【本文】
本稿では女性の学歴別にみた離婚行動の違いとそのコーホート間の変化を,配偶者との学歴にもとづく階層結合(学歴結合),とくに女性の高学歴化により増加した妻下降婚と高学歴同類婚の2 つに着目して検討する.既存研究では,その非典型性から妻下降婚カップルは離婚しやすいとされる.しかし,妻下降婚が増加するのと並行してジェンダー平等化が進んだアメリカでは,近年の結婚コーホートで妻下降婚と離婚の関連が弱まっている.このように学歴結合パターンと離婚の関係を検討することを通じて,ジェンダーの非対称性を内包した典型性・非典型性が変化しているかを明らかにできる.また,第二次人口転換論をはじめ,離婚率の上昇により離婚に対する社会の寛容性が増すために,離婚の階層差は縮小すると考えられてきた.しかし近年になり,高階層のカップルでは夫婦が安定的なライフコースを歩む一方で,低階層カップルでは離婚を経験しやすいという主張が登場する.本稿ではこうした先行研究の流れを踏まえ「戦後日本の家族の歩み」と「2015 年社会階層と社会移動調査」の2 つを用いたイベントヒストリー分析を行った.分析の結果,1980 年以前の結婚コーホートでは妻の学歴が夫よりも高い妻下降婚カップルの場合に離婚を経験しやすい傾向にあるが,近年のコーホートではそのリスクが低減していることがわかった.一方,同類婚内部の格差については明確な変化がみられなかった.