足立幸男「公共的言説としての公共政策ー政策的思考と政治的思考ー」『公共政策研究』, 第9号, 2010.01.31, pp. 12-22

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公共政策分野における高度専門職業人養成を目指す修士プログラムは制度的にはすっかり定着し,提供機関の数も右肩上がりに増大したのであるが, その多くが苦戦を強いられている。その主要な原因は,周知のように十分な受け皿が整備されていないこと,公共政策系大学院に在籍する学生がインテンシブなコースワークを通して修得することが期待されている,その専門知(専門的知識・スキル・倫理)に対する社会の理解と需要が,いまだ低い水準にとどまっていることである。公共政策の専門知には,特定の政策分野と場(ローカル/ナショナル/リージョナル/グローバル)に固有の個別具体的なものと,分野横断的かつ場横断的なものとがある。そしてその両者を兼ね備えた者だけが言葉の真の意味における「公共政策のプロフェッショナル」たりうるのであるが,後者の分野横断的かつ場横断的な政策専門知の解明・定式化にこそ,個別分野の政策研究・政策実務から区別されるべきトランス・ディシプリンとしての公共政策学はその存在理由を見出してきた。分野横断的かつ場横断的な政策知は2種のものに大別される。その1つは,一連の集合的意思決定のプロセスすなわち政策過程に働く論理ないし力学についての知識・洞察力である。いま1つは,公共的観点に照らして代替案の優劣を判定し,自らの政策提案の公共的正当性を弁証するという,すぐれてコミュニケーション行為な能力である。

公共政策学とは何か (BASIC公共政策学)

公共政策学とは何か (BASIC公共政策学)