佐藤俊樹「データを計量する社会を推論する 「新たな」手法が見せる社会科学と社会」『社会学評論』2017年, 68巻, 3号, p.404-423

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最近注目されている統計的因果推論やベイズ統計学は, 効果量 (効果サイズ) の分析などとともに, 社会学にも大きな影響をあたえうる. これらは基本的な考え方ではウェーバーの適合的因果や理解社会学と共通しており, 量的データにもテキスト型データにも適用できる.

例えば, 統計的因果推論は個体レベルの因果の多様さを前提に, その期待値として集団単位の因果効果を厳密に測定する方法であり, 一回性の事象にも理論上は適用できる. 潜在的な結果変数と原因候補と全ての共変量の同時分布を想定することで, 適合的因果をより正確かつ一貫的に再定義したものにあたる. 理解社会学であれば, 主観的で仮説的な先入観をデータの客観的な情報を用いてくり返し修正していくベイズ更新として, 再定式化できる.

こうした方法群は主観性と客観性の両面を同時にもっている。それゆえ, これらを通じて観察される社会の実定性もこの両面をつねにもつ.

Weiberg, Michael, 2013, Simulation and Similarity: Using Models to Understand the World, Oxford: Oxford University Press.

=2017, 松王政浩訳『科学とモデル――シミュレーションの哲学入門』名古屋大学出版会. 

佐藤俊樹, 2016, 「世論と世論調査社会学――『前面化』と『潜在化』の現在と未来」『放送メディア研究』13: 309-33.