熊代亨著『健康的で清潔で道徳的な秩序ある社会の不自由さについて』(2020)

 

生活を快適にし、高度に発展した都市を成り立たせ、前時代の不自由から解放した社会通念は、同時に私たちを疎外しつつある。メンタルヘルス・健康・少子化・清潔・空間設計・コミュニケーションを軸に、令和時代ならではの「生きづらさ」を読み解く。

社会の進歩により当然のものとなった通念は私たちに「自由」を与えた一方で、個人の認識や行動を紋切型にはめこみ、「束縛」をもたらしているのではないだろうか。あらゆる領域における資本主義・個人主義・社会契約思想の浸透とともにうつろう秩序の軌跡と、私たちの背負う課題を描き出す。

かつてないほど清潔で、健康で、不道徳の少ない秩序が実現したなかで、その清潔や健康や道徳に私たちは囚われるようにもなった。昭和時代の人々が気にも留めなかったことにまで私たちは神経をつかうようになり、羞恥心や罪悪感、劣等感を覚えるようにもなっている。そうした結果、私たちはより敏感に、より不安に、より不寛容になってしまったのではないだろうか?

清潔で、健康で、安心できる街並みを実現させると同時に、そうした秩序にふさわしくない振る舞いや人物に眉をひそめ、厳しい視線を向けるようになったのが私たちのもうひとつの側面ではなかったか(「?はじめに」より)

第一章 快適な社会の新たな不自由
第二章 「こころ」の癒しから「行動」のマネジメントへ
第三章 健康という"普遍的価値"
第四章 子育てと少子化
第五章 秩序としての清潔
第六章 アーキテクチャとコミュニケーション
第七章 資本主義、個人主義、社会契約