松浦寿輝著『映画n-1』(1987)メモ

映画n-1

映画n-1

映画は1を欠いている。複数の〈わたし〉に決定的な刻印をしるす、このマイナス1をめぐって旋回する魅惑のエクリチュール。気鋭の詩人が、繊細かつ大胆な情熱をこめて繰り広げる待望の映画論集成。

1 映画空間へ
 液体論―映画的交合とその異化
 みずからの独身者たちによって裸にされた映画、さえも
 映画と色彩
2 幻想的肉体
 接吻論―官能的距離の背理
 ゆらめく上半身―イングリッド・バーグマン
 少年、あるいは無表情のゼロ記号
 映画、死者を欠いた葬礼
3作家論=主題論
 燃えあがる文字、書かれた炎―『アデルの恋の物語』のために
 ヒッチコックの「劇場」―緊張と撹乱
 タルコフスキー空間―多孔質の境界)
4 模像と運動
 ドゥルーズ〈と〉映画
 囮と人形―相似の映画論

p.256「同人誌『シネマグラ』の友人たちと過ごした蜜月時代が懐かしい。兼子(正勝)、四方田、それに鈴木啓二、野村正人、平野京子、金子伸郎西成彦沼野充義、宮脇洋、稲川正一、阿尾安泰といった人々から得た多くのものが本書のページのいたるところに溢れているはずだ。師と呼ぶにはあまりにも「反=教育的」に煽動することの好きな蓮實重彦氏に対しては、いかなる言葉を捧げるべきであろうか」