宇野重規著『政治哲学へ−現代フランスとの対話』(2004)

フランスにおける政治哲学の復権の意義を問い、「政治」「デモクラシー」「権力」「人権と市民権」「国制」「共和主義と自由主義」についての新たな理論的地平を開く。さらに日本における政治哲学の可能性をさぐり、その発展をめざす。

第1部 現代フランス政治哲学の位置づけ
 現代世界の中のフランス政治哲学
 政治哲学復活への道のり
第2部 諸概念の検討
 「政治」から「政治的なるもの」へ
 歴史の中のデモクラシー
 内向する権力論
 人権と市民権の間
 新しい国制論
 共和主義と自由主義

18 カストリアディス『迷宮の岐路』

意味を見失った時代―迷宮の岐路〈4〉 (叢書・ウニベルシタス)

意味を見失った時代―迷宮の岐路〈4〉 (叢書・ウニベルシタス)

レイモン・アロン『社会学的思考の流れ』
社会学的思考の流れ〈1〉 (1974年) (叢書・ウニベルシタス)

社会学的思考の流れ〈1〉 (1974年) (叢書・ウニベルシタス)

40 クエンティン・スキナー『近代政治思想の基礎』
近代政治思想の基礎―ルネッサンス、宗教改革の時代

近代政治思想の基礎―ルネッサンス、宗教改革の時代

50 マルクス主義の内部でスターリンソビエト体制を批判したカストリアディス、クロード・ルフォール、レイモン・アロンら、「社会主義か野蛮か」グループ。
62 ルフォール, マルクス主義メルロ=ポンティ現象学の独特な結合『エクリール―政治的なるものに耐えて』
エクリール―政治的なるものに耐えて (叢書・ウニベルシタス)

エクリール―政治的なるものに耐えて (叢書・ウニベルシタス)

ルフォールは優先して読まれるべき
62 カストリアディス『したこととすべきこと』
したこととすべきこと―迷宮の岐路〈5〉 (叢書・ウニベルシタス)

したこととすべきこと―迷宮の岐路〈5〉 (叢書・ウニベルシタス)

63 エドガール・モラン『政治的人間』64 ピエール・クラストル『国家に抗する社会』
国家に抗する社会―政治人類学研究 (叢書 言語の政治)

国家に抗する社会―政治人類学研究 (叢書 言語の政治)

72 フィリップ・ラクー=ラバルト『近代人の模倣』
近代人の模倣

近代人の模倣

73 モーゼス・フィンリー『民主主義―古代と現代』
民主主義―古代と現代 (講談社学術文庫)

民主主義―古代と現代 (講談社学術文庫)

88 マルセル・ゴーシェ『民主主義と宗教』
民主主義と宗教

民主主義と宗教

101「社会における分裂と、その分裂が生み出すダイナミズムを保持するためにこそ、国家は要請される」
103 佐々木『政治学講義』
政治学講義 第2版

政治学講義 第2版

『よみがえる古代思想』103 杉田『権力』
権力 (思考のフロンティア)

権力 (思考のフロンティア)

131 マルクスユダヤ人問題によせて』155 レオ・シュトラウス『政治哲学とは何か』45「古典的政治哲学は、最善の体制への問いによって導かれている」161 世俗の自律性を強調することで、近代国家の政教分離を説明する従来の説明よりも、国家理性論を読み直し、国家が宗教をみずからの内部に籠絡することで、かたちを変えて宗教は延命したとするゴーシェの説明のほうが、現代の宗教を説明しやすいかもしれない。
163 ピエール・マナン『自由主義の政治思想』
自由主義の政治思想

自由主義の政治思想

180 クロード・ニコレ「フランスにおける共和国=共和制の理念についてのこれまでの研究のうち最も包括的な著作」『フランスにおける共和主義理念 1789-1924』
181「第三共和政において優位したのは、ジャコバン的な「徳の共和国」ではなく、むしろコンドルセ的な「知の共和国」であった」
182 スタール夫人やベンジャマン・コンスタンに代表されるフランス自由主義
188 フランス自由主義が、英米自由主義のように国家による社会への干渉への警戒と異なることに注意せよ。共和主義に反発し、国家と社会の分離をデモクラシーに必須の要素とするフランス自由主義は、それゆえ保守主義に親和性があり、その存亡を危うくした。
189 北川「現代フランス「国家」の変容と共和主義・市民社会論争」【リンク
195「この点についてルノーは、スキナー的な答えとポーコック的な答えがあるとする。スキナー的な答えは、いわば道具主義的な共和主義理解である。というのも、政治参加のためには道徳的な動機づけは必要ではない。政治参加へ向けて人々を説得するには、それによって、自分の個人的自由をよりよく保持できると説得するだけで十分である。政治参加は個人的自由を守るための手段であって、それ自体が目的ではない。このようなスキナー的理解に基づく限り、共和主義は自由主義の対抗モデルというよりも、自由主義を実現するための手段ということになる。これに対しポーコック的な答えにおいては、政治参加は単に手段にとどまらず、それ自体が価値とされる。すでに指摘したように、ポーコックにとって政治参加は様々な人間論的な意味を持つ。その意味で、公民的な共和主義理解と呼ぶことができる。この場合に問題になるのは、政治参加それ自体が価値と見なされることで、自由主義的な信条、すなわち価値は各個人が選択するものであるという信条を逸脱する危険性があることである」
197「フランス共和主義の本質はあくまで、とくにフランス革命を頂点とするフランスの政治的近代の擁護にある」