを自覚していた」主題「姦通」
- 作者: ホーソーン,Nathaniel Hawthorne,小川高義
- 出版社/メーカー: 光文社
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p.129「一般論や通例と対照させてみると、人びとの生活の蓋然性が、明瞭なかたちで存在しない、という近代的な自体が、アメリカの小説のきわめて特殊な条件であることがあきらかとなる。こうした条件の結果、アメリカ小説は、たいていの場合個人の自由な自己主張、すなわち「面白みのない勝手放題」を描きつづけ、その意味では低レベルでありちづけてきた。社会に敢然と反発する主人公はアメリカには無数にあらわれるが、「反発するのが当然だ、私は正しい」という個人主義の(それこそエマソン的な)信念に支えられることによって、かれら/彼女たちは、立派な人物ではありえても、読者の共感をさそう昨日や複雑さには欠けてしまいがちだったのである」※ アメリカ映画史にも関連づけて論じる余地がある。
p.143「エマソンにおいては、性善説とキリスト教信仰が、強力な自我をおのじから方向づけていたから、たとえ大胆な言説をふりかざしても、結果的には人間中心主義の進歩的な側面だけが前面に押し出されて、民主主義(と資本主義)の発展に寄与し、かれはアメリカ文化の指導者の位置に立つことができた。ホーソーンは強力な自我に罪を見いだしたが、罪とみとめることによって、やはりキリスト教の信仰と道徳に帰順する余地を残した。メルヴィルははじめて、それを罪とさえみとめない人間中心主義の主人公を、いわば民主主義の申し子として提示し、そのうえでそのような主人公に、懐疑の目をむけることになった」
p.146「エマソンは、(背後にスピリチュアリズムの影響をとどめながらも)民主主義にもとづく自己の普遍性、真理認識の能力を信頼し、当時のアメリカ人の一般的な思想基盤を樹立した。ソローはそれを、自然との交わりの中に実践的に究明することを試みた。ポーは、いわば(南部人として)民主主義の広場には背をむけ、密室的な想像力によって、人間の生と死、そして自我の限界点を見さだめようとした。ホーソーンは、個人主義の自由思想がもたらしうる罪の問題に焦点をあて、個人と社会の関係を心理の深みにおいて追求する道をえらんだ。メルヴィルは、徹底的な民主主義にもとづいて世界をながめたあげく、紙をうたがうところまで行ってしまった。そして次章に見るホイットマンは、自己の民主的普遍性にもとづき、連帯の必要性・必然性を説く詩を書いた」
p.192「「アメリカ反奴隷制協会」などの支援のもとで、奴隷制の実態を伝えるノンフィクションの読み物は多数出版され、その中には、奴隷の境遇から逃亡などによって、北部で自由を獲得した人びとの自伝がふくまれていた。それらは「スレイヴ・ナラティヴ」(slave narrative)というジャンルのもとに一括され、近年さまざまな意味から注目されている」ベンジャミン・フランクリン『自伝』、ホレイショ・アルジャーにも共通。
p.367「意識の流れ」(streawm of consciousnness)「それは、その人の自覚の有無にかかわりなく、連想や想起、あるいは広い意味での無意識の活動をもふくみながら、ぼんやりと、刻々・淡々と流れていると想定される。したがって、登場人物のだれか一人の「意識の流れ」を「語り手」に設定することによって、物語と叙述の時間の対応は基本的に補償され、読者のための「テリング」的な説明や描写まど一切なく、つねに「ショーイング」である叙述が実現することになる」「一人称小説の叙述とはまったく異質である。一人称小説の語り手は、自分が語っていることを自覚し、語る同期や目的をもちあわせているから、その叙述は「物語」としてまとまりやすいかわり、三人称小説とおなじように、ある場合には説明をはさんだり、描写にページを割いたりして、「テリング」に傾くこともめずらしくない。だが「意識の流れ」の叙述では、その意識も意識も持ち主である人物も、自分が語り手であることを自覚していないから、その人物の(外界に接した)意識面の刻々の「ショーイング」となることは約束されるかわり、それはひたすら流れていくばかりで、同期も目的ももちあわせていないので、それをそのまま記述していくだけでは物語がまとまらない、という致命的な欠点もかかえている。そこで「意識の流れ」を利用する小説家は、前面tねきにそれに依存して作品を完成させることはできないので、部分的に利用したり、複数の人物の「意識の流れ」をコラージュ的に組みあわせたりせねばならず、こうして先にふれておいた(第15章7節など)コラージュの方法が、あらためてクローズアップされることにもなった」→
p.350 エリオット『荒地』の詩は、ダンテ、ネルヴァル、中世歌謡など複数の断片の集積として構成されている。この方法を本書では「コラージュ」(collage)と定義する。
p.480「フォークナーによく似たかたちで、過去や歴史の主題を提示したのは、ロバート・ベン・ウォレンの『王のすべての家来たち』である。ウォレンはケンタッキー州の出身で、ヴァンダヒルト大学に進学してニュー・クリティシズムの運動に参加し、批評家・研究者としても活躍した」
- 作者: ロバート・ペンウォーレン,Robert Penn Warren,鈴木重吉
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- 作者: テネシーウィリアムズ,Tennessee Williams,小田島雄志
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- 作者: カポーティ,河野一郎
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・寄生とパロディの文学
スローターハウス5 (ハヤカワ文庫SF ウ 4-3) (ハヤカワ文庫 SF 302)
- 作者: カート・ヴォネガット・ジュニア,和田誠,伊藤典夫
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- 作者: ジョン・バース,志村正雄
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、ということが、モダニズムとポストモダニズムの総意の一端であるだろう」
- 作者: ウラジーミルナボコフ,Vladimir Nabokov,若島正
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- 作者: ナボコフ,富士川義之
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- 作者: ジョンアーヴィング,筒井正明
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V.〈上〉 (Thomas Pynchon Complete Collection)
- 作者: トマスピンチョン,Thomas Pynchon,小山太一,佐藤良明
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- 作者: トマス・ピンチョン,志村正雄
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トマス・ピンチョン全小説 重力の虹[上] (Thomas Pynchon Complete Collection)
- 作者: トマスピンチョン,Thomas Pynchon,佐藤良明
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- 作者: ドンデリーロ,Don DeLillo,上岡伸雄
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p.579
- 作者: チャールズブコウスキー,Charles Bukowski,坂口緑
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- 作者: ティム・オブライエン,Tim O'Brien,村上春樹
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- 作者: ティム・オブライエン,坂口緑,Tim O'Brien
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