宇野重規著『日本の保守とリベラル -思考の座標軸を立て直す』(2023)

 

近年、日本政治においても、「右」と「左」ではなく、「保守」と「リベラル」という対立図式が語られることが多くなった。しかし、混乱した言論状況のなか、保守とは何か、あるいはリベラルとは何か、という共通理解があるとは言えない。本書は、欧米の政治思想史を参照しつつ、近現代の日本に保守とリベラル、それぞれの系譜を辿り、読み解く試みである。福沢諭吉伊藤博文以来の知的営為を未来につなげ、真の「自由」を考える。

序章 あいまいな日本の保守とリベラル
第1章 日本の保守主義
第2章 日本のリベラリズム
第3章 二一世紀の福沢諭吉
第4章 福田恆存と保守思想
第5章 丸山眞男における三つの主体像
第6章 一九七五年―日本における成熟社会論の知的起源
第7章 一九七九/一九八〇年―日本の戦後保守主義の転換点
終章 日本の「保守」と「リベラル」の現在と未来

 

トニー・ベネット他著,磯直樹他訳『文化・階級・卓越化』(2009=2017)

 

社会学の古典」であるピエール・ブルデューの『ディスタンクシオン』の問題設定・理論・方法を批判的に継承し、量的調査と質的調査を組み合わせて、趣味や嗜好などに関わる文化が社会で資本としてどのように機能しているのかを明らかにする。

序論

第1部 分析の位置づけ

第1章 『ディスタンクシオン』以後の文化
 1 序
 2 ブルデューの三つの公理
 3 フランス社会学でのブルデューをめぐる論争
 4 教育と社会階層の社会学におけるブルデュー
 5 文化社会学でのブルデュー
 6 文化研究とメディア研究におけるブルデュー
 7 結論

第2章 文化資本の調査に向けて――理論と方法に関するいくつかの問い
 1 序
 2 ハビトゥスと実践の分散
 3 文化資本の分解
 4 界の理論と社会的なものの関係論的組織化
 5 方法論序説
 6 結論

第2部 嗜好・実践・個人のマッピング

第3章 イギリスの文化的趣味と関与のマッピング
 1 序
 2 多重対応分析の使用
 3 ライフスタイル空間――二〇〇三年イギリスの文化マップ
 4 社会集団とライフスタイル空間
 5 イギリスの階級構造
 6 結論

第4章 文化マップのなかの諸個人
 1 序
 2 ライフスタイルの空間での諸個人
 3 嗜好についての発言における俗物性と多様性
 4 結論

第3部 文化界と文化資本の構成

第5章 音楽界の緊張関係
 1 序
 2 競争的な文化の界としての音楽
 3 音楽の嗜好の輪郭
 4 音楽の嗜好の強さ
 5 音楽と行動
 6 結論

第6章 人気と稀有と――読むことの界に関する探究
 1 序
 2 読むことの機能
 3 本の文化
 4 新聞と雑誌――日常的に読むことの利用
 5 結論

第7章 視覚芸術の社会学的カンバス
 1 序
 2 絵画を対照化すること
 3 視覚芸術を消費すること
 4 視覚芸術を鑑賞すること
 5 結論

第8章 卓越化の対照的なダイナミクス――メディア領域
 1 序
 2 テレビと映画での階級間の相違
 3 テレビと卓越化の新しい実践
 4 映画と「美学」と「リアルなもの」という差異化の力
 5 結論

第9章 文化資本と身体
 1 序
 2 身体化された文化資本という概念
 3 スポーツと身体的運動
 4 身体の装飾とケア
 5 食事と料理
 6 結論

第3部の要約

第4部 卓越化の社会的次元

第10章 中産階級の文化形成
 1 序
 2 中産階級をめぐる議論
 3 イギリスの中産階級
 4 オムニボア性の解明
 5 中産階級アイデンティティ形成
 6 結論

第11章 文化と労働者階級
 1 序
 2 文化の考慮
 3 イギリスの労働者階級の現在
 4 距離化
 5 卓越化のローカルなゲーム――労働者階級内の分断
 6 階級の敵意?
 7 結論

第12章 ジェンダー文化資本
 1 序
 2 ジェンダーと世帯関係
 3 諸文化界と諸個人のジェンダー
 4 せめぎ合うジェンダーアイデンティティ
 5 結論

第13章 ネイション、エスニシティグローバル化
 1 序
 2 ホームとアウェー
 3 イギリス・アメリカ・ヨーロッパの文化スケープ
 4 結論

結論

方法論補遺
 補遺1:フォーカスグループ
 補遺2:質問紙調査とその分析
 補遺3:世帯インタビュー
 補遺4:エリートインタビュー

登場人物

参考文献

訳者解説 磯 直樹/相澤真一

人名索引

事項索引

 

鷲田清一著『ちぐはぐな身体 -ファッションって何?』(1995=2005)

 

ピアスや刺青をすることの意味とは?コムデギャルソンやヨウジヤマモト等のファッションが問いかけているものは?そもそも人は何のために服で体を隠すのか?隠すべきものの実体は?若い人々に哲学の教授が身体論をわかりやすく説いた名著、ついに文庫化!「制服を着崩すところからファッションは始まる」。

1 つぎはぎの身体(みっともない身体、ひきつる身体
こわれやすい身体―“像”としてのからだ ほか)
2 みっともない衣服(社会の生きた皮膚―ひとはいつ服を着はじめるか?
服を着くずす―ファッションの発端 ほか)
3 ふつりあいな存在(だぶだぶの服
用意をしない服? ほか)
4 衣服というギプス(“最後のモード”(la derni`ere mode)―ファッションの閉塞感 ほか)

 

ジョン・T・カシオポ,ウィリアム・パトリック著,柴田裕之訳『孤独の科学 -人はなぜ寂しくなるのか』(2008=2010)

 

その孤独感には理由がある! 脳と心のしくみ、遺伝と環境、進化のプロセス、病との関係、社会・経済的背景……「つながり」を求める動物としての人間――第一人者が様々な角度からその本性に迫る。

第1部 孤独な人たち

 対人関係の中で寂しさを覚える

 遺伝の力、環境の力

 自己制御力が失われていく

 利己的な遺伝子と社会的な動物

 普遍的な要素と個別的な要素

 孤独感による心身の磨耗
第2部 人間という社会的な生き物

 人と人を結ぶ交感の糸

 断つべからざるつながり

 誰よりも汝自身を知ること

 生まれ持った葛藤

 起きて当然の葛藤
第3部 社会的つながりに意味を見出す

 三種類の適応

 適切な社会的つながりを築くために

 社会的なつながりの力

 

三宅香帆著『「好き」を言語化する技術 ー推しの素晴らしさを語りたいのに「やばい!」しかでてこない』(2024)

 

好きな本・映画・舞台・ドラマ・アイドルを語りたい人の必読書
16万部突破『なぜ働いていると本が読めなくなるのか』でバズり中の著者が教える文章術!

あなたの「推し」はなんですか?
お気に入りのアニメ、本、漫画、映画。
応援しているアイドル、声優、バンド、YouTuber。
大好きな舞台、コンサート、ライブ。あるいは、スポーツや釣りなどの趣味も、推しに入るかもしれません。

本書は、アイドルと宝塚をこよなく愛する著者が、書評家として長年培ってきた文章技術を「推し語り」に役立つようにまとめた1冊です。
SNS発信・ブログ・ファンレター・友人とのおしゃべり・音声配信などの発信方法ごとに、自分だけの言葉で感想を伝える技術を教えます。

推し語りには、語彙力や文章力が必要だと思われがちですが、それは間違いです。
必要なのは、自分の感想を言葉にする「ちょっとしたコツ」だけ。
そのコツさえ知れば、あなただけの言葉で好きな作品の素晴らしさを語れるようになります。

はじめに
第1章 推しを語ることは、人生を語ること
第2章 推しを語る前の準備
第3章 推しの素晴らしさをしゃべる
第4章 推しの素晴らしさをSNSで発信する
第5章 推しの素晴らしさを文章に書く
第6章 推しの素晴らしさを書いた例文を読む
おまけ 推しの素晴らしさを語るためのQ&A
あとがき

 

トーマス・C・フォスター著,矢倉尚子訳『大学教授のように小説を読む方法 増補新版』(2003→2014=2019)

 

キリスト教の象徴、性的暗喩、天気や病気の使い方…。小説の筋を楽しむだけでなく、一歩踏み込んで読み解くための27のヒント。

まえがき 
プロローグ いったいどうやったんだ? 
1 旅はみな探求の冒険である(そうでないときを除いて) 
2 あなたと食事ができて嬉しいです──聖餐式の行為 
3 あなたを食事にできて嬉しいです──吸血行為 
4 たしかどこかでお会いしたような 
5 疑わしきはシェイクスピアと思え…… 
6 ……さもなければ聖書だ 
7 ヘンゼルディーとグレーテルダム 
8 ギリシア語みたいにちんぷんかんぷん 
9 ただの雨や雪じゃない 
10 ヒーローのとなりに立つな 
幕間 本気でそんなことを?
11 お前も痛いだろうが、パパのほうがもっと痛いんだよ──暴力について 
12 それって象徴ですか? 
13 それは政治が決めること──文学の中の政治 
14 そう、彼女もキリストのイメージなんだ 
15 空想は空を飛ぶ 
16 すべてセックス 
17 セックスシーンだけは例外 
18 浮かび上がったら洗礼 
19 地理は重要だ…… 
20 ……季節も 
幕間 ストーリーはひとつ 
21 偉大さのしるし 
22 目が見えないのにはわけがある 
23 ただの心臓病じゃない……そして病気にはたぶんウラがある 
24 目で読むな 
25 それがぼくの象徴だ、しかも泣きたければ泣くさ 
26 まじで? アイロニーについて 
27 テストケース 
終幕 仕切っているのは誰? 
結びの句 
付録 おすすめ本リスト 
謝辞 
訳者あとがき

 

平芳裕子著『東大ファッション論集中講義』(2024)

 

ファッションとは何か? 衣服とは? 12のテーマを通じて歴史と未来に問う。東大生の反響を呼んだ一度きりの特別講義が一冊となってよみがえる。

それでもファッションを研究する――イントロダクション

集中講義1日目 西洋のパラダイム
第1講 裁断と縫製――衣服に起源はあるのか
第2講 言葉と学問――ファッションは何を意味するのか
第3講 作法と流行――ファッションはなぜ女性のものとなったのか

集中講義2日目 近代がもたらしたもの
第4講 自由と拘束――女性の身体は解放されるのか
第5講 モデルと複製――ファッションデザインの近代
第6講 メディアとイメージ――衣服がファッションになるとき

集中講義3日目 創造性への問いかけ
第7講 展示と鑑賞――ミュージアムのファッション展
第8講 身体と表象――ファッションとアートの接近
第9講 名と言説――シャネルはなぜ評価されるのか

集中講義4日目 歴史と未来をつなぐ
第10講 女性と労働――お針子像は消えたのか
第11講 日本と近代――洋服とはなんだったのか
第12講 批評と研究――ファッション学からファッションスタディーズへ

 日本記号学会編『転生するモード デジタルメディア時代のファッション』

井上『洋裁文化と日本のファッション』

平芳『まなざしの装置 ーファッションと近代アメリカ』

『クリティカル・ワード ファッションスタディーズ』

井上『ファッションの哲学』