中河伸俊『社会問題の社会学ー構築主義アプローチの新展開』(1999)メモ

社会問題の社会学―構築主義アプローチの新展開 (SEKAISHISO SEMINAR)

社会問題の社会学―構築主義アプローチの新展開 (SEKAISHISO SEMINAR)

■内容(「MARC」データベースより)
社会学はなにを調べ、なにを探索するのか。構築主義アプローチという新しい手法を、事例研究を交えてわかりやすく紹介する、社会問題研究の新たな地平。
■目次
はじめに
第1章 社会問題とは何か――構築主義アプローチへの招待
第2章 社会問題の研究と公式統計
第3章 追放運動から論争へ――「有害マンガ」をめぐる問題活動の展開過程
第4章 「有害マンガ」問題とレトリック分析
第5章 社会構築主義と感情の社会学
第6章 「プライバシー侵害の疑いがあるとされる作品」の構築
    ――公立美術館が購入した連作版画の定義をめぐるポリティクス
第7章 トラブルのエスノグラフィーと社会問題のワーク
    ――社会問題の構築主義的研究の回顧と展望

※理論面では5,7章。スキャン済。
タネ本。中河はキツセの元で研究し、構築主義を国内に紹介。1977=90

社会問題の構築―ラベリング理論をこえて

社会問題の構築―ラベリング理論をこえて

p.21.注(21)「ベストとホリウチは、ハロウィーンのときに仮装して家々をまわる子どもたちに、剃刀入りのリンゴや毒入りキャンディを渡す嗜虐的な変質者がいるという都市のフォークロアについて、構築主義の手法で研究を行った」【リンク

p.30.「社会問題のカテゴリーは、エスノメソドロジーと呼ばれるアプローチの基礎作りに貢献したサックスが成員カテゴリー化装置と名づけたものの社会問題版である」p.60 注(27)「サックスの成員カテゴリー化装置という考え方については、山崎敬一による『美貌の陥穽ーセクシュアリティエスノメソドロジー

の序章の説明がわかりやすい。またエスノメソドロジーについての邦文の概説書としては」A.クロン『入門エスノメソドロジー
入門エスノメソドロジー―私たちはみな実践的社会学者である (serica books)

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エスノメソドロジーとは何か

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OD>相互行為分析という視点―文化と心の社会学的記述 (認識と文化)

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p.93.注(8)レイベリング理論関連の代表的邦文文献
完訳 アウトサイダーズ:ラベリング理論再考

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逸脱の社会学―烙印の構図とアノミー

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関連で見つけた。
新版 少年非行の社会学 (SEKAISHISO SEMINAR)

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p.143 注(3)西阪仰「差別の語法ー『問題』の相互行為的達成」所収
差別の社会理論 (講座 差別の社会学)

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p.187. イバラとキツセのレトリック分析(『社会問題の構築』以来)への批判。「鮎川は、イバラとキツセのレトリック分析は、エスノメソドロジストがいうところのインデキシカリティ(文脈依存性)を無視し、レトリックを脱コンテクスト化した形で列挙することによって一般理論化をはかったと批判する」

p.196.注(40)上関連。(鮎川潤は)「イバラとキツセの"厳格派構築主義"のアプローチは、(1)リフレクシヴィティ、(2)インデキシカリティの二つの点において問題があるとし、さらに、(1)のほうがより根本的な問題だとする。(2)インデキシカリティ(インデックス性)とは、エスノメソドロジストが重視する日常言語の次のような特性のことである。「ガーフィンケルは、自然言語はどこをとっても徹底してインデックス性を示すと考える。なぜなら、メンバーにとって日常言語の意味はその言語が出現する文脈に依存しているからである。自然言語はそれが使われる状況と発話を離れては意味を持ち得ないのである。[中略]このインデックス性という概念はエスノメソドロジーによって社会科学へと移入された。つまり、例えば発話、ジェスチャー、規則、あるいは行為といったあらゆるシンボル形式は『未完という緑房』を伴っており、それはそれらが実際に遂行される時に初めて消滅するのである。むろん、この完成自体が、『未完の地平』を再び宣言するものであるのだが」(A.クロン『入門エスノメソドロジー』)鮎川のリフレクシヴィティにまつわる批判は、7章の存在論上の境界の恣意的設定(オントロジカル・ゲリマンダーリング、OG)の問題に帰着するのでそちらを参照。

5章
p.200.「構築主義ポジティヴィズム」論争。Kemper"A Social Interactional Theory of Emotions" から。ポジティヴィスト=感情の生理過程決定論(?)。

構築主義のように感情の文化決定論をとらず、生理過程と社会課程とを切り離すことができないものとして理論化。ホマンズの交換理論から地位-権力モデルを立てたケンパー、デュルケムとゴフマンを結びつけた「相互行為儀礼のミクロの連鎖」モデルのコリンズ、シェフなど。

p.203. ショットやホックシールドの"感情のレイベリング理論"は。ポジティヴィストのような生理過程決定論をとるのではなく(※先ほどの説明ではすでにとっていなかったのでは?)、〈生理過程+認知的ラベルの付与→感情経験〉という説明図式をとる。

※ポジティヴィストによるレイベリング理論批判は、かなりもっともであるように思う。

両者が歩み寄った先に、たとえばホックシールド『管理される心』

管理される心―感情が商品になるとき

管理される心―感情が商品になるとき

6章、事例研究。こういう議論を読むと、日本はいまだに前近代だなと。大浦信行 wikiリンク
p.263.レイベリング論争まとめ。
20世紀社会学理論の検証

20世紀社会学理論の検証

p.264.「社会問題の構築主義は、こうしたシンボリック相互作用系の経験的研究の伝統とエスノメソドロジーの洞察とを結びつけたところに生まれた」(あくまで初期のエスノメソドロジーである)「1970年代に入って社会問題研究の分野で定式化されたブルーマーやモースらシンボリック相互作用論者の状況の定義アプローチが、「問題」についての人びとの、"主観的"定義の重要性を強調しながらも、定義の対象となる"客観的"な「社会の状態」もまた研究対象に含めていたのに対して、スペクターとキツセは、エスノメソドロジーからヒントを得て、"客観的"な「状態」をまったく考慮の外に置くことを提唱した。

7章 OG問題関連。本書の論旨そのままだが赤川学「言説分析と構築主義」既読。

構築主義とは何か

構築主義とは何か

ジェネス、ブロードのヘイトクライム研究、昨今のヘイトスピーチ問題を考えるに必須かと思いきや、2000年のこの論文しかヒットしなかった。【リンク】(pdf)

『社会病理を考える』の著者を調べたら、その後、すごいことになってた。/ 徳岡秀雄 Wikipediaリンク