蓮實重彦著『映画狂人、小津の余白に』(2001)

映画狂人、小津の余白に

映画狂人、小津の余白に

その後の小津論と、成瀬、清順、ロマンポルノetc.さらに…。映画と状況をめぐる、小津安二郎&日本映画エッセイの最新集大成。ますます万事快調の「映画狂人」シリーズ第5弾。

1 小津の余白に
 日本映画の黄金時代―溝口、小津、成瀬
 ひたいの誘惑 ほか
2 日本映画の転換期
 鈴木清順そしてその沈黙のなりたち
 加藤泰『陰獣』―単眼的世界のエロス ほか
3 レンフィルム、そしてロシア映画
 とうとうボリス・バルネットが登場した!
 ソ連映画の発見と鎮魂―レンフィルム祭 映画の共和国へ ほか
4 横断し、越境する映画
 グリフィスは、たえず「来たるべき」作家である―『イントレランス』について
 ラオール・ウォルシュ ほか

是枝裕和著『映画を撮りながら考えたこと』(2016)

映画を撮りながら考えたこと

映画を撮りながら考えたこと

『誰も知らない』『そして父になる』『海街diary』『海よりもまだ深く』…全作品を振り返り、探った、「この時代に表現しつづける」その方法と技術、困難、そして可能性。

第1章 絵コンテでつくったデビュー作
第2章 青春期・挫折
第3章 演出と「やらせ」
第4章 白でもなく、黒でもなく
第5章 不在を抱えてどう生きるか
第6章 世界の映画祭をめぐる
第7章 テレビによるテレビ論
第8章 テレビドラマでできること、その限界
第9章 料理人として
終章 これから「撮る」人たちへ

上島春彦著『レッドパージ・ハリウッド―赤狩り体制に挑んだブラックリスト映画人列伝』(2006)

レッドパージ・ハリウッド――赤狩り体制に挑んだブラックリスト映画人列伝

レッドパージ・ハリウッド――赤狩り体制に挑んだブラックリスト映画人列伝

1950年代、赤狩りの嵐吹き荒れるアメリカで、左翼脚本家・監督・俳優たちは、いかに戦い、どのような作品を残したのか。隠された歴史を丹念に洗い出し、克明に記録する、レッドパージ研究の完全決定版。

第1章 闘いの始まり――チャップリン、ハリウッドテン、HUAC
第2章 ジョン・ガーフィールドと「彼の」脚本家――クリフォード・オデッツ、エイブラハム・ポロンスキー
第3章 ある「透明人間」の人生――ベン・マドウ
第4章 保護者の栄光と悲惨――フィリップ・ヨーダン
第5章 あなたは現場にいるのです――『ユー・アー・ゼア』トリオ
第6章 拳銃の報酬――ハリー・ベラフォンテ、ポロンスキー
第7章 協力証言者――エリア・カザン
第8章 『ローマの休日』の脚本家――ドルトン・トランボウィリアム・ワイラー
第9章 『黒い牡牛』とロバート・リッチ――キング兄弟、トランボ
第10章 ブラックリストの廃棄――カーク・ダグラスオットー・プレミンジャー、トランボ
第11章 ゴードン・ヒチンズ・インタビュー

53 四人の姉妹, ジョン・ガーフィールド
57 民衆の敵, ジェームズ・キャグニー
58 ボディ・アンド・ソウル, エイブラムス・ポロンスキー, ロバート・アルドリッチ
106 NYKINO(ニコノ)が36年にフロンティア・フィルムズへ。ベン・マドウ他「戦闘的左翼の立場から数本の注目すべきドキュメンタリー映画を製作」短編ニュース映画シリーズ『今日の世界』The World Today
107「ジョン・フォードお気に入りの脚本家ダドリー・ニコルズ(『果てなき旅路』『駅馬車』)」
120「当時(1949年)のMGM(メジャー・スタジオ中最も保守的と言われていた)」
115「この組織(OSS(戦略情報局))の主導によりドイツや日本などへ偽の情報を流したり、士気を喪失させるための宣伝放送をする、いわゆる「ブラックラジオ」作戦が取られた。OSSに所属し、この作戦でドイツの一般国民向け演説などを書いていた一人が、やはり後にブラックリストに載りハリウッドを追放されるエイブラハム・ポロンスキーだったこと」
135「ハリウッド史上最もミステリアスな男、と呼ばれるフィリップ・ヨーダン
122 アスファルト・ジャングル, ジョン・ヒューストン「マーク・ローレンス、スターリング・ヘイドン、サム・ジャフィ」3人の共産主義者が集う。
124「この作品がきっかけになり、現金強奪シチュエーションの映画がハリウッドで流行し、ケイパー・フィルムと呼ばれるようになった」
147 犯罪王ディリンジャー , フィリップ・ヨーダン脚本
163 折れた槍
165「40年代の大撮影所(メジャー・スタジオ)において、彼ら首脳はギャング映画を作らない、とする同意書にサインしていた」「しかし後にウォルター・ウェンジャーはこう言ったものだ、彼は当時アカデミーの要職にあった人物だが。『そう、我々はなんとしても(業界の掟に違背した)『犯罪王ディリンジャ』にオスカーを与えるわけにはいかなかったのだ』」
169 知らぬ者たちが結婚すると, When Strangers Marry「B級フィルム・ノワールの傑作とされる1本」
ブラックリスト期フィルモグラフィ
ベン・マドウ脚本】
・真昼の決闘, フレッド・ジンネマン
・マン・クレイジー, アーヴィング・ラーナー
・乱暴者(あばれもの), ラズロ・ベネデック
・黒い絨毯, バイロン・ハスキン
シャロンの虐殺者, アンソニー・マン
・最前線, アンソニー・マン
・連発銃は知っている, ロイ・ローランド
・ノー・ダウン・ペイメント, マーティン・リット
・契約殺人, アーヴィング・ラーナー
荒れ狂う河, エリア・カザン
エイブラハム・ポロンスキー脚本】
・デンジャー, TVシリーズ
・ユー・アー・ゼア, TVシリーズ
カルメン, オットー・プレミンジャー
オイディプス王, カイロン・ガスリー
・ガーメント・ジャングル, ヴィンセント・シャーマン
拳銃の報酬, ロバート・ワイズ
・クラフト・サスペンス劇場 ザ・ラスト・チャンス, TVシリーズ
・波止場Gメン, TVシリーズ
【ドントン・トランボ脚本】
拳銃魔, ジョセフ・ルイス
・バッシュフル ベンドの金髪娘, プレストン・スタージェス
・火星探検, カート・ニューマン
・緊急結婚, エドワード・バゼル
・その男を逃すな, ジョン・ベリー
・密行巡査, ジョセフ・ロージー
・勇敢な雄牛, ロバート・ロッセン
ローマの休日, ウィリアム・ワイラー
・カーニバルな女, カート・ニューマン
・売り物のパーティーガール, カート・ニューマン
軍事法廷, オットー・プレミンジャー
・黒い牡牛, アーヴィング・ラパー
・ボス, バイロン・ハスキン
・野生の息吹き, ジョージ・キューカー
・緑の瞳の金髪娘, バーナード・ジラー
・忌まわしい雪男, ヴァル・ゲスト
・リコ兄弟, フィル・カールスン
・鹿殺し, カート・ニューマン
・ガンヒルの決闘, ジョン・スタージェス
・キャリア, ジョセフ・アンソニー
・テキサスの死闘, ジョセフ・ルイス
・キャヴァーン, エドガー・G・ウルマー

木下千花著『溝口健二論ー映画の美学と政治学』(2016)

トーキー化と長回しと縦の構図によって時空間を変容し、植民地主義や女性の人権蹂躙など矛盾をはらむ重層性を女性の身体を通して露呈させ、占領下の女性の解放を言祝ぎ、贈与交換に基づく権力関係に立脚した欲望を演出し、映画概念を拡張し続けた溝口健二に対峙して、ショットを分析記述し、検閲記録や撮影台本などの一次資料調査から、映画史、映画理論、メディア論、身体論、ジェンダー論など学際的な横断において映画学が本来有する力を発揮し、溝口健二の映画へとさらに眼差しを向かわせる画期的研究。

第一部 溝口の世界への視座
 序 章  複数のはじまり
  第一節 幼年時代
  第二節 間メディア性
  第三節 「映画」とは何か
  第四節 日活向島というマトリクス
  第五節 編集と長回し弁証法
  第六節 監督、溝口健二
  第七節 ナショナリズムジェンダー
  第八節 本書の構成
 第一章  世界の中のミゾグチ、溝口の中の世界
  第一節 日本趣味映画と「日本的なもの」
  第二節 作家主義と世界映画
  第三節 政治的モダニズムと日本映画
  第四節 歴史映画としての『元禄忠臣蔵
  第五節 異化としての歴史化
  第六節 溝口健二の「帝国」の映画
第二部 トーキーの間メディア美学
 第二章  革命前夜──溝口健二の『唐人お吉』(一九三〇年)
  第一節 はじめに
  第二節 溝口健二の「映画言語の進化」
  第三節 幕末のモガ──お吉とアメリカニズム
  第四節 間メディア装置としての「お吉ブーム」
  第五節 パフォーマンスとテクスト、注意散逸
 第三章  映画の第四次元──溝口健二の一九三五年
  第一節 はじめに──『折鶴お千』の境界性
  第二節 一九三五年、日本
  第三節 トーキー美学の誕生
  第四節 『折鶴お千』、反時代的映画
  第五節 音声と奥行き
  第六節 前景構図の盛衰
 第四章 「風俗」という戦場──内務省の検閲
  第一節 はじめに──『浪華悲歌』の場合
  第二節 検閲官という仕事
  第三節 「検閲内規」の世界──『折鶴お千』を中心に
  第四節 『祇園の姉妹』の善導
第三部 溝口の「女性映画」──松竹京都時代
 第五章 芸道物考
  第一節 はじめに──芸道と逃道
  第二節 芸道物の誕生──『鶴八鶴次郎』、ハリウッド、「新しい女性」
  第三節 ミッシング・リンクとしての『月夜鴉』
  第四節 芸道物としての『残菊物語』
  第五節 芸道物のゆくえ
 第六章 占領下の女性解放──大衆フェミニストプロパガンダとしての溝口映画
  第一節 はじめに
  第二節 松竹大船女性映画としての『女性の勝利』
  第三節 芸術と性愛──『歌麿をめぐる女たち』と『女優須磨子の恋』
  第四節 「好色一代女」と『夜の女たち』
  第五節 『我が恋は燃えぬ』
第四部 「現代映画」としての溝口作品
 第七章  欲望の演出と妊娠の身体
  第一節 はじめに──範例的シークェンスとしてのもとの告白
  第二節 演出とは何か
  第三節 妊娠の身体
   1 りくの妊娠
   2 時間イメージ──だからわれわれに一つの身体を与えて下さい
   3 『西鶴一代女
   4 長回しと墜落
   5 溝口映画の身体性
 第八章 伝統と近代──溝口健二のポスト占領期
  第一節 溝口健二のポスト占領期
  第二節 絵巻物モンタージュ
  第三節 閉域と性愛
  第四節 『赤線地帯』の反時代性

42 磯崎『建築における「日本的なもの」』

建築における「日本的なもの」

建築における「日本的なもの」

74 テヅカ『映像のコスモポリティクス』
映像のコスモポリティクス―グローバル化と日本、そして映画産業

映像のコスモポリティクス―グローバル化と日本、そして映画産業

吉田広明著『B級ノワール論−ハリウッド転換期の巨匠たち』(2008)

B級ノワール論――ハリウッド転換期の巨匠たち

B級ノワール論――ハリウッド転換期の巨匠たち

ジョゼフ・H.ルイス、アンソニー・マンリチャード・フライシャー。三人の巨匠の経歴と作品を精緻に分析し、ハリウッド古典期から現代期への転換点としての「B級ノワール」のいまだ知られざる全貌を見はるかす、画期的書き下ろし長篇評論。

序論 B級ノワール概説
第一章 B級ノワールにおける実験性――視覚的表現主義者ジョゼフ・H・ルイス
 (1)ワゴン・ホイール・ジョーの変貌
 (2)ディープ・フォーカス、窓、分身
第二章 B級ノワールにおける古典性――ミニマリストアンソニー・マン
 (1)アナクロニックな誠実さ 「作家」アンソニー・マンの悲劇と栄光
 (2)パッションとアクション
第三章 B級ノワールにおける現代性――視覚的原理主義リチャード・フライシャー
 (1)最後のB級ノワール作家――リチャード・フライシャーの歴史的位置
 (2)「イメージ」の権能――映画において「見える」ことは自明なのか
結論 イメージのアナクロニズムのために
B級ノワール主要作品解説
B級ノワール人物事項解説

34 エンタープライズ社「コミューン的に自由な映画作りが目指されたエンタープライズは、多くの左翼映画人の活動の場でもあった」
24 ボディ・アンド・ソウル, エイブラムス・ポロンスキー脚本, ロバート・アルドリッチ助監督
24 苦い報酬, エイブラムス・ポロンスキー, ロバート・アルドリッチ助監督
36 製作者 ドーリ・シャーリー
37 緑色の髪の少年, ジョセフ・ロージー
37「当時(49年頃)RKOにはさらにアンソニー・マンリチャード・フライシャーロバート・ワイズジャック・ターナーマーク・ロブソンらが在籍しており、このB班の充実ぶりを見れば、RKOが当時、進取的であwると同時に最も勢いのあるスタジオだったことが納得される」
39「既にハリウッド・システムが崩壊質つまり、アルドリッチは二歳年上のリチャード・フライシャーのように同じスタジオに一貫して所属し、安定した環境の下でプログラム・ピクチャーを撮り続けるという環境に恵まれることはなかった」
44 無警察地帯, フィル・カールソン「50年代ノワールを代表するとされる」
85 ハリディの烙印, ルイス
99 私の名前はジュリア・ロス, ルイス
103 夜は暗く, ルイス
123, 141 Tメン, アンソニー・マン
128 グレン・ミラー物語, アンソニー・マン
137 , 213, 12 遠山編『フィルム・ノワールの光と影 (EMブックス)』

フィルム・ノワールの光と影 (EMブックス)

フィルム・ノワールの光と影 (EMブックス)

148 秘密指令(恐怖時代), アンソニー・マン, ウォルター・ウェンジャープロデュース
152 ドーリ・シャーリー, プロデューサー, MGM
153「MGMという会社はメジャー中のメジャーであり、B級の予算もユニヴァーサルやコロンビアなどメジャー中のマイナー社のA級映画予算に匹敵した」
158 過去を逃れて, ジャック・ターナー
181 ジョン・オルトン, カメラマン
228 札束無情, リチャード・フライシャー
231 その女を殺せ, リチャード・フライシャー
242 脅迫/ロープ殺人事件, リチャード・フライシャー
244 史上最大の作戦
258, 290 山田『何が映画を走らせるのか?』
何が映画を走らせるのか?

何が映画を走らせるのか?

296, 311 『「アメリカン・ニューシネマ」の神話』
American film 1967-72―「アメリカン・ニューシネマ」の神話 (Neko cinema book―Academic series)

American film 1967-72―「アメリカン・ニューシネマ」の神話 (Neko cinema book―Academic series)

上島・遠山『60年代アメリカ映画』
60年代アメリカ映画 (E・Mブックス)

60年代アメリカ映画 (E・Mブックス)

川瀬健一編著『台湾映画 光復前・戦後初期の映画/サヨンの鐘/台湾歌謡』(2016)

台湾映画史 光復前の映画事業(黄仁)
台湾では上映されなかった映画『サヨンの鐘』(川瀬健一)
戦後初期の台湾映画製作(林贊庭)
正真正銘の「台湾語映画」の歴史(葉龍彦)
時代への内なる声 戦後二十年間の台湾歌謡と台湾の政治及び社会(李筱峰)

蓮實重彦著『シネマの記憶装置』(1979)

シネマの記憶装置

シネマの記憶装置

黒澤明ゴダールスピルバーグ...。巨匠の見せる映画批評の神髄! 蓮實重彦が魅せる映画的感性の動揺と、映画と戯れる倒錯的な戦略の数々!

1章 シネマの記憶装置
2章 フィルム断片、その引用と反復の記憶
3章 映画の現在、その緩慢と弛緩の記憶
4章 作家論、見えざる素顔への記憶
5章 ゴダール的記憶の現在

13 ラブ・ハンター・熱い肌, 小沼勝
13 わたしのSEX白書・絶頂度, 曽根中生
13 エロ将軍と二十一人の愛妾, 鈴木則文
14 十字路の夜, ジャン・ルノワール
14 万事快調, ジャン=リュック・ゴダール
15 バッド・ベティカーバート・ケネディ
16 濡れた欲情・特出し21人, 神代辰巳
29 吾輩はカモである
41 サミー島へ行く, アレクサンダー・マッケンドリック
41 今は死ぬ時だ, ベティカー
41 悲愁物語, 鈴木清順
41 湿った夢, ニコラス・レイ
114 レイト・ショー, ロバート・ベントン